河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2155- ブルックナー8番、ジョナサン・ノット、東京交響楽団、2016.7.16

2016-07-16 23:36:59 | コンサート

2016年7月16日(土) 6:00pm サントリー

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調 ノヴァーク版第2稿 15′15′26′22′

ジョナサン・ノット 指揮 東京交響楽団


殊の外、柔らかい弦で始まった演奏で、充実した音が満ち溢れた演奏、弦の第1プルトから最後尾まで全員がものすごいハイテンションで弾いている。高弦の明るめの充実サウンド、チェロのしなり、ベースの豊かな鳴り。どれをとってもすごいが、チェロの弾きっぷりは全員最高峰テンションで、あれがあればこその、この演奏。ホルン、ワグナーチューバの鳴りも隙間なし。特にホルンはプリンシパルとともに2番3番あたりの活躍部分の力量的な充実感もありますね。ブラスセクションと同等に渡り合うストリングのバランスなども、もはやうなるしかない。こんな感じでびっしりと詰まった音が進んでいくさまはオーケストラを聴く醍醐味、快感が走る。
オーケストラの個々の技量が非常に高い、でもそれを誇示しない。ノットのコントロールと解放。この場合、解き放つ開放感というよりもコントロールが行き届いていて、そのようなコントロールの中にいることにオーケストラのメンバーはむしろ自らが快感をシンクロしているような気さえする。抑制されたものではなくて、インディーズ的な快感みたいなものではないかと思う。それがノットという指揮者を得て独立独歩ではない一点焦点のプレイにつながっているので破壊力がすごい。

ノットの作る音楽は造形美にも優れていて、バランスが最高に良いですね。
ソナタを例にとると、配分比率は以下。
第1楽章 15′
提示部1S,2S,3S   2,2,2
展開部         4
再現部1S,2S,3S   1,1,1
コーダ         2

第4楽章 22′
提示部(経過句含む) 1S,2S,3S  2,2,2
展開部               7
再現部(経過句含む) 1S,2S,3S  2,2,2
コーダ                           3

見事な構成の作品をこの日のような構成感で演奏すればこのように最高のバランスとなる。ノットはあまりテンポ動かすことなく、タメのような音楽的な息、ブレスは作らない。音がぎっしり詰まってなおかつよく動ける音の肉付けと言える。
終楽章における展開部の十分な展開、拡大された再現部は、第1楽章の流れからの正解を出していると思う。ちなみに第7番は終楽章が弱いのはこのように分解すれば自明で展開不足再現不足。8番の方が圧倒的に巨大でバランスがいいが、流れる音楽の美しさで7番が際立っていて、この8番はどちらかというと静止モード。
ノットは第1,4楽章ともに第3主題が速めで流れる。と言っても、7番のような流麗なものではなくて、もっと縦に突き刺すようなリズミックなもの。それから、経過句が濃い。ウィンドのハーモニーや川の流れのような束の弦のほんの少しの経過句を十分によく味わい深く聴かせてくれるので曲の充実感が濃い。印象がその分、濃くなる。
また、終楽章のコーダは第1楽章の第1主題の炸裂音回帰からとみなせばさらにバランスよく感じるもの。まぁ、見事に整理整頓された作品なので、炸裂音回帰は、全部終わったので今から最後のコーダをやるよ、というまとめ的なもの。ノットの作り出す音楽と言うのはこの四角四面な作品に対峙することなく、内面から音を外に照射するような輝きがジワーッとあふれ出る。全部の主題の同時出現の離れ業が進行する中、降下音型の終結部に向かう直前、ギザギザと登り続ける波形主題のトランペットが最後の光り輝く2音を放つと、怒涛のような下降音型が執拗に連続し、どちらかというとなで斬りエンディング。しつこく押すことはない。圧倒的な光の中で、下降音型で音楽は昇天するという奇抜なブルックナー8番、しびれました。

殊の外、柔らかく感じた冒頭の音色それから、それ以降のノットの解釈表現は、2年前のエポックメイキングな演奏となったブーレーズのノーテーションを思い出させてくれました。
1645- ノタシオン、夏の夜、サーシャ・クック、グレイト、ジョナサン・ノット、東響2014.6.14

一度そう思ってしまうとなんだかそれがずーと頭の中で響きはじめた。余計なものを全て削いだところから始まるブーレーズ。ノットのブルックナーは原点のフレッシュさを感じさせてくれますね。
素晴らしい演奏でした。ありがとうございました。
おわり


付記
演奏の前、静まったところで、フライングするなとあれだけしつこくアナウンスしているにもかかわらず、この日も迷惑行為のフラブラ発生。それも墓の中のブルックナーがロール・オーヴァーしそうななんともさえない間の抜けたもので、注意しに行こうと思ったら逃げたので何しに来たのか全くわからない。今回は色々とあって犯人が特定される気配。
この種のマリグナント・チューマーは取り除くしかてがないように思う。ノット、オーケストラ、聴衆、三位一体となって作り上げたブルックナーの巨大な世界を一瞬にして無にする迷惑行為、悪辣なもので残念でした。