河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2558- ショスタコーヴィチPC2、トラーゼ、ブルックナー1番、パーヴォ・ヤルヴィ、N響、2018.5.18

2018-05-18 23:23:10 | コンサート

2018年5月18日(金) 7:00pm NHKホール

トルミス 序曲第2番(1959)  11

ショスタコーヴィチ ピアノ協奏曲第2番  7-10+5
 ピアノ、アレクサンドル・トラーゼ

(encore)
スカルラッティ  ソナタ ニ短調K.32 (L.423)  3

Int

ブルックナー 交響曲第1番ハ短調 (1866年リンツ稿/ノヴァーク版) 13-11+8-14

パーヴォ・ヤルヴィ 指揮 NHK交響楽団


トラーゼはアメリカに移ってきた頃に何度か聴いた。強い弾きの印象がある。
それから何十年、今日のショスタコーヴィチは軽妙なもので水面の水きりのようなもんだろうが、サラリとした感触で、猛弾きもできるんだよという余裕みたいなものが少し鼻につく。演奏への打ち込みが削がれていたと感じる。指揮とオケを上回るプレイを聴きたかった。


AB1-elapsed time
Ⅰ 3-5-4-c1
Ⅱ 1-3-2-2-2-c1
Ⅲ 3-2-3
Ⅳ 5-5-3-c1

ブルックナーはオーケストラをグッと引き締めたもの。パーヴォの芸風ではどの作曲家作品でもそうなるわけだが、この論法で、ではブルックナーの聴かせどころはなんだという話になると、ちょっとわからない。
凝縮明確フォルム、ギュッと絞まったスキニーサウンド、スピード感に溢れ、中のホンワカ空気の膨らみを押し出した握り寿司、むらさきに味わいを求める。場の雰囲気を楽しむ。そんな感じ。
爽快な演奏が一定の形式感の中でバランスよく進行するスタイル、途中からベートーヴェンの1番的な楽しみに変わってきて、これはこれで面白かった。プレイヤーも演奏しやすそう。コンパクトで解像度の高い好演でした。

びっしりと強弾きする弦の圧力は大したもので、ゆらゆら揺れるベース刻みが聴こえてくればさらに良いだろうなとは思う。このホールではそういったことの限界、限度がそう遠くないところにあるので、聴く前から自分の頭の中にフィルターがかかっているのかもしれない。
おわり


2557- バーバー1番、ガーシュウィンPC、山下洋輔、カーニス、ムジカ・セレスティス、コープランド、アパラチアの春、ファレッタ、新日フィル、2018.5.18

2018-05-18 22:00:12 | コンサート

2018年5月18日(金) 2:00-4:30pm トリフォニー

バーバー 交響曲第1番Op.9  21

ガーシュウィン ピアノ協奏曲へ調  17-19-12
 ピアノ、山下洋輔

Int

カーニス ムジカ・セレスティス  11

コープランド アパラチアの春、オーケストラ版の組曲  23

(encore)
エリントン(Roy Collier編) The River より The Lake 7

ジョアン・ファレッタ 指揮 新日本フィルハーモニー管弦楽団


しびれた。しびれました。アメリカ作品4連発。ジョアン・ファレッタさんの棒、いつか聴くことがあるだろうと思ってはいたが、いやいや、この現実感。

新日フィルは上岡監督になってから色々と新機軸、企画を打ち出している。今日の演奏会は、金曜・土曜のアフターヌーンにルビーのコンサートとしてはじめられたもの。
このルビコンはなんといっても、席種2種類のみの4500円、2000円、それに毎度の豪華キャスト。全く信じがたいもので、今回のアメリカもの4連発、ファレッタさん、山下さんで聴けるなんて、まさしく、干天に慈雨。
トリフォニーは3階席まで音がストレートに飛んでくるのでフルオケの醍醐味は2000円席が良い。

前半2曲は大がかりな編成、後半2曲はコンパクトなもので聴後感というのは、後半は整理体操のおもむきだったなあとあらためて前半のエキサイティングな2曲の思いにふける。


