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河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2381- ベトソナ20、悲愴、ハンマークラヴィーア、児玉麻里、2017.7.15

2017-07-15 22:01:36 | リサイタル

2017年7月15日(土) 2:00pm 第一生命ホール

オール・ベートーヴェン・プログラム

ピアノ・ソナタ第20番ト長調  3-3′
ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 悲愴  8-4-5′
Int
ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調ハンマークラヴィーア 11-3-16-12′

ピアノ、児玉麻里

(encore)
4手ピアノのためのソナタ ニ長調op.6 第1楽章アレグロ・モルト  3′
ピアノ1、假屋崎省吾
ピアノ2、児玉麻里

*曲間トーク、假屋崎省吾、児玉麻里


このホールにはお初でかがいました。サイズはコンパクトでリサイタルにはいいものと思う。ピアノの音はサントリー系で焦点合わずもやっとしていて埃っぽい。
この日のリサイタルは、年一回のお祭りイヴェントのような雰囲気。始まる前のスタッフ連の粛々とした振る舞いは敷居の高いものでしたけれども、終わった後のお土産売り、サイン会段取りなどの張り上げ声、ごった返し状態。前と後ではこんなにも変わるものかとびっくり。トークお目当ての様なかたもいたように思います。
はしたないなりでペットボトルを飲みながら自席に向かう、あっちの席がいいわとだだこね、演奏構わずしゃべる、手を上に振るおじいちゃん、等々おもしろい現象が色々とありました。品のない客が多い印象。
やるほうとしてはあまり仕事をしやすい場所ではなさそう。まぁ、見ないでプレイするのが一番かも。
プレイ前の二人トークも気になります。演奏への気持ちの切り替えはすぐに出来るのだろうか。客寄せトークなのだろうか。不要です。

ベトソナに集中できるコンディションではなかったがとりあえず聴く。

20番。大柄でアクションもデカい。鍵盤から両手を離し上に大きく上げ、クルッと決める仕草、指揮者でもあのようなアクションはなかなかしないと思う。メリハリが効いていて視覚効果あります。演奏もそうですね。この曲サイズは小さいものですけれども極めてダイナミック、装飾音の動きが速くて引っかかったように聴こえる時もある。ざっくりとした弾きながら後方席の客までうならせるものがある。まぁ、決然とした弾きですね。

悲愴。20番のカミソリが少し和らぎトロンとした雰囲気が出てきた。中間楽章は重くならず通過、これはこれでいいのかもしれない。

後半の29番は最初の20番の活力が戻って来た。内容的には本調子に非ず、完成度が高いものではなかった。この日のリサイタルのためにどれだけ練習をしたのかという思いが脳裏をかすめました。
1,2楽章は一気呵成。グイグイ押していく。両腕上げアクションもツボ状態。
アダージョ・ソステヌート楽章。強弱記号が現れるのは15小節目のデクレシェンドからのP、開始から強弱が今一つ定まらない。このホールのせいかもしれない。コンパクトと言いつつ横幅広で収容数は767人。天井が高く相応な叩きが要求される。一番弱めの音が比較的大きいので、それベースで音量増加をしていく感じ。大柄で叩きは申し分ない。弾きが均質でないところが散見、ムラがありこのミステリアスな世界にもう一歩安定感が欲しかった。終楽章は劇的なものではなくて流れを作りきれていない。

このシリーズ、今回が2回目で来年2018年7月1日に第3回目として30,31,32を弾くようです。落ち着いて仕事が出来る環境でじっくりと聴きたいものです。
おわり

 






2367- ワルトシュタイン、ラ・ヴァルス、シューベルト19、ヒンターフーバー、2017.6.19

2017-06-19 23:25:42 | リサイタル

2017年6月19日(月) 6:30-8:30pm 日経ホール

シューベルト 12のドイツ舞曲Op.171 D.790 & 17のドイツ舞曲D.366
              抜粋シャッフル演奏  8′
              D.366-10,1,8,9, D.790-5, D366-9 D790-6,3,4 D.366-2,3,4,5,10 da capo

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 ワルトシュタイン 10-4+9′

ラヴェル ラ・ヴァルス(ピアノソロ版) 11′

Int

シューベルト ピアノ・ソナタ第19番ハ短調D.958 11-8-4+7′

(encore)
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ  5′
ツェルニー シューベルトのワルツによる変奏曲  4′

