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駿河土産 7 清正へ異見の事(後)、御三家へ弓の名人を進むる事



(大代川工事現場、上-昨日、下-今日)

大代川工事現場は昨日まで何とか工事をしていたが、昨夜来の雨で今日は水没していた。コンクリを打ったところは大丈夫なのだろうか。

駿河土産の解読を続ける。

次に参勤の節、家来を多く召し連れ候義を相止め、人少しにて罷り在り候と有るは、我らの勝手の為といい、家来の者どもの為と申す。旁(かたがた)以って、左様に致す事に候えども、惣て西国大名どもの儀は、何ぞ御用などもこれ有る節は、召し呼ばるべくの間、その内は国元に休息仕り罷り在り候様にとの仰せ出されなども、これ有りたる上の儀は格別、かように参勤交代を仰せ付けらるとの義にこれ有り候えば、万一の御用などをも仰せ付けらるべきとの義これ有り候へども、其元にも御存じの通り、我ら知行所肥後国の義、海上遥かに相隔て候を以って、国元の人数は急用の間には合い兼ね申す儀なれば、少しなりとも手元に有り合わせたる人数を以って、相応の御奉公をも申し上ぐべきとの心掛けに候えば、供に召し連れ候人数をへらし申すと有る義は罷り成らず候。

さてまた我ら面(つら)に生え候むだ髭を剃り落し候わば、さっぱりと致し、気味よく、これあるべき候と、手前にも朝夕存ぜずとてはこれ無く候えども、若き時分、この髭づらに頬当を致し、甲(かぶと)の緒をしめ候時の心よさ、只今以って忘れがたくこれ有り、いかに治まりたる御代なりとも、これまた剃り落し候様には致しがたく候。

其元の思い寄りて、申し聞けられ候義を一色も用い申さず候段、いかがとは存じ候えども、御聞き分けあられ給りたくとの返答に付、佐渡守あきれ果て、その段申し上げられければ、権現様御聞き遊ばされ、清正と言う事かとまでの上意にて、御笑い御座遊ばされ候となり。


(6)御三家へ弓の名人を進むる事
一 権現様、駿府に御座遊ばされ候節、以前佐々木家に於いて、家老分にて、知行八千石取り候、吉田出雲と申したる者これ有り。この出雲が弓の弟子に、石堂藤左衛門と申したるもの、年寄りて竹林と名
を改め、三井寺へ引き籠り居し申す段、御聞きに達し、則ち召し出され、駿河に於いて、若き御旗本衆へ弓の指南仕り候様にと仰せ付けられ、竹林流と
申して一流の如くこれ有り。

諸人取りはやし申すに付、御旗本衆の中に、弓の上手餘多出来候。中にも佐竹源太夫、内藤義左衛門と申す両人射芸勝れ候に付、尾張殿へ師匠の竹林を遣わし、紀州へ佐竹源太夫、水戸へ義左衛門を遣わされ候。則ち江戸表へ仰せ遣わされ候は、右三人の者ども、射芸に達し候を以って、御三方御附け成られ候。天下をもしろし召され候御方の御膝元へは、天下の名人寄り集まるものに候故、進められず候との上意にこれ有り候となり。
※ 射芸(しゃげい)- 弓を射る技。弓術。
※ しろしめす(知ろし召す)- お治めになる。

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