駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

韓流侃々諤々neo 14『赤と黒』

2024年09月07日 | 日記
 2010年、NHK・SBS共同制作、全17話。原題は『悪い男』。BS11で全17話で見ました。邦題は、愛と復讐、みたいなものをイメージしてつけたんでしょうね。ま、いかにもではあります。
 というかコレ、私、多分放送当時見ています。見ていないわけがない、ただし今回見ていても記憶は全然戻らなかったけど…でもこのむりくりな日韓合作感とか、主演の兵役で全20話予定が尻すぼみで終わったのとか、なんかうっすら記憶がある気がするのです…
 主役はキム・ナムギル演じるシム・ゴヌク。貧しいながらも両親とともに楽しく暮らしていた少年時代に、自分が父とは血がつながっておらず、母が財閥会長との間に産んだ子供だったと突然知らされて、その財閥ホン家に泣く泣く引き取られて…という、まあベタベタな、財閥もの、復讐ものです。
 ヒロインはハン・ガイン演じるムン・ジェイン。やはり貧しい生まれで、でも美術の仕事をしていて、財閥会長夫人のアシスタントをしています。ちょっと玉の輿を夢見たお金持ちの男にフラれたところに、ひょんなことからゴヌクと知り合って…という感じ。やや卑屈というか、上昇志向も中途半端な、暗めなところがよかったですね(笑)。
 ゴヌクは引き取られてホン・テソンという名になり、徐々に家族になじむものの、一年たったところでDNA鑑定をしたら血がつながっていなかったことが判明し、家を追い出されます。そのときに背中に大きな傷が残る怪我をさせられるは、迎えに来たもとの両親が交通事故で亡くなるはと散々で、長じて復讐に走るわけです。
 で、本当の息子だった、として入れ替わりに引き取られてきたのがキム・ジェウク演じるホン・テソン。ただし、会長夫人のシン・ミョンウォン(毎度のアボジオモニーズ、キム・ヘオク)はゴヌクのことはわりに可愛がったものの、テソンに対しては生さぬ仲として厳しく当たったようで、彼はすっかりグレたボンボンになったのでした。
 キム・ジェウクは実際に日本語が堪能なんですよね。それで無理やり日本の場面が作られたのかもしれません。それか、日韓合作ありきだったのでこの配役になったか…
 ヘシン財閥はもともと現会長夫人の祖父のものだったようです。現会長は、入り婿ってことはないんでしょうけれど、会長夫人からしたら夫の功績というよりはもともと実家の財産、自分の会社だという意識が強く、なのに夫が勝手に外で作った子供を押しつけられて、そりゃ嬉しいはずもありません。こういうドラマってこうした意地悪な継母が仇役になることが多いけれど、そもそも浮気した男が悪いんであって、その透明化は許しがたいですね。今回もホン会長はわりに鷹揚ないい人っぽい描かれ方で、私はちょっと納得いきませんでした。すべての元凶なのに…
 この夫妻には長男テギュン、長女テラ、次女モネがいるのですが、もしかしてテギュンとテラはシン夫人の連れ子なのかも。テラに関してはそんなような台詞がありました。テギュンはテラより年長なのかどうかもよくわからず…テギュンがゴヌクの罠にはまって失脚するより以前から、なんとなく後継者はテラ扱いだったようでもあり…カットのせいもあるのかもしれませんが、こういう設定のドラマなんだからこのあたりの血縁関係や利害関係はもっとはっきり提示したもらいたい、と思いました。少し年の離れた末娘モネが、唯一会長夫妻双方の血を引く娘なのかもしれません。
 ゴヌクはモネを誘惑し、テソンの秘書に収まって…みたいなところから、ドロドロの復讐劇が始まっていきます。
 テソンにはソニョンという恋人がいて、彼女もまた出自が貧しく、家族の反対に遭い、どうやら自殺ないし事故死してしまったようなのですが、その転落死にもまたゴヌクの影が…彼はソニョンと養護施設で姉弟のように育った仲だったのでした。なんかこのあたりは、結局どういうことだったのかよくわからないままに終わってしまったかも…
 そう、なんか全体に、設定はいいんだけれどストーリーに生かしきれていない印象のドラマで、萌えきれないままに最後はかなりドタバタして終わってしまった感じなんですよね。それが残念でした。こういうドラマはラストのカタストロフが大事なのに…!
 モネはまだお子ちゃまな女子大生なのでその嫉妬とか憎悪とかは可愛いものでしたが、テラはオ・ヨンスの薄幸そうな知的美女っぷりもあっていいキャラだったんですよね。家のために政略結婚して、可愛い娘にも恵まれて、でも夫は結婚前からの恋人と未だに仲が続いていて店を持たせてやったりしていて…悔しいし悩んでもいるけれど、気丈に平気なふりをしているところに、ゴヌクがひっそりと、優しくそばにいてくれるのにぐらりときて…というのは萌え萌えドラマチック展開だったのです。ゴヌクの方でも、モネのことはテキトーにあしらえても、テラに対しては同情もあったりして心が揺らいじゃうような描写があったのにー! それとジェインへの戦友、共闘感との間で揺れるような…そこがロマンスの醍醐味だったのにー!
 そして、「息子」の座を奪った存在に見えるテソンも、実際にはシン夫人に冷たくされ父親である会長はそれをそこまでフォローしてくれず、疎外感を抱いたまま成長し、人生になんの目標も持てないでいる悲しい青年なのです。ゴヌクは彼の秘書として働き、その実足を引っ張り出すわけですが、テソンの寂しい素顔に触れて友情めいたものも感じ出し、復讐の思いが揺らぐのです。ココがミソでした。
 ジェインは次の玉の輿手段としてテソンを狙い、けれどテソンが意外にいい人でとまどい、そしてテソンの方はジェインに惚れるのに、ジェインはやっぱりゴヌクが気になって…という関係性。このこじれ方を、もうちょっと丁寧にせつなくやって、盛り上げられていたら、同じオチでも印象はだいぶ違ったと思うんですよねー…どうしても、悪役たるシン夫人に関する描写がザルになっていたし、こじれ方が甘いからスッキリさ加減も減ってしまって、全体としては残念な出来のドラマになってしまっていたかな、と思いました。
 日本編も、まあまあちゃんとした役者が出ているんだけど、みんな片言日本語をしゃべっているように聞こえてくるから不思議です…
 でも、楽しく視聴しました。やはり韓ドラのこのノリ、全然嫌いじゃないのです…







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