河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2470- 第九、サッシャ・ゲッツェル、読響、2017.12.20

2017-12-20 22:17:47 | コンサート

2017年12月20日(水) 7:00pm サントリー

ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調Op.125  16-14-15+24

ソプラノ、インガー・ダム=イェンセン
メッゾ、清水華澄
テノール、ドミニク・ヴォルティヒ
バス、妻屋秀和
合唱、新国立劇場合唱団

サッシャ・ゲッツェル 指揮 読売日本交響楽団


年末のお祭り騒ぎの第九とは明らかに一線を画す屈指の充実公演。
指揮者はクリヴィヌからゲッツェルに変更。編成は目視で、12-12-8-8-6の対向配置。プリンシパル陣勢ぞろいの感がある。コンパクトな編成ながらダイナミックで引き締まった演奏。

ベートーヴェン・インスピレーションの塊のような冒頭、ホルンが見事な序盤、空虚なハーモニーを鳴らす。
フルオケが、ピアニシモからフォルテへ、ひたすら下降する音型。この諦めの混沌からフィナーレでは人類愛まで登りきるベートーヴェン作品の凄まじき内容。
ぎっしりと引き締まった弦、メリハリの効いたティンパニ、そして演奏を終始リードするウィンドとブラスセクション。無駄のない動きのゲッツェルの振り、そのままの音が出てくる。弦への指示はさほど大きくならずとも反応が圧倒的。これだけのレスポンスで返ってくるところを見るとプレイヤーたちのやる気度も完全に本気度100パーセントと見た。
ウィーンフィルのヴァイオリン奏者だった人の指揮と反応は出来て当たり前のデフォなのかもしれないという安心感有り。つまり今日の特筆すべきド反応はウィンドとブラス。ザッツが強くならずとも、すーっと弦をリードしていくような吹き具合で、これは指揮者の技のなすところだと思うのだが、このスタイル、本当に音楽を生き生きしたものにしていて、カツ、前のめりにならない読響セッションのプリンシパルたちをはじめとする技量の高さもあり、騒ぎの無い、静かな快活さのようなものがうまく出ていた。読響の正三角錐ベートーヴェン、と、アルブレヒトのベト全CDを思い起こすのに時間がかからない。ベートーヴェンの本格的な演奏ここに極まれり。

管のリードする中、指揮者のワンモーションで歌い揺蕩うベース、チェロと同じ数のヴィオラの弾きの頑張り、対向の妙がくっきりとしたヴァイオリン群。ゲッツェル圧巻の指揮。
惚れ惚れとする見事な第1楽章はあっという間に過ぎ去りし。

次のスケルツォは第1楽章を凝縮したものでオケの鳴りが何かの塊のよう。ゲッツェルの振りは身体の内面から湧き出るものを表現していてごく自然、納得するところが多いですね。ご自分のベートーヴェンのイメージがあるというのをしっかりと感じることが出来るもの。作為が無い。

ここまでで約30分、充実の内容。ソリストが入場。位置は合唱の手前、オケの奥。

第3楽章は変奏曲の趣きで聴く。型の事は忘れてしまっていて、ゲッツェル棒から繰り出される充実サウンドにばかり目がいく耳がいく。
何杯もの極上ウィスキーの上澄みが次から次へと出てくる。いい香りが漂う。美味しい。うまい。リードする管が川面にあちこちと浮いている。いつの間にか同じ方向に流れ出す。弦の静かな物腰がもう一つの流れを作り出す。やがてこれらがブレンドし、見事な一致ストリームを奏でる。出色の演奏。マーベラス。

間をちょっとだけおいて終楽章へ。
音楽作品の感興によりそったゲッツェル棒は自然、エキサイティングな展開なれど小節をきっちりとひとつずつ自覚、認識しながらの振りで、音楽はこのバーからでてくるんだ、オレはそれをしているんだ。読響さんも今日は素晴らしすぎるぜ。そう言っているようだな。
モチーフの打ち消し、曲想の発展、歓喜の歌、全てが自然。
管のリードによるやや硬めな疾風怒濤の同楽章冒頭回帰、そして妻屋さんの一声、輝いている。彫りが深くてエナメルのような質感、克明な縁取り、惚れ惚れとする声。おお、今日も好調だ。この決まり具合に初台の合唱のテンションも歌う前から上がっている。少人数のコーラスはオーケストラのサイズと同等、そしてダイナミックで緊張感あふれる歌う口までオケと一体。凄い。遅れない歌い口というのは歌う前から今日の進行がわかっているからだと何も言わずとも感じる。オケ、合唱、共に素晴らしい同一性を感じさせてくれるこのブリッジとなった妻屋バス。

シンフォニックだった。
やや硬質の力感溢れる見事な演奏はゲッツェルの望むところだったのかどうかはわからない。
でも、
限りを尽くす、これに尽きる。平衡感覚に優れた棒は高濃度で大好感。読響が水を得た魚のような演奏をしたではないか。
最後の一音の結末まで、こよなく満喫できたシンフォニー9番ワールド。指揮者とオーケストラ、ソリスト、合唱に、心の底から、ありがとう。
おわり