河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2159- 蝶々夫人、チョン・ミョンフン、東フィル、2016.7.22

2016-07-22 23:52:26 | オペラ

2016年7月22日(金) 7:00-9:30pm サントリー

プッチーニ 蝶々夫人  (コンサートスタイル)
ActⅠ 48′
Int
ActⅡ(beginning) 48′
ActⅡ(conclusion) 30′

キャスト(in order of voice’s appearance)
1.ピンカートン、ヴィンチェンツォ・コスタンツォ(T)
2.ゴロー、糸賀修平(T)
3.スズキ、山下牧子(Ms)
4.シャープレス、甲斐栄次郎(Br)
5.蝶々夫人、ヴィットリア・イェオ(S)
6.ボンゾ、志村文彦(Bs)
7.ヤマドリ、小林由樹(Br)
8.ケイト、谷原めぐみ(Ms)

合唱、新国立劇場合唱団
指揮、チョン・ミョンフン
管弦楽、東京フィルハーモニー交響楽団


このストーリーには色々あるかとは思いますが、とりあえずそれは横に置いて、といってもなかなかそうもいかず、そこは、空気が動くからドラマが出来る。そうゆう話ですね。
若い主役二人、ピンカートン役のコスタンツォは1991年生まれということだから、平成生まれの25歳といったところか、ストレートな活きのいいテノールでフォルテへの推移に大げさなブレスもなくて滑らか、ピッチが安定していて聴きやすい。強弱がさらに大きくなれば劇性も増すと思うが今はこれでいいとも思う。なんか、ぶつけていってほしいですよね。正面突破で、このまま。
タイトルロールのイェオ、比較的キーンな声質で、リリックソプラノが自然にスピント風味に聴こえてくるようなところがありますね、大柄で自然な威力もいい方に作用していそうです。妙に丸みをおびていないあたりこのロールにマッチしているし、相手役とのデュエットも天空をストレートに見上げるようなそう快感がある。ヤング・デュエット、最高。
歌い手は、しもてから歌う都度出入りする。歌うポジションはオーケストラの前、聴衆から指揮者に向かって左半分を使っています。

そして、このオペラをビシッと締めるのはミュンフン・チュンの見事過ぎる暗譜棒。オーケストラのサウンドは締まっていて十分すぎる聴き応え、もう、これだけでオペラの醍醐味を満喫、伴奏をはるかに超えている。プッチーニ独特の擬音的なあたりのイメージ効果、コンサートスタイルでもなんか色々と目に浮かんでくる。また、あまりタメを作らない運びながらプッチーニの泣き節をホール全体に響き渡らせるあたり、あまりの素晴らしさに最初から最後までツボ状態で聴く。素晴らしい。オケの締まりがホントいいですね、この前、新国立でローエングリンをやったオケと同じとは到底思えない。別物です。指揮者が変わるとこうもかわるものなのかと!びっくりですね。

こうしたこともあってか、それにコンサートスタイルのコンディションの良さもあってか、タイトルロールのイェオさん、入魂の歌、役になりきり、時折涙しながらの白熱の絶唱でした、それに第1幕和服、第2幕前半ドレス、第2幕後半は白装束と、ホールオペラ風な展開で、ものすごく印象的な蝶々夫人となりました。

今日の主役二人は指揮者の力で呼んだものでしょうがお見事な歌唱でした。それに脇がいい。一層、髪が伸びた甲斐さんは余裕のシャープレス。そして女中役の山下さんは相応ななりで最初から最後まで通しました。彼女の立場ならではのなんともやるせない気持ちのようなものがよく出ておりました。この二人をそれぞれ主役と絡めた重唱、そしてソロ、両方とも聴き応えありましたね。脇がいいと本当に締まります。
合唱は第1幕と第2幕第1場の裏で歌うハミングコーラスまで。オーケストラ同様のいい締まり具合でオケとソリストとの絡みアンサンブルがお見事でした。指揮者の力がここでも光ります。


第2幕第1場の、ある晴れた日に、の美しいアリアから同場最後のハミングコーラスまで、ここは聴かせどころ多いですね。プッチーニの泣き節に、泣けます。声も出ません。あまりの素晴らしいプッチーニ節に、もう、浸りきる。
ハミングコーラスのシチュエーションと第2場大詰めの自刃シーンは障子の白黒シルエットをイメージしながら。また、子供が出てくるわけではありませんが、そのシーンは手に取るようにわかる。切なくやるせないものですが、ミュンフン・チュンの棒は冴えまくり、まるでそこに子供がいるようなこってりとした味付けの音楽がはかなくも美しい。

物語の場所、歌われる国の言葉、引用された音楽、歌う方の国籍の多様性、そして指揮者、とにかくいろんなものがミックスした国際性豊かな上演。そして高い完成度、指揮者の力量によるところが非常に大きいとはいえ、応える歌い手、オーケストラ、合唱、すべて見事の一点に尽きる素晴らしいコンサートでした。
満足しました。ありがとうございました。
おわり