河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

061- スクリャービン 交響曲第3番 ムーティ音源

2006-09-19 00:01:00 | 音楽夜話

 

ムーティはこの曲がかなり好きだ。河童が保有している音源と生体験を列記。

 

フィラデルフィアo.  1984.2.22 Avery Fisher Hall
ベルリン・フィル     1987.5.31 NHK-FM1987.8.2
フィラデルフィアo.  1988 4.29,30 EMI
ウィーン・フィル    1990.10.21 NHK-FM1991.7.1
ウィーン・フィル    2005.5.2

 

これ以外にも当然フィラデルフィアとの定期での公演もあろう。3番という曲の音源がこれだけ出回っているというのは珍しいと思う。ここにある何倍も振っているはずだ。
1987ベルリン・フィルと1990ウィーン・フィルの聴き比べは大変に興味深い。1987ベルリン・フィルでは演奏後、巨大な時代遅れブーイングがあり、いまだに怪しげな曲であったのだろうと推測される。
1987ベルリン・フィルのやや固めで折り目正しい初物の雰囲気を醸し出している演奏に比べ、1990ウィーン・フィルのきらびやかな、特に木管楽器が光をちりばめるようにキラキラと輝くさまは色彩の作曲者の意図するところであったはずだ。しなやかな弦、そしてビロードのようなブラス・セクションの響き。極めて美しい演奏だ。
1987ベルリン・フィルはハーモニーがバランスしており、旋律の途中で強弱をつけることはあまりない。あったとしてもアンサンブル奏者が同じニュアンスであり意識された美しさ、機能的な美しさであると思う。1990ウィーン・フィルはアンサンブルが一つの楽器のような響きになり、織りなす音の彩が和服の生地の様に怪しく美しく響く。
2005ウィーン・フィルはさらに達観した雰囲気となり、3拍子の主題が軽やかにウィンナ・ワルツのエコーさえ想起させる。ニュアンスの細やかさは果てしもない。そしてクライマックスの打撃音三つのうち最初の一つは最後の曲想に重なっているのだが、この演奏では打撃音は全く聴こえてこない。フィナーレの曲想の最後の音の残音が自然に最初の打撃音の響きと想像上一緒になってしまっているような極めてユニークな響きとなっている。
そして残響のハーモニーがエコーとなって、それが消え去るまで決して奏されない第2打撃音までの異様に長い休止。ようやく二つ目が奏され、さらに長い休止のあと、最後の音が神秘的に天上のかなたまで我々河童族を運んでくれる。ビューティフルな演奏。ムーティのつぼここにあり。
おわり