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やをかの日記 4 17日下山、18日~22日逗留先へ戻る、しりがき

(一枝咲き始めた庭の百日紅)

「やをかの日記」の解読を続ける。下山から逗留先へ戻り着くまで。短いものだから、今日で解読を終える。

四つ時に、昨夜(きぞ or きそ)の宿れりし岩室に、帰りに寄りければ、主の酒進めつゝ、客人達の鮎を食(は)み、肴にせしと聞きつ。そはこの山にては悪(あ)しかりきと言えるに、そは心得違(たが)えなるを物語りて、また鮎をばなめて酒呑みて、下るさに、
※ なめる(嘗める)- 口に含んだものを舌で味わう。

七つ時に柴山にて、花香は木刀、利貞は真刀もて、しばしば戦えるに、勝ちとも負けともならざりしは、治まれる世の技なりけるよなと、諸共に喜びつゝ、暮六つ時に外河氏に帰りて、

  登りにも 安けくありて 下りにも
    安けくありて 快(こころよ)きかも     利貞


この夜は主のくさぐさの御饗しければ、おむがしものして遊び明かしつ。
※ 御饗(みあえ)- 飲食のもてなし。ごちそう。
※ おむがし(うむがし、むがし)- 喜ばしい。めでたい。
※ ものす - いる。ある。行く。来る。生まれる。死ぬ。ここでは「ある」。


十日余り八日の日と、十日余り九日の日とは、富士浅間の宮に帰り申しに参りて、ものしつ。その二夜も外河氏に宿りて、廿日の四つ時に立ちて、三嶋の宿りに暮六つ時に着きて、
※ 帰り申し- 神仏へ願を立てた後のお礼参り。

  乙女らを 見しま(三島)菅笠(すがかさ) 傾けて
    たそがれ時に 宿求めけり       花香


  うつくしき 乙女が舞いを 見しま(三島)にて
    見るは楽しも 乙女が舞いを      花香


廿日余り二日の九つ時に、泰明の翁の庵に帰り着きぬ時に、翁の、富士の
山の雲の、雪のごとくに、見ゆといえれば、

  大雪の 積りにけりと 夏ながら
    見ゆとや富士の 山の白雲       花香

     
凡そ、謌(うた)数三十一中、二十八は花香なり。三は利貞なり。

八日記のしりがき
岩雲花香大人の富士山に登りて、下りて、国に帰えるさに、脇辺に立ち寄りまして、この八日記を見せますを、よく見るに、いと面白かりければ、桜木の板に彫(え)らせて、摺り、巻(まき)にして、いまだ富士峰に登らざる人等に見せまほしと、申しければ、それよろしと、頷(うなづ)きませり。依て、物しつ。こをよく見る人々は居ながらに、富士の峰に登れりし心地もこそせめ、と言うは、尾張国人、片野善長
※ 片野善長 - 尾州名古屋本町通七丁目 永楽屋(書肆)東四郎の事。


以上で「やをかの日記」の解読を終る。
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