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「竹下村誌稿」を読む 254 駅路 25

(散歩道のヒガンバナに名残りのアゲハチョウが蜜を吸う)

今日のテレビニュースでは、樹木希林さんの訃報と、安室奈美恵さんの引退が、並行して報道されている。近頃のテレビでは、地震と有名人の訃報が、頻繁にテロップで流れる。両方ともそれだけ多いということなのだろう。

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「竹下村誌稿」の解読を続ける。

藩幹譜云う、天正三年(1575)八月、遠江諏訪原城落城されて、掃討の人々を召され、抑々(そもそも)この城は高天神の通路にて、田中城を去ること、僅かに大井川の水を隔つ。敵の必ず争うべき所、当国第一の要害なり。誰か、我がためにこの城を守らん、と仰せらる。誠に大事の処なれば、望み申す人、更になし。やゝあって忠次進み出て、身不肖には候えども、忠次ここに留まり候わばや、と申す。徳川殿大いに悦び給い、御姓字を許し、松平周防守康親とめさる。当国、樽木、川尻七百貫の地を加え給い、諏訪原を改めて牧野城と名付け、牧野右馬允康成に仰(おお)せて、康親と同じく留められ、また譜代の御家人二人づゝ、康成、康親に添えられたり。
※ 掃討(そうとう)- 敵などを平らげること。完全に除き去ること。
※ 不肖(ふしょう)- 取るに足りないこと。未熟で劣ること。


なお、援用すべき記事の尠(すく)なからざるべけれど、冗長に渉(わた)るを以って、この辺にて擱筆すべし。
※ 冗長(じょうちょう)- 必要以上に物事が多く無駄なこと、長いこと。
※ 擱筆(かくひつ)- 筆を置いて書くことをやめること。文章を書きおえること。


さて、この菊川より西の方、長き山を登るを小夜の中山と呼ぶ。掛川志に、

この中山は、その道、両山に挟まれて、左右の谷間甚だ狭し。佐夜は狭谷(さや)なるべし。その中間の山なれば、狭谷の中山と名付けたるなるべし。古えより、佐夜、小夜など書かれる。皆な仮名なり。またこの山、日坂より菊川までの間、一里余、長堤の上を行くが如き、甚だ長き山なれば、実に長山と云うべき所なり。因って思うに山は長けれども、名は中山にして、延喜の頃より今に至りて変ずることなければ、異論あるまじきことなり。

と論ぜるは、寔(まこと)に当れりと云うべし。この小夜の中山は「さよの長山」と云う説さえ起れるほどの長き山なれば、海道の難関と称し、俚俗、遠州凾根(箱根)と呼ぶ。かの為家の歌にも、
※ 俚俗(りぞく)- 田舎びていること。

  東路の 小夜の中山 なか/\に 歩(かち)より行きて 馬や休めん

と詠まれたるも理なり。
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