河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1619- キリストの昇天、バービ・ヤール、エギルス・シリンス、アンドリス・ポーガ、新日フィル2014.4.13

2014-04-13 17:27:15 | インポート

2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2014年4月13日(日)2:00pm サントリー
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メシアン キリストの昇天 5′5′6′5′
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ショスタコーヴィッチ 交響曲第13番 バービ・ヤール
   バス、エギルス・シリンス
   男声合唱、栗友会合唱団
           16′8′12′12′13′
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アンドリス・ポーガ 指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
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お初で観る指揮者です。見た目、大きくてゴツゴツしている。
何かに特に強いインパクトがあるといった感じではありませんでしたが、なるほどこういうとらえかたもあるのか、そういった気づきをさせてくれるような面がある。充実の演奏会だったと思います。
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プログラム前半のキリストの昇天は、全楽器の中でもブラスは気を緩めたら絶対ダメな曲。弦は居眠りしたくなるところもありますが、しっかりとブラスの響きをとらえたいものです。
メシアン独特の澱んでいながら透明、青い沈殿物と清らかな流れ、そして光の放射、最初から魅了されるいいバランスの響き。やつすことなくしっかり譜を伸ばし切るのでなんだかウェットさも加味された柔らかな光と影。
プログラムにある予想タイミングはデューレーションとしてなら間違ってなくも無い。曲全体で35分かかればいいなぁ、と欲張りな気持ちになりました。メシアン初期の傑作。
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後半は大作バービ・ヤール。少し前にコボス&都響の演奏がありましたね(2013.11.28)、あれも素晴らしい演奏でした。
この日の新日フィルも濃い演奏で。自席がオーケストラに近いので全部見渡すことができないのですが、かなりの大編成で迫力あるサウンド。男声合唱の人数も相当な規模のよう。バス独唱はこの前(2014.4.5)のラインの黄金でヴォータンを歌ったエギルス・シリンス、非常に明瞭な歌。ポーガはじめ、割と明るく乗っていけるような感じのバービ・ヤール。妙な話かもしれないけれども。
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この日の公演では字幕スーパー無し、ブックレットの対訳もなく日本語のみ。ただ、詳細な訳注があり、本来の意味合いや誤りを訂正しつつ掲載。これは結構ためになった。理解が一段深まった感じです。
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第1楽章、バービ・ヤール
ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺の地、今の今現在、混乱のウクライナ。その国にある地名。暗い歴史の地。それぞれの時代にナツィだけでなくロシア人たちもユダヤ人を迫害したじゃないかと、虐殺・迫害に対する反体制的なモチーフがベースとなっているのだが、音楽が妙に明るい。明るいというより分厚く動き回る。何度か聴くたびに書いているのだが、ほぼムソルグスキー状態の音楽ではないだろうか。ショスタコーヴィッチの姿は見えこそすれムソルグスキーワールドの響きの陰にある。そういう意味では時代を遡ってしまった音楽のように聴こえる。分厚い響きの快活さなのだが、日本おける曲の紹介のされ方が副題ストーリーに引きずられすぎなのではないかといつも思う。思うほど暗い音楽にはなっていない。ボリスの旅籠屋シーンさえ思い浮かべるのだが。
だから、
第2楽章、ユーモア
にも、全く違和感なく入っていける。第1楽章に増してさらに動き回る音楽。ようやくここでショスタコーヴィッチの音楽がひらけてくる。
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ここでちょっと、
この交響曲の副題のバービ・ヤールというの、第1楽章についた副題を言っているのであって、全楽章をバービ・ヤール的なナチスによる虐待のストーリーとして聴いてしまうと自分で自分を印象操作してしまいかねない。一方、反体制的な内容という意味合いではこのシンフォニー全体を貫く通奏低音としては正解だと思うので、そのような串刺しで聴くのがいいかと思うのです。
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ここまでの2楽章、とにかくよく動き弾む音楽で、これまで生で聴いた中でこんなにスッキリ明るいのも珍しい。ムソルグスキーとユーモアの勝利か。
それにしてもオーケストラのサウンドと男声合唱がズシンとくる。独唱は席が近いせいもあってクリアだなぁ、きれいな清唱です。シリンスはそうとうに力がこもっており、説得力がある。オペラ風な歌唱はしておらずそれでいて気持ちの込めかたが、あたりまえの歌詞連動なのだろうが、圧巻。
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続く第3,4,5楽章は切れ目が無いが、一見ばらばらの副題のイメージなので明らかにムードが違ってくるのですぐにわかる。第4楽章の恐怖というのはそれほどでもない恐怖のようだが、音楽はチューバを織り交ぜた非常に深刻なもの。
第3楽章、商店で
第4楽章、恐怖
第5楽章、出世
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最後の出世もまた面白い内容、最後の最後でショスタコーヴィッチ最後のシンフォニーの一番最後の最後、その響きがかすかに聴こえながら終わる。
この連続した3,4,5楽章の緊張感はまことに素晴らしく、ポーガの棒がさえていたと思います。オーケストラ、男声合唱、バス独唱、一体化した演奏の運びは、ショスタコーヴィッチの何が本意だったのか、あらためて考えさせてくれるような演奏でした。屈折の思いへの気づき、気づきはこちらの話ではあるのですが、考えさせられる内容だったと思います。ありがとうございました。
おわり


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