2017年11月25日(土) 2:00-4:20pm サントリー
ストラヴィンスキー ペトルーシュカ1947 34′
Int
チン・ウンスク Choros Chordon (2017) 12′
ラフマニノフ 交響曲第3番イ短調op.44 17-11-12′
(encore)
プッチーニ マノン・レスコー第3幕より 間奏曲 6′
サイモン・ラトル 指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
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オールスターキャスト揃い踏み、メインディッシュ2皿の満腹プログラム。
チンの作品は後半の頭に持ってきた。たぶん、オケ編成の都合によるものと思われる。日本のオケメンと違い、入退場はみなさんテキパキとしていて気持ちのいいもの。プログラムの組み方も同じように無駄な時間を作らないものと見える。
ペトルーシュカは譜面無し。後半2作品は譜面見ながらの指揮。
ハルサイなどと並んでラトルの最も得意とする分野ですからね、ペトルーシュカの棒さばきは圧巻でした。
緩急自在、伸縮自在のストラヴィンスキーは、シンフォニックな動きを感じさせる。シンフォニーの音、内面化された意味合いを強く感じさせる。素材の有機的な結びつき。複数のモチーフが分解されて全部聴こえてきて、進行するに従いどのように結びついているのかがよくわかる。モチーフの運動と伸び縮みがまことに自然。このような演奏なら何時間でも聴いていられる。
ラトル余裕の解釈で、これまで自ら確立してきたものを自由自在、変幻自在に振っているようだ。ベルリン・フィルの個々のプレイヤーも阿吽の呼吸で演奏している。
強靭なソロ技、そして自らのソロ技に全く驕ることの無い強烈な密着アンサンブル。こういったところが深い、深い。
何一つ粗末にしない。末端神経も脊髄神経と同じ扱い。これ、国内オケのプレイヤーは見習うべき。いつも近くで観て聴いているので違いがよくわかる。まぁ、鮨屋の握りに例えたくなるが、しない。
このペトルーシュカ、音がやたらとぶ厚い。濃厚フレーバーのエスプレッソダブルな味付けで、手応えあり過ぎまくり。それでいて、ぶ厚くなればなるほど音の透明感が増すという、マジカルな世界。巨大な音の塊がぶっ飛んでくるが身体を透けて通ってしまうような勢い。ベルリン・フィルの音はレントゲン光線のようだ。
ウィンド、ブラスにソロ技が頻発するので、そういったあたりも聴きごたえ満載。合奏ともどもハイレヴェルで、オーケストラの醍醐味を満喫しました。
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後半1曲目。チンの作品。
タイトルのChoros Chordonはギリシャ語で、英語だとDance of Strings、日本語だと弦の踊り。
今年2017年の新作、jp記載がありませんので国内で既に演奏されているという事か。
10分強の作品で、静-動-静。ハープをひっかく様な音から始まりパーカスに降りてきて静かに始まる。昔聴いたような進行。
最初の静はそれほど弦が中心というわけでもなさそう。中間部はフルオーケストラになりダイナミックで強烈なモーション。のたうち回る管弦楽。そうこうするうちに、全体が静まり、弦がまるで一本のように静奏を歌い続けていき、もう一度短い盛り上がりがあって、静まり消え入るように終わる。インストゥルメントのフル活用ながらオーケストラの機能美を殊更前面に出すことは無い、作曲家余裕の心象風景を見る思い。
本日最後の曲は好物のラフマニノフ3番。3番があれば飛んでいく。
とんでもねぇ3番でした。重量級の戦車にまるで羽でも生えたかの如く易々と飛んでいく。我々はどんなに強く弾こうが吹こうが叩こうが絶対に壊れないんだよ、ほれ、今その証明をしてやる。
おっしゃる通り、怒髪天を衝く激演。特に終楽章、シンコペーションの節回しに気品があって美しい曲だよね、を、蹴り飛ばしてもらいました。そこかしこの草木をなぎ倒す猪突猛進。スーパーパワーオーケストラの真の力を見た気がしました。やってる方は、たぶん、日常茶飯事でしょうけど。
冒頭の短い序奏に続きギラギラと輝くブラスの圧力。続く提示部第2主題のチェロの歌、膨らみがあって夢のような歌。何をしようが切れそうもないビロードのようなしなやかな流れ。うーん。凄いもんだ。
1楽章からこのテンション、夢のような音楽はあっという間に過ぎ去る。
第2楽章はスケルツォ部分の粒立ちが素晴らしく良い。アダージョとの対比が見事。第1楽章の余韻のようなアダージョと終楽章への律動予兆のスケルツォ。両方持ち合わせている。振幅のある音楽をいとも容易く濃く演奏してしまう。味わい深すぎて耳が追いつかない。それぞれの楽章が本当に短く感じてしまう。
終楽章はテンションマックスのアンビリーバブルな絶対壊れない演奏。過激にヒートしていく演奏、ボリュームマックス。もはや、圧死状態。極限技マックス。
メインディッシュ1皿目のペトルーシュカではシンフォニックな筆の運びにうなりましたけれども、ラフマニノフのほうはシンフォニーであることを忘れさせてくれる。破壊的なカタルシス、決して壊れませんけどね。
トータル馬力、アンサンブルの美しさ、ソロの魅力。どれをとっても悶絶の演奏。
ペトルーシュカは行き着く先の演奏、ラフマニノフは別の顔、色々と楽しませてもらいました。
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ラトルにとってはオケ中央に鎮座するパユが中心プレイヤーなのだろうね。演奏が済んだ後、彼のところに必ず駆け寄る。よくやったと肩に手をしてくれるのはパユなんだよね、ラトルの肩に。
あと、ホルンは1番ドール、4番サラ。コンマスは樫本。
アンコールはプッチーニものけぞる仰天パワー、スーパーヘビー級のマノンレスコー間奏曲。天井の蓋が飛んでいってしまいそうな、バスドラの大強打、ありかあぁ。悶絶しました。
最初から最後までたっぷりと楽しみました。
ありがとうございました。
おわり