2017年7月9日(日) 2:00pm 東京芸術劇場
モーツァルト 魔笛、序曲 7′
ラヴェル 左手のための協奏曲 18′
ピアノ、ジャン=エフラム・バヴゼ
(encore)
ドビュッシー 亜麻色の髪の乙女 2′
G.ピエルネ 演奏会用練習曲 4′
int
シュトラウス ツァラトゥストラはかく語りき 33′
広上淳一 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
●
右手でピアノのヘリをつかんで左腕全部でパーカス風な激しい叩きを魅せたかと思うと、ウェットでドビュッシーのような色調の美ニュアンスを繰り広げたりと自在でビューティフルなバヴゼの左手。素晴らしい。ごもごもした音になりがちな曲、一点の曇りもなく弾かれるラヴェルには惚れ惚れ。やや太めでクリアなサウンド。大詰めカデンツァが静かに始まり次第に熱を帯び音のアヤここに極まれりの頂点までいき、圧倒的なオーケストラ伴奏の中、全員しなってフィニッシュ!これ以上長い曲には出来なかっただろうなと凝縮濃厚ラヴェルを満喫。なぜかドビュッシーのアトモスフィアに満たされる。
広上、日フィルの伴奏越えのパフォーマンスがこれまたえも言われぬ美しさ。柔らかいマッシヴサウンド、柔軟な筋肉は音楽の表情を広げて豊かにする。またときに飛び散るようなスプラッシュな音のシャワー。間近で浴びるブラス、ウィンド、弦、心地よい。
広上の棒は伴奏をはるかに越えて冴え渡った。
アンコール1曲目のドビュッシー、ラヴェルのあとのドビュッシーという感覚ではなくて、ドビュッシーのあとのドビュッシーという聴後感。なぜか予定調和的な響きを感じましたね。
前半冒頭のマジックフルート、これもいい演奏で、ラヴェルで魅せてくれたオーケストラルサウンドの色彩がのっけからよく出ていた。びっしり敷き詰められた弦を押し分けるとまた弦が出てくるといった演奏、素敵でしたね。ウィンドの扱いも絶妙。
スポンジのようなペイヴメントそんな感じの佳演。
●
後半のツァラ、最初から肩の余計な力が抜けている。広上棒はダイナミックレンジを弱のほうに殊更とることはない。ナチュラルなプレイを要求。それに各小節の頭の音に押しが効いていて、同じような強さで結構長めに押す。オーケストラは余裕のザッツ幅でアタックの揃う縦ラインは何個でもあるものだと言っているようだ。この幅がソフトでビューティフルなサウンドを醸し出す。マーヴェラス。
ブラスセクション、手前のウィンド、そしてストリングと、この奥行き感、たまりません。オーケストラを聴く醍醐味です。ホルン6人衆に名フィルの安土さん、柔らかみがさらに増す。
広上は用意周到な下ごしらえをしている。オケバランスと歌い口、滑らかで自然ですね。ミスタートロンボーンをはじめとして各プリンシパルには自由に吹かせつつ全体を丸く仕上げていく手腕にはうなるばかり。清加コンマスのソロは体躯からは思えぬ強靭な弾き。音色具合がオケに同色で溶けているのでとろみの効いた音はいくらとトロが並んでいるかのようだ。
プログラムとしては短いもので、ピアノアンコールを2曲入れてくれたのは良かった。
本日で退団する方に広上さんが一言添えてお花を渡していました。
おわり