ピアノ、クリストファー・ヒンターフーバー


お初で聴きます。端正な風貌からは想像つかないような止めようもない激烈な演奏。最初のシューベルトのドイツ舞曲のシャッフル演奏は飛び跳ねるような快活な演奏でこんな曲なんだろうぐらいにしか思わなかったのだが。
ワルトシュタイン、もともと激しい第1楽章で最初はあまり感じなかったがどんどん過激になっていく。スピード感、飛び跳ね感。終楽章に至ってはきれいな縁取りの流れを少し横に置いて第1楽章と同じようなテンポ感でビンビン進めていく猪突猛進型。
第1楽章終わったところで長めの拍手。主催とか協賛の招待客が多数だったのだろう。なにしろ入場もぎりでは一般客より招待列のほうが長かった。座席指定リサイタルとは言え。
わからない連中の拍手は仕方がない面もあるが、GGBB連中はなかなか拍手をやめない。自分たちの非を認めたがらない年寄りたちを前に奏者は苦笑いするのみ。といったところもあったのだが、すぐに切り替えてコラール風味のアンダンテ。キリッと落ち着くあたり大したもんだ。
激しいベトソナでした。

と、ここで一服する間もなく、さらに過激なラヴェル。開いた口が塞がらない。そもそも徐々に崩れいていくワルツ。それがヒンターフーバーのプレイで崩壊的になる。低音から始まり入念な盛り上がり、叩き、グリッサンド、荒れ狂い。悶絶ラヴェル。これもワルツ。なぜか築城感。物が一つ出来上がったような感覚。不思議と言えば不思議。

後半のシューベルト。遺作1番。ほぼベートーヴェンという印象。形式感が前面にでる第1楽章、それにアダージョ楽章の対比が際立っていて、見事な演奏でした。
メヌエットから終楽章アレグロは一気。特に終楽章の飛び跳ねエネルギーには恐れ入る。音楽がこれから先このまま永遠に続いていきそうな気配すら感じる。

沸騰リサイタルでした。
アンコール1曲目のパヴァーヌは整理体操のような雰囲気が醸しだされて、こっちも一息つけた。
おわり

 





2366- ベトソナ11,23,30,31、6変、エロイカ変、浜野与志男、菊地裕介、田部京子、2017.6.18

2017-06-18 23:02:09 | リサイタル

2017年6月18日(日) 2:00‐5:40pm 一橋大学兼松講堂

オール・ベートーヴェン・プログラム

ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調  6-9-4-6′
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 熱情  10-7+5′
  ピアノ、浜野与志男
(encore)   2′

Int

創作主題による6つの変奏曲ヘ長調  13′
≪プロメテウスの創造物≫の主題による15の変奏曲とフーガ変ホ長調 23′
  ピアノ、菊地裕介
(encore)   5′

Int

ピアノ・ソナタ第30番ホ長調  4-3-14′
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調  7-2+11′
  ピアノ、田部京子
(encore)  3′

ナヴィゲーター、インタヴュワー、西原稔


ベートーヴェン6曲を有名どころ3人で2曲ずつ、アンコールそれぞれ1曲ずつ、このエキスだけで2時間半近く。ナヴィゲーターによるショート解説と3人へのインタビュー、それに2回の休憩含め、3時間40分ロングのリサイタルとなりました。お話も含め大変に充実した内容でした。ガラス窓から外の小雨模様が見えるホール。カーテンを閉めることなく外から緑の明かりが入り込む。

浜野さんのベトソナ11,23からスタート。
11番。ソナタ強固でヘヴィーな曲。全体的に明るい曲、非常に充実した手応え十分なものでいきなり大曲からスタートで聴く方も構えがいる。
浜野さんは息を整えて、終始落ち着いた演奏で技もさえる。粒立ちの良いフレーズがきっちりと弾かれてゆき構造が照らされる。素晴らしい。後半2楽章はさらにさえ渡る。
3楽章のキラキラするメヌエット、終楽章ロンドのデリケートな中にきらりと光る鮮やかな響き。光沢、フレッシュ。

熱情も同じスタイル。終楽章は攻めきれずのところがありましたけれども、この楽章は正確な流れが快感。2拍子16分音符の正確な流れ。突進力、勢いよりも自然で正確なスタッカート気味の粒立ちが上回る。
第1楽章の谷から山へのクリアな動き、一歩抑えた運命動機。アダージョ楽章のコラール風味のきれいなハーモニー。全て音符のクリアな響きが心地よい。

