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類病相煩い不作、夫食拝借のこと - 駿河古文書会

(11月18日、不動峡紅葉)

先週金曜日、駿河古文書会へ出席した読んだ古文書を以下へ読み下し文で示す。

冷害など、自然災害で凶作と成り、夫食米を拝借を願う文書は何度か読んだが、この文書は、流行り病で一村の多数が耕作できず、不作になったという話である。1通目は、当該村からの願い書である。

 恐れながら口上書を以って願い上げ奉り候御事
一 庵原郡由比加宿、東山寺村の義、去る冬、御願い申し上げ候通り、永々相煩い罷り有り候所、去る暮、御年貢並び諸役金御座なく、それ故、喝命に及び罷り有り候故、御願い申し上げ候は、家数弐拾五軒、人数病人四拾人、御扶持米下し置かれ候様に願い上げ奉り候

然る所に身躰宜しき者も、右之内一両人も御座候えども、去る暮より、この方、芋大根代替御年貢御役懸け、御上納仕りたきにも、在邊の義、御座候えども、病人の家より代替申す義、兼て仕らず、難義至極に存じ奉り候
※ 身躰(しんだい)- 身代、個人、または一家が有する、すべての財産。身上(しんしょう)。
※ 在邊(ざいへん)- かたいなか。在郷。在所。


うえ(飢え)人百姓御救いのため、御扶持米三拾俵ほど下し置かれ候わば、うへ百姓相続き仕り、永々御年貢並び御伝馬役義、相勤め申すべく候間、御慈悲の御下知、願い上げ奉り候、以上
  享保十五年戌正月 
(以下略)     

2通目は役所から隣村に尋ねた返答である。

 御尋ねに付、申し上げ候御事
一 庵原郡東山寺村百姓之内、御願い申し上げ候家別、去五月より、類病にて、この節まで永々相煩い申すに付、村中にて耕作など助け合い申し候えども、永々義ゆえ、隣村、拙者ども村方よりも助け合い、耕作手伝い仕り候躰ゆえ、作物も不出来にて、殊の外、内證困窮仕り、この度、飢え夫食御願い申し上げ候通り、相違御座なく候、御尋に付、渕底存じ罷り成り候通り、書付を以って申し上げ候、以上

※ 類病(るいびょう)- 症状の似た病気。
※ 渕底(えんてい)- 深い水の底。物事の奥深いところ。深く。詳しく。

 享保十五年戌正月   庵原郡阿僧村(以下略)
           
3通目は当該村からの正式な願い書であろう。この文書を読むと、すでに現地見分が行われ、役人も承知をしたことが窺える。当時の役人は領民からの願い書があって動くようで、改めて正式な願い書を出させたものと思われる。

    差上一札の事
一 由比加宿村之内、東山寺村の義、去る五月より、類病に入り込み、今以って、相煩い罷り有り候故、去年中は耕作収納なども、村中並び隣村にて助け合い申し候躰故、殊の外不作仕り、困窮仕り候

右村家数五拾軒余、人数弐百五拾人余の内、家数拾九軒、人数男女七拾五人、別して家内、今以って相煩い、去る暮より夫食これ無く候故、御上納なども村中にて償い、取り続かさせ申し候、もっとも御伝馬役の義も、加宿村々にて仕り、埋め申し候えば、もはや御参勤時分に罷り成り候わば、加宿村々も難儀仕り候

その上村中にても、力に及び申さず候間、よんどころなく夫食御願い申し上げ候に付、御出で成られ、家別御見分成られ候所、相違御座なく、何とぞ正月中より四月廿日までの夫食御拝借、仰せ立てられ下さるべく候は、麦作にも取継き申し候わば、飢え死になどもこれ無く、相続き仕らさせ申すべく候

これにより、加宿問屋年寄ともに、連判を以って願い上げ奉り候、
願いの通り仰せ付けられ下し置かれべく候、以上
  享保十五年戌正月廿日 
(以下略) 

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