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2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2013年12月2日(月)3:00pm 東京文化会館
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ジャン・ルイ・グリンダ、プロダクション
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プッチーニ トスカ
第1幕43′
Int
第2幕40′
第3幕26′
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トスカ ノルマ・ファンティーニ
カヴァラドッシ、マルセロ・アルヴァレス
スカルピア、ラド・アタネリ
アンジェロッティ、ホセ・アントニオ・ガルシア
堂守、マッテオ・ペイローネ
スポレッタ、ルカ・カザリン
シャルローネ、フェデリコ・ロンギ
看守、ジュゼッペ・カポフェッリ
牧童、寺尾優汰
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トリノ王立歌劇場
TOKYO FM少年合唱団
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指揮、ジャナンドレア・ノセダ
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何年かおきに来て上演してくれるトリノ&ノセダの組み合わせ。今回も素晴らしいキャストと内容で魅了。
ただし、舞台は飽くまでも副次的でイメージを整える補助的手段でしかなく、我々が知っている昨今の斬新で、スタイリッシュなものとはかけ離れた蒼然たるもので言及するようなものではない。
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トスカは久しぶりに見る気がする。
主役どころが3人揃えばあとはどうにでもなる。今回のこの3人衆、バランスが良くとれていて気持ちがいい。スカルピアはもっと極悪の雰囲気で、このオペラのむき出しな表現、女の身体要求の部分は今の時代とは合わず、かえって超悪役の方が、現実感が薄まって抵抗なく聴けるというところがあるかもしれない、というのはあるが概ねバランスとれておりました。
独唱、重唱、とにかく清唱が美しい。ホールに響きの輪郭が虹のように広がる。ストーリーはみんな浸みこんでいるので、字幕を気にしなくてもただ歌に集中すればいい。本当に素晴らしくきれいな歌が続く。息が完全にそろっていて凄まじい清唱だ。
トスカとカヴァラドッシの絡み合いは横綱相撲級でこのホールが鳴りきりました。
そしてドラマ。
オーケストラは思いのほか硬めに。前回来た時よりノセダ好みになっているのかもしれない。響きは充実しており隙間が無い。やや硬めでシンフォニックなクリアさに変貌。また、テンポ感は自然でかつメリハリが効いている。流され過ぎるということが無い。プッチーニよりもヴェルディのほうがマッチしているような気もする。
オーケストラ・レベルは高いと思います。
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2013年12月1日(日)3:00pm NHKホール
ストラヴィンスキー カルタ遊び
リスト ピアノ協奏曲第1番
ピアノ、スティーヴン・ハフ
(アンコール)
ショパン 夜想曲Op9-2 変ホ長調
ショスタコーヴィッチ 交響曲第15番
8′、18′、5′、17′
シャルル・デュトワ 指揮 NHK交響楽団
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前日(2013.11.30)に続き日参。ショスタコーヴィッチの15番は外せない。
放送日ではないため時間制約がなく、前半ハフのアンコールありました。また15番は昨日より若干スローになっていたようでした。
前日よりさらに磨きがかかり、カルタ遊びにおけるブラスの引き締まったサウンド、ウィンドのメロウな響き、細やかな弦の表情、どれをとっても素晴らしい。目の前に広がるバレエを見ているような目の覚めるような演奏でした。このような演奏であればこそ好きになれるという曲もある。魅力的な音楽。
デュトワの身振りはかなり大きく精力的に振っている。オーケストラは敏感に反応するというより練習で全部出来上がっていて、双方、濃淡の表情をつけながら進行している感じです。良好な関係のように思えます。
この曲、あらためて聴きたくなりました。
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リストの協奏曲におけるオーケストラの演奏はもはや伴奏の域を越えて、まるで交響詩のような濃い味付け、これだけでも十分な手ごたえ。
ハフの明晰な響きはどこからくるものだろうか。クリアで理知的でそのこと自体が一つの快感となる。いわゆるヴィルティオーゾ風なところもまるで無く、ぜい肉もない。
指の重さを万有引力に任せず意識された筋力の運動でコントロールした見事なタッチ。聴くならこのピアニスト。
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ショスタコーヴィッチは前の日に比べ、アタッカ連結の第2,3楽章が若干長くなりました。
第4楽章の混迷とその解決は見事な音楽。ワーグナーが鳴り、すぐにヴァイオリンのしなやかなメロディーが小雨のように響く。そして終結部を感じさせるリズミックな運動。
ワーグナーは序奏でヴァイオリンは第1主題なのか、いやワーグナーは提示部第1主題でヴァイオリンは第2主題、いや引用だらけのバリエーションなのか。こちらの脳内をチェックしているかのようにショスタコーヴィッチの音楽は進む。不思議な曲だ。この二つのふしはもとのまま回帰する。リズミックな運動はそのままエンディングへつながるモチーフだ。
張りつめた空気。超絶的な長さのヴァイオリンの一音ユニゾン。ピアニシモがこれほど効果的な音楽があっただろうか、密やかに響くパーカッション、吸い込まれて最後はお経の鐘の音のような微弱な一音で空気がブラックホール化。何も言うことがない魅惑的過ぎる。
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第2楽章が昨日に比べて入念というか、奏者の方に余裕が感じられました。この楽章の多彩な色、前の日も感じたことなのですが、この色のあやを見事に示してくれたデュトワの棒といったところでしょう。少しムソルグスキー的なむき出しのトロンボーン・ソロ、例のティンパニーリズムに合わせた巨大な全奏。第4楽章と対を成す楽章と思えますが、こちらはまだ理解しやすい。第4楽章に並ぶ深さの演奏、深化していく様はデュトワの見事な棒の成果。
この楽章は表現機能レベルが高くないとボロボロになってしまいそうです。N響のスキル水準の高さにあらためて驚きます。同じように第1楽章はトリッキーながら少しもやつしたような演奏になっていない。きっちり猛速をこなしている。これだけで15番をこうやって聴く価値があるというもの。
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デュトワ、N響の忘れがたい演奏となりました。
おわり