2月にオペラシティのリサイタルホールでB2Cの企画で弾いたのを聴いたばかり、今回はベートーヴェンで、なるほどあのような切り口でのベートーヴェンかと納得。

2279- 浜野与志男 ピアノ・リサイタル、2017.2.21


二人目は菊地さん、黒の軽装。お初で聴きます。
既にベトソナ全の録音もしていて、力んだところが無くて自由自在な気持ちで作品にあたっている。一仕事やり終えた達成感からくる視野の広さというか広がりの実感が心に余裕をもたらし、幅広な視点に立ったプレイが出来るのだろう。変奏曲2曲果てしも無く続く妙技。
プロメテウスはソナタ1曲分の規模になる大掛かりなものでストレートな進行の作品ですね。変奏曲、大スケールのフーガ。圧倒的な演奏でエロイカの突進力が目に浮かぶ。徐々に大きくなっていくその傾斜が見事なプレイで表現されて圧巻でした。素晴らしい演奏でベートーヴェン満喫。
6つの変奏曲は各ピースが3度ずつ下がっていくもので、それに他の変化もあって創作料理のようなものか。そんな感じで聴けば興味は色々とつながっていく。ガラスの窓のホールの響きの良さが実感される作品と演奏でした。

それにしても2曲で40分近く。本当にデカい曲。こちらの気持ちも緩みません。


三人目は田部さん。最近の記憶はありませんが、以前聴いているはず。
30番31番。まずは鮮やかというしかない。きれいな指使い、きれいな音。全てがピュア。それに姿勢が凄く良くて、なにか正しさの極みを見ているような気持ちになってくる。
31番は終楽章のフーガのあとのフィニッシュの仕方が人間技を越えていると思う。2回目の嘆きの歌の直後にコラールの響きが始まりフォルテまでもっていき、技を駆使したところで極限フィニッシュ。唖然とする素晴らしさ。ベートーヴェンの閃きここにあり。
第1楽章の頭、なにか、途中から始まったようなその冒頭、ここで既に嘆きの歌は感じられる。それが田部さんの指使いで美しくも枯れたような押しで開始される。ピュアな響き。
スケルツォは30番と31番ともに短くてすっと始まってすっと終わるのだが、鍵盤の叩き強調のようなフシは最後まで、やっぱりベートーヴェン、ですな。
30番終楽章は変奏曲でこの作品の中核。きれいなタッチで次々と現れてくる変奏、田部さんは姿勢が良くてぶれがない。演奏にもそういうところがきっちりと出ますね。端正というのではなくて華麗というあたりが、やっぱりいいですね。
31番終楽章はフーガ、最初に書いた通りですけれども、音を確かめるように弾く田部ピアノは心の落ち着きが見ていてわかる。ジワジワとくる高まり。鮮やかな弧を描いてフィニッシュ、素晴らしすぎる。


各ピアニストのプレイ前にナヴィゲーター西原さんの解説、そして2曲終わってアンコール前にピアニストにインタビュー。すっきりしたもので中身の濃いもの。4時間近くの公演でしたけれども全部楽しめました。充実のリサイタルありがとうございました。
おわり








2364- ベトソナ、30,31,32、松本和将、2017.6.16

2017-06-16 23:36:00 | リサイタル

2017年6月16日(金) 7:00pm カワイ表参道コンサートサロン パウゼ

オール・ベートーヴェン・ピアノソナタ・プログラム

第30番ホ長調op.109    3+3-16′
第31番変イ長調op.110   6-2+10′
Int
第32番ハ短調op.111    8+17′

ピアノ、松本和将


松本さんを聴くのは昨年2017年7月のベトソナ以来。
本日の公演はベトソナ全2年半企画の第8回最終回。

自分の感覚では30番と31番の間には少し距離があると思う。31番終楽章2回目の嘆きの歌のあと音楽は極限状態までいく。もはやこれ以上圧縮は不可能だろうというところまでいきつき、一気に解放してエンド。人間技とは思えない作品。どうやったらこのような作品を作ることが出来るのか。アンビリーバブルな曲。

プログラム前半の30,31の演奏は少し乾いている感じ。音を一つずつ作っていくような弾きで流れがでてこない。活力がいまひとつ。滑り具合が滑らかでなくてちょっと継ぎ目のようなものが出てしまう。ベトソナの素晴らしさが十分には伝わってこないところがあった。31番のフィニッシュはベートーヴェンの極限技を聴きたかった。

