2013年11月30日(土)6:00pm NHKホール
ストラヴィンスキー カルタ遊び
リスト ピアノ協奏曲第1番
ピアノ、スティーヴン・ハフ
ショスタコーヴィッチ 交響曲第15番
8′、17′、4′、17′
シャルル・デュトワ 指揮 NHK交響楽団
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ショスタコーヴィッチの15番、第2楽章の沈み込みが大変に素晴らしかった。曲想の表情だけでなく音色バリエーションが際立っており音の光と影がよく見える。作曲家の移ろいなのだろうか。頭の中の表情まで見えてくる。第1楽章のウイリアム・テルから始まり、この作曲家による聴く者たちへの脳内いじり。
第4楽章も引用から始まり弦のしなやかさとその後の混迷、ここら辺りは深い森過ぎていまだよくわからないところもあるけれど、ソナタ形式のように思える。引用だらけとはとても思えない深さだ。
ティンパニーのモチーフは第1楽章からこの第4楽章の最後の最後まで響き続ける。この曲の縁取りとなっている。弦のユニゾンのなかピアニシモながら壮麗なパーカッションエンディング。宇宙に吸い込まれていくような神秘の世界。音が空気にものすごい緊張感を送り込み一緒にブラックホールの中に消えていく。
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16-14-12-12-10、デュトワの弦編成は巨大だ。16型自体十分巨大だが、チェロとベースをさらに膨らませ、低音域をグーンと鳴らす。第1楽章は猛速な楽章であるため、低弦の機能性がポイント。N響の技は譜面通りを越えた技術の余裕のようなものがある。最大能力はまだ先にあるといったような余裕が感じられる分、他の国内オケとの間にまだ一線があるのはここらあたりだ。
このサイズで第1楽章をとばすとどうしても埃っぽくなったりするものだが、デュトワのコントロールのもときっちり整頓された弦群が圧縮された響きで動き回る。いつものN響らしくないといえば皮肉っぽくなるが、まぁそんなところ。曲自体15番まで来るとボテ系の厚さはあまり聴きたくない。オーケストラ全体の編成としてもアンサンブルやソロインストゥルメントの部分が多く、響き自体はしなやかなで単独ではむしろ薄いと思えるところが多発する。マーラーの9番なども同じような感じだ。
楽章のイメージは、ⅠとⅢ、ⅡとⅣ、それぞれの親近性。最初は9番のような感じで鳴る第1楽章だが、しだいに音楽の巨大性と聴く者の頭を混乱させるウイリアム・テル、軽装にみえてなんだか妖しくデカくなる、その気配。第3楽章はだいたいいつも通りの雰囲気の楽章なので、第1楽章が第3楽章寄りの表情なのが唐突的な要素が濃い。興味深い曲ですね。
デュトワの身振りはかなり大きいモーション。多発するインストゥルメント別3連符と2拍子。かなり明確に3連符を腕で棒で振る。腕棒とは別に身体の方は2拍子モードで動いているように見える。これも技か。デュトワにとってN響は手兵のように見える。思いのままの音だ。すごいね。
ショスタコーヴィッチの15番は、ジョナサン・ノット&N響のとき以来。
(2011.2.16)、(2011.2.17)
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音源ライブラリー (DS15)
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前半一曲目のカルタ遊び。
デュトワはこの曲をうまく鳴らすツボを押さえているとしか言いようがない。引き締まったサウンドは少しドライだが響きはスッキリ。ストラヴィンスキーのフレーム感覚がよくわかる。面白いようによくわかる。N響はストラヴィンスキー、デュトワで良く鳴るんだ。
曲とオケ、それぞれのツボを押さえているということか。
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デュトワの好きな3曲構成のプログラミング。他の特に来日オケのようなときとして粗末なプログラムビルディングを見るにつけ、デュトワの爪の垢でも煎じて飲めと。デュトワは頑張り屋ですね。
前半2曲目のコンツェルト。感情を抑え、というよりそのようなものが存在しているのかどうかと思えるぐらい理知的でクリアさを出していくハフの演奏。個人的には好みです。
大胆に音を揺らして歌を感じさせる箇所もありますけれど、それは明確にしてクリアで粒立ちの良さの響きであり、むしろ生理的な快感をそのような要素に感じてしまうこちら側の感覚か。
リストも全部、この日のように全部整理されて演奏されたらそれはそれで快感と思うのだが。
おわり
2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2013年11月29日(金)7:15pm サントリー
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マルシュナー 歌劇「吸血鬼」序曲
マルシュナー 歌劇「ハンス・ハイリング」より
ゲルトルートのモノローグ
ゲルトルート、藤村実穂子、メゾ
ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」より
前奏曲と愛の死 8′、6′
イゾルデ、藤村実穂子、メゾ
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ウェーバー 歌劇「オイリアンテ」序曲
ワーグナー 舞台神聖祝典劇「パルジファル」組曲
クンドリ、藤村実穂子、メゾ
前奏曲11′第1幕(バンダ付き)5′
第2幕6′、6′
第3幕5′、12′
第1幕3′
第3幕3′
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クリストフ・ウルリヒ・マイヤー指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
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お初の指揮者です。はじめまして。
最近あまり見かけない棒で、早い話が外見などどうでもよくてただひたすら音楽に奉仕していること自体が生きる道、もっというと日本で演奏することなんかもどうでもよくて眼中にない。かっている藤村さんがすすめるので来てみて振ったよ、そんな感じですね。劇場で棒を持って生まれてきたと言えよう。
10分の1速にするとクナッパーツブッシュの様な棒だな。
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それにしても長いプログラムだ。ご本人はもっと振らせてほしいのだろうね、きっと。
みんな許せばパルジファル全曲を2回でも振りそうな感じだ。
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マルシュナーの曲が冒頭2曲ならびました。が、そもそもこの作曲者の名さえ初めて見る。耳が痛くなるような曲ではなくてぶ厚い音を純粋に楽しめました。藤村さんのモノローグは慣れているようで、こなねれていて。
トリスタンはかなりの高速モード、劇場でやるときとは雰囲気が違うのかもしれない。切れ味鋭い藤村イゾルデが素晴らしい。指揮者の方は縦の線とか横の線とかあまり感心なさそうで、とにかく音楽はこうゆうふうにして流れていくのだよ、と言っている。
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これで後半のパルジファル組曲でお腹いっぱいになるはずだが、なんと後半一曲目にオイリアンテの序曲を置く。そしてパルジファル組曲へ。なんとも贅沢な一晩です。
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藤村の歌は第2幕の2つのシーン。場面転換の音楽は最後にもう一度、計2か所となるのでプログラム記述は誤りと思われる。
指揮者自身の編曲によるもので、構成は上記のプログラムに書いたタイミングのところをご覧ください。
第1幕にはバンダが出ます。全体にパルジファルの壮麗でロマンチックな雰囲気が良く出ている。情に流される部分。
私の定席は舞台に近いのでリアルに見えるのです、藤村さんの右手。
歌のコツとか、譜面全部覚えといったあたりの秘密はもしかしてあの右手にあるのかなと思えなくもない。右手を下向きに開いて上から蛇口を回すような感じ、指の一本ずつが、なにかピアノを弾く感じ、そうとうな圧力で空気を握り回しています。あのモーション、なにか秘密ありそうだ。
冷たい火のクンドリですが、理知的な歌で満足。
指揮者のマイヤーはバイロイトは一回だけのようですが、これからたくさん世に出てくると思われます。
おわり