バーバーの若き佳作。
織りなすチェック模様のようなリズミカルな進行からアメリカ原風景へ、と思いきや徐々にノーブルに纏い、威厳のヴェールを脱いで圧巻のエンディング。やっぱり、生の説得力は凄いもんですね、吹奏楽にも合いそうな作品です。
ファレッタさんの指揮は大きくてテキパキしていてきれいなもの。腕を下げることのない明快な棒。プレイヤーにもわかりやすいものに見える。バーバー・サウンドが腕に巻きついてくる一体感と説得力のある棒でした。ビューティフル!

次のガーシュウィン、これも、しびれた。
変幻自在の山下洋輔ピアノ、結果、50分におよぶ演奏になりました。
幅広でシンフォニック、スケールの大きなオーケストラサウンド、もう、これだけで何も言うことがない絶品のパワフルサウンド。これに付かず離れず、一定の距離を保ちながら弾くピアノ、揺れる主導権。オケとの協奏の妙からソロ、カデンツァ、アドリブ、50分の長きになったのは山下ピアノが大きくそこに場を求めたものだからだろう。
流れるピアノ、呼吸は一定ではなく、ディテールやフラングメントパッセージの肥大化、ジャズ風な大波小波を大いに感じさせてくれる。山下アートを満喫。
ファレッタさんは入念な指揮、スケールの大きなサウンド、ナチュラルなドライヴィング、ジワジワと広がりを魅せていく。本当に素晴らしい演奏。ピアノの入りのところではほぼ必ずコンタクトを取って合わせる、ピアニストのピアノに敬意をはらっている様子がよくわかる。ピアノがこれほど動いても自然な流れに持っていくファレッタさん、あっぱれ。

一本ずつのインストゥルメント技に耳を奪われながらも、いつのまにかオーケストラという集団としてのサウンドに強く引き込まれた。シンフォニック、スモーキー、ムーディー、メランコリック、いろんな言葉が浮かんでくる。濃密な演奏。
第2楽章のトランペットソロは出だし、なにやらストールのようなものをラッパに巻きつけ角を消した独特の響き。それから、ストールを取り、譜面台に赤いハットを掛けていてそれにラッパを向けて吹く、これは裸音とストール音の間ぐらいの音、それと通常のミュート、また、ミュートをはずした通常音。結局4種類の音色で吹いたと推測。濃いソロ。
山下さんのアドリブが長くて、50分という破天荒の長い演奏となりましたけれども、ピアノ、指揮、オーケストラ、全て満喫。ガーシュウィンを堪能しました。圧巻の演奏でしたね。


後半の一曲目は、カーニスのムジカ・セレスティス。これは初めて聴く。
天上の音楽、弦楽合奏による美しい作品。漂いのような音がリズミカルなものに変化し、漂いにもどっていく。1960年生まれのカーニス、時代の作品といえよう。
ステージを通常のオーケストラ編成にセッティングしなおし最後のコープランドへ。それが何故か、カーニスの最後の漂いがそのままアパラチアに引き継がれているような雰囲気となる。この絶妙なプログラム・ビルディング。
アパラチアの春、今日の演奏はオーケストラ版の組曲なれどアメリカの心象風景のような冒頭のおだやかな音楽にはカーニスの佇まいが引き継がれているように感じる。彼らの時代は順序から言って逆なのだろうが、ネオ・ロマンティシズムのコープランド先取り感。
情景が目に浮かんでくるような鮮やかな演奏、ファレッタさんのアメリカ音楽4連発は全てが真骨頂、このコープランドのややドライにしてジワッとくる情感、美しい音楽にうたれました。

長い演奏会、それでもやる、アンコール。
エリントンの作品。トロンボーンのなだらかな流れ。やっぱり、こういった曲は人工美の極致のように聴こえる。何かを斜めに見ているように思えたりする。たくさん楽しみました。今日の企画、大満足、ありがとう、新日さん。
おわり