プログラム後半に置かれた32番。これは冒頭から明白にお得意の作品という感じの演奏。
ダイナミックな序奏、そして圧倒的な主題。
2楽章変奏曲は変奏の切り替えが自然で美しい。ここでは一つずつ音をかみしめながら作品を構築していく、それにふさわしい作品。きれいに鳴っている。流れよりも響きの妙が際立っている。手を鍵盤の上に置けば出る音、それが欲しかったのだとベートーヴェンが言っている。最高峰の作品。何度聴いても素晴らしい、ひらめきの作品。


この日は、アンコールは無くて松本さんのベトソナ企画最終回という事もあって締めのご挨拶と今後の企画の説明などを5分ほど。
声はあまり大きくないですが、細めの声で非常によくとおる声でびっくり。
いいリサイタルでした。
おわり


2359- 岡田博美、ピアノ・リサイタル、2017.6.8

2017-06-08 23:25:13 | リサイタル

2017年6月8日(木) 7:00-8:50pm 小ホール、武蔵野市民文化会館

ピエルネ パッサカリア op.52  10′
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第21番ハ長調ワルトシュタイン 11、4+9′
Int
マラフスキ ミニチュア  6′
ドビュッシー 子供の領分  2+3+2+3+2+3′
リスト ドン・ジョヴァンニの回想  17′

(encore)
ダカン かっこう  2′
ショパン 革命  3′
ドビュッシー 月の光  4′

ピアノ、岡田博美


ワルトシュタイン、弾むような感覚。それも結構な押しの強さで。ひとつずつの音が次々に光と影になる。タイルのようなマス目で表と裏が目まぐるしく変わる。濃い。
第1楽章は主題と副主題の違いがはっきりとしている。テンポ感はそんなに違わないけれども、どうも副主題のふところの深さを実感。太めの線、いいですね。
プログラム解説にある第3楽章というのは正しくは第2楽章のことだと思うが、このアダージョ楽章味わいありました。清らかな小川の底にでもいるような居心地。そのまま終楽章へ。小川の流れ、水切りの輪。太陽の日差し、光と影。なめし皮のような小川の流れ。何にでもなりそうな演奏、素晴らしい。小川への日差しは強くとも底は冷えている。

1曲目のピエルネのパッサカリア。バッハのトッカータのような最初のフレーズが続く。左手はそのフレーズの繰り返し、右手は変奏曲のように進む。モードは最初から最後まで変わらない。浅い。

後半の最初の曲はマラフスキのもの。5ピース明確に分かれている。どれもせわしなく動く。ゼンマイ仕掛けの人形の踊りのよう。バレエの伴奏音楽のように聴こえる。

子供の領分、浮遊感のある音楽でそれを少し抑えつけるようなプレイ。落ち着いた音楽を感じさせてくれる岡田さん独特の品の良さ。響きの世界堪能。

リストのドンジョ回想、パラフレーズもので最後はチャイコフスキーの1812年よりしつこいと思えてきて我慢ならない(笑)。
ひたすら、技もの。技巧駆使のもので、何を聴くかと言えばそれを聴く楽しみに他ならないわけで、ひたすら岡田さんの冴えた技を聴く。凄いもんです。圧巻。

アンコールは間をあまりおかず3連発。革命を聴けるとは思いませんでした。余裕のプレイ。最後のドビュッシーが雰囲気出ていました。右手の高音の運びがとても美しい。
今日はちょっと遠出でしたけれどもいいリサイタルでした、ありがとうございました。
おわり






2352- バッハ、マルティヌー、ラフマニノフ、山崎伸子、小菅優、2017.5.25

2017-05-25 23:14:16 | リサイタル

2017年5月25日(木) 7:00-9:25pm 紀尾井ホール

バッハ 無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調  5-10-4-4-4-5′

マルティヌー チェロとピアノのためのソナタ第1番H.277 5+5+5′

Int

ラフマニノフ チェロとピアノのためのソナタト短調  14-7-7-11′

(encore)
ラフマニノフ 前奏曲op.2-1  3′
ラフマニノフ ヴォカリーズop.34-14  7′

チェロ、山崎伸子
ピアノ、小菅優


ヘヴィー級プログラムのリサイタル。チェロ・ソナタ・シリーズ最終回10回目の公演とのこと。
だいぶ待たされて7時10分過ぎにスタート。
大きなプログラム、冒頭にピアノが無いチェロだけのバッハの作品。いきなり30分越えの曲から。
かぶりつきのセンター席でしたので、潤いのあるしなやかでボリューミナスなチェロサウンドを心ゆくまで浴びることが出来ました。満喫。
見えない水分が絶え間なく与え続けられているかのように弾き続ける山崎さんのチェロはそれだけで唖然とするものですけれども、それにもまして難曲をものすごいコンセントレーションで停滞することなくススッススッといとも軽く弾きまくるその技のさえていること。体力気力もちろんですが優れた技巧、そちらに耳が奪われました。細かい音符が均質で均整がとれ、連続性をもって繋がっていくバッハ、連鎖のマジック。圧倒的でした。このつながりの妙というのは最初のプレリュードから少しずつ自然過熱しジークでピークに達するもので感興が積分されていくような感覚。素晴らしいですね。1曲目からいきなり堪能。

次のマルティヌーに小菅さんが加わる。チェロの真後ろで弾くピアノ。ちょっと横にずれてセッティングしてくれればよかったのに。
マルティヌーの作品は、オーケストラ作品に比べて細かいところの技が沢山ありそう。小回りの利く編成で色々とやっていると思うが少し斜めに見たような作品かな。リズムパートではそれが強調されすぎるきらいがある。活力のある作品でエネルギッシュ、インストゥルメント同士のぶつかり合いみたいなところもある。火花が散る。オーケストラル作品の醍醐味も随所に聴かれました。これも堪能。

休憩の後は、チェロソナタ&ピアノソナタとでもいうべきビッグなラフマニノフ、40分の大作。これも両者の位置が少しずれてくれればと。それはそれとして、
ロマンティックでメランコリックなものだけではアンダンテは、もたないだろう。などと脳裏をよぎる。だからというわけでもないと思うが、頭でっかちの曲。
形式感を十分に感じさせる大規模な第1楽章。緊張感を孕んだ進行で各主題の妙、それにチェロとピアノの両楽器のアンサンブルの妙、力感あり聴きごたえ満点でした。ピアノの活躍がめざましく、山崎さんはしばし瞑想の間もある。
2楽章がスケルツォ、3楽章にアンダンテ。アンダンテはそれほどの長大さは感じなくて、同じ規模もしくは時間的に若干上回るスケルツォの規模の大きさが目立つ。スケルツォは前のマルティヌーのような荒々しさはあるが、角張っている感じは無くて、こう、すべるようにつながっていく。形式通りの音楽だが規模が大きい。ピアノとチェロが同時、順次と目まぐるしい。演奏はお見事、迫力ありました。
アンダンテの規模はそれほどでもない。これ以上長いと、持たないだろう。ちょうどいいと思う。ピアノの導入から始まる。全体にムーディーな雰囲気が支配。緊張感を持続させながらの二人のアンサンブルには聴き惚れる。もう、何十年も一緒にやっているような気さえしてくる。濃厚な楽章、ススッと終わる。
終楽章は、それぞれの楽器の鳴りが全開し、本当にぶつかり合い。パッセージの積み重なりは数珠つなぎのようになってくる。圧巻。素晴らしい。

アンコールはエキサイティングなラフマニノフの余韻で、同作曲家の作品を二つ。アンコールという雰囲気は無くて用意周到。チェロとピアノの同曲というのははじめ聴く。静かな中に何か哀愁のようなものがじわじわとにじみ出てくる。チェロ・ソナタ・シリーズ最終回、その締めくくり、それに新たな出発の決意。両方感じさせてくれた。
山崎さんのふところの深さ。実感。
小菅さんのピアノも山崎さんと同じく素晴らしいものでした。
存分に楽しむことが出来ました。ありがとうございました。
おわり


チェリスト山崎伸子 10年公演の次はバッハ : NIKKEI STYLE




2345- メシアン、幼子イエスに注ぐ20のまなざし、スティーヴン・オズボーン、2017.5.18

2017-05-18 23:49:51 | リサイタル

2017年5月18日(木) 7:00-9:25pm ヤマハホール、銀座

スティーヴ・オズボーン トーク 5′

メシアン 幼子イエスに注ぐ20のまなざし
                 9+3-3-5-7+10-4-3-3-8-7-3-3-5-12-3-6-7-10-14′

ピアノ、スティーヴン・オズボーン


この作品はお初で聴きます。ピアノのオズボーンは二日前に都響の伴奏でティペットのピアノコンチェルトの日本初演をしたばかり。あのときは左指に何か巻いているようにみえました。今日見たところ左親指と中指にテーピングしていました。強烈弾きの曲、そういったところもあるのかもしれない。

プログラム冊子には5曲毎に重要な楽章が置かれると書いてある。とりあえずそこらへんを頭に入れながら、メシアン自身が書いたという各楽章説明というのを、席はかぶりつきだったのでステージの光をもらって読みながら聴くことになる。

細身のオズボーンが始まる前に5分ほど通訳付きでトーク。そしてそのまま演奏に集中。まさに、コンセントレーションの世界。インスピレーションの再現が成るのか。

9+3-3-5-7+
10-4-3-3-8-
7-3-3-5-12-
3-6-7-10-14

宗教に特に興味を持ってませんので、曲も解説も外からの鑑賞。5曲毎に重要な楽章が置かれる、メシアン解説と曲の重みを聴くと、端的に言って時間がかかる(長い楽章)が重要という感じ。
テーマの現れ具合は以下。
Ⅰ 愛のテーマ
Ⅱ 星と十字架のテーマ


Ⅴ 神のテーマ (数字の3がキーワード)

Ⅶ 星と十字架のテーマ
Ⅷ 

Ⅹ 狩のテーマ、幸せのテーマ
ⅩⅠ神のテーマ、聖母マリアと幼子のテーマ
ⅩⅡ
ⅩⅢ
ⅩⅣ
ⅩⅤ神のテーマ、和音のテーマ
ⅩⅥ
ⅩⅦ
ⅩⅧ
ⅩⅨ愛のテーマ
ⅩⅩ和音のテーマ、神のテーマ

9+3-3-5-7+
Ⅰはピアニシモから始まる。静謐の極み。メロディーラインは無い。メシアン独特のよどみのない響きの沈殿。神のテーマとわかるのは後の話。演奏としては始まる前に息を整え、この楽章でさらに整えるといったところ。
ⅠからⅤの束では、Ⅱの突然のデカい音が激しい。それと、Ⅳの鳥の声が印象的。この束の重要楽章というのはⅤの人間イエスを神イエスが見つめる、というあたりだと思う。3がキーワード。オーケストラ曲でなじみのメシアンサウンドがそのまま出てくる。作曲年次から言ってこのようなピアノサウンドをオケで後年実現させたということだと思う。ピアノからオケというインストゥルメンタルな変化ではなくて、響きのことはずっと最初からイメージされていたのだろう。

10-4-3-3-8-
5楽章毎の束と言いながら、ⅤからⅥへは休みなくそのままの進行となる。このⅥからⅩではアタッカではいるこのⅥが重要な楽章か。フーガ進行、後半の逆行は初聴きでもわかるもので、オズボーンのクリアな演奏では比率のブレすら感じない見事なもので技が冴えまくる。
Ⅷで現れる鳥の声は印象的。最初の束のⅣで出た鳥の声よりも厚みが増している。
結局、この二つ目の束、演奏というのは激しい箇所はさながらアヴァンギャルドな打楽器奏法みたいなところが頻発。もちろん鳴りはメシアンサウンドそのもの。特にバスの響きには強靭なプレイが要求されているように見える。

7-3-3-5-12-
三束目のⅪからⅩⅤ、ここらへんから聴いているほうの脳内はそれまでの楽章が積分され、蓄積されてくるようなちょっとくらくらしたものとなってくる。聴きどころも多い。
聖母賛歌、幼子心臓鼓動、銅鑼、クリスマスの鐘、天使のまなざし、鳥の声、幼子イエスの接吻。メシアンが楽章譜の冒頭に書いたという解説と響きがマッチしてくる。メロディーラインは有って無いようなものだが音響によるイメージ構築それに、心理描写にはうなるしかない。清らかな高まりを内在させた音楽、メシアン作品の高みとオズボーンの圧倒的な演奏はシンクロしていて、これらによるシナジー効果は別世界の位相を感じさせてくれる。素晴らしい。
この束の重要楽章はクライマックスを感じさせるしびれる様なⅩⅤ幼子イエスの接吻と感じる。

3-6-7-10-14
最終束ⅩⅥからⅩⅩは40分かかる長いもの。
最初から最後まで超常現象を擬人化した響きのようでもあり、それを音楽という形態で示したメシアン、作品は長いようでいて一瞬の出来事の気もする。天才技のインスピレーションは月日を相応にかけて作られたものであっても、あとで聴いているほうとしては一瞬のインスピレーションによる一筆書きのように聴こえてくる。
最後の2楽章は長い。愛のテーマの息の長さはトゥーランガリラだろうね。フィナーレに至っては最初から色々あった例えばピアノが打楽器に化けたり木琴になったりトライアングルになったり、シンバルのような響きを醸しだしたり等々、それらあったものを集大成したようなめくるめく響き饗宴ワールド。オズボーンの左腕は最低音から始まり同時に右腕は最高音から降下する。じゃばらのような弾きはメシアンの深淵を覗き込む、生と死を同時に、出現と昇天を同時に、見事に描き切っているし、まだ先がありそうでもある。ふと、最初の楽章、父なる神のまなざし、神のテーマが頭の中を駆け巡る。結局のところ、2時間5分の世界なれど、宇宙の果てまで行って折り返して戻ってきたような気持ちになった。最終楽章は極めて感動的な音楽と演奏でした。

演奏を終えたオズボーンは放心状態。精神の集中と肉体の強靭さ、両方を必要とする作品。
オズボーン、神技だったな、とメシアンが言っている。

おわり


2344- ベトソナ31、シューベルト4即興曲、トロイメライ、ダニエル・シュー、2017.5.17

2017-05-17 22:48:03 | リサイタル

スーパー・リクライニング・コンサート

2017年5月17日(水) 7:30-8:30pm HAKUJU HALL

ベートーヴェン ピアノソナタ第31番変イ長調 7-3,4+6′

シューベルト 4つの即興曲D.899 10-5-5-7′

シューマン トロイメライ 4′

ピアノ、ダニエル・シュー


31番終楽章のエンディングの弧のところ、ああいう作品はどうすれば作れるものだろうと、本当にオンリー・ベートーヴェンの世界を感じないわけにはいかない。どうすればあのようなフィニッシュを作れるのだろう。

終楽章のフーガが進行している途中で、2回目の嘆きの歌が歌われる。そのあと短い押しのハーモニー、シューはここをフォルテまであげていく。フーガが戻り、アゴーギクはさらに激しさを増し、フォルテシモの頂点に達したところで鮮やかに弧を描きながらあっけにとられるうちに曲は閉じられる。素晴らしい閃きの作品。
シューさんお初で聴きます。割と骨太の音でかなり没頭して弾く。第1楽章から結構なアゴーギクでゆさぶりをかけてくる。ぶ厚く熱い演奏。伸縮がある濃い演奏で、ダイナミックでドラマチック、激しい演奏でした。

シューベルトはなかなかやにっこい。ズブズブのメロディーラインがあるわけではない。4つまとまると大規模。シューは輪郭を明瞭にする。バスも克明。スキッとした終わりではなくて果てるような感じ。4曲目がよかったですね。

このホールは初めて来ました。お金を沢山かけているような気配。スーパー・リクライニング・コンサートと銘打ったリサイタルで、椅子は偶数席は空きにしているようで、思いっきりリクライニング出来る。下から上を見る傾斜。椅子を倒してもピアノの鍵盤が見える。といいつつ、やっぱりしっかり観て聴きたいので、椅子を直角に戻して聴きました。
休憩無しの1時間リサイタル。年齢を書いたものが見つかりませんでしたけれどもたぶん19才。エネルギーが余っていると思うので次回は是非フル・リサイタルをお願いします。それに客が寝そべっているところで弾きたいものなのかどうかということもありますしね。
おわり

ダニエル・シュー、
フィラデルフィア・インクワイアー
2016.6.22 記事
Mann Center's classical opener is a 40th fete 






2336- ベトソナ全曲演奏 第4夜、5,6,13,15,18,29、ヴァリアス・アーティスト、2017.5.5

2017-05-05 17:40:47 | リサイタル

2017年5月5日(金) 5:00-7:30pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第4夜

第5番ハ短調 塚田尚吾   5-8-4′
第6番ヘ長調 近藤嘉宏   6-5-3′
第13番変ホ長調 田島睦子  5+2+3+6′

int

第15番ニ長調 田園 藤野まり  11-7+3+5′
第18番変ホ長調 平野加奈    5-4-3-4′
第29番変ロ長調 ハンマークラヴィーア バリー・ダグラス 11-3-19-11′


ガル祭2017

ベトソナ全曲第4夜千秋楽。
5月2日からスタートしたベトソナ企画、本日千秋楽。この日だけ2時間半のリサイタル、収まらないかもしれない。

29番はキャンセルしたソン・ヨルムに代わりバリー・ダグラス。ベトコン1の代打は早めに横山さんと告知がありましたが、こちらのほうは誰が代打なのかしばらくノーティスが無くてどうなるのかと思っていたのですが、なんとバリー・ダグラスがすると一二日前にきまったようです。
この日の公演は6曲で気がつけば大詰め最後のハンマークラヴィーアでバリーが全部さらっていってしまった感があるが、それはそれとして。

第5番
初日に22番を弾いた塚田さんが少しぎくしゃくとさせながらピアノが小さく見えるその体躯で開始。
4番までコテコテシンフォニックな4楽章ソナタでしたが、5番になって何か抜けるような余裕の歌を感じる作品。流れるような作品、演奏のほうはやや重いけれども、しっかりとひとつひとつくさびを打っていくようなスタイルも良いものだ。

第6番
作品10の3個のうち2つ目の曲。近藤さんのプレイは1つ目の塚田さんとは随分と違って軽快。切れ味が鋭い。ひとつずつの音符の切れ込みが鋭い。緩みのないピアノですね。
5番6番はそれまでの硬さから一歩先に出たような柔らかな歌い口で魅力的な作品とあらためてわかりました。いい演奏でした。

第13番
前半の最後は田島さん。月光の先取り感。独特の雰囲気あるリズムで進行。手慣れた語り口で、リズムが強調されながらそれ自体一つの歌のような感じです。膨らみのある演奏で楽しめました。

ここで前半終了。
千秋楽の時間割は2時間半。締めのフィナーレイベントもあるのだろう。でも6曲とはいえ大規模な曲が多いのでたぶんギリギリになる。と思っていたら潮さんの告げた休憩は10分ほど。まぁ、演奏しまくりはこちらとしては願ってもない事だ(笑)。

第15番 田園
この曲はコクがありまくりでじっくりと聴きたい。
藤野さんはベトソナ全ではこの15番のみ。息の長い主題から始まる。歌い出しは淡々としたもので響きを楽しむ感じ。徐々に音楽に没頭していき、没頭するにつれ演奏のほうは歯切れがよくなる。輝きが増す。腕がさえる。
アンダンテも規模が大きい。バスの規則正しい刻みが心地よい。それに乗るように鮮やかな歌。田園というよりも思索の森の小道を正しく歩むベートーヴェンといった感じか。切れ味の良い演奏は本当に心地よい。スケルツォも同じモードを引き継ぐ。
終楽章は大きさが戻ってきて、曲自体シンフォニックなものではないけれども、第4楽章終楽章としてのバランスの良さは見事なものですね。落ち着いた気分で演奏を聴き終えることが出来ました。お見事な演奏でした。

第18番
この曲は中間のスケルツォ楽章が一度聴いたら忘れられないメロディー。平野さんはノリノリでスパスパと小気味よい。楽章毎に結構雰囲気が変わる作品で、小ピース集のような具合もある中、演奏スタイルとして決まったものがあって、16番17番とは違った明瞭な輪郭と芯を感じさせる佳演でした。

第29番 ハンマークラヴィーア
ベトソナ全企画千秋楽最後の演奏はバリー・ダグラス。
さっと始まる。ささっと進む。気負いゼロ。余計なジャブジャブ感は皆無。作品の音符だけがそのまま出てくる。いきなりの2分休符。ベトソナ最後の4楽章構成はやっぱりシンフォニックなもので編曲すればすぐにシンフォニーになりそうな気配。
第1主題からベートーヴェンの意識は第3楽章の幾何学模様の前出し的な装い。幾何学メロディー。
バリーの腕の動きは速い。ひとつの音を弾き終えると、次の音となる鍵盤への両腕の移動がものすごく速い。あっという間に次の鍵盤上に到達している。ささっささっと右左に動く腕捌き。あの動きがあればこそ、いともたやすく、大きな表現力を実現できるのだろうね。目まぐるしく変わる主題。ソナタの構造がバリーの腕から透けて見えてくる。主題の切り替えの見事さ。水際立ったきれいな音。構造が巨大伽藍の様相を呈しそのパースペクティヴ感に悶絶。素晴らしい。素晴らしすぎる。
幾何学模様が最後、積分されて積み重なる。興奮の極みですな。

第2楽章のスケルツォはエキスのみ。理想的な体脂肪率。作曲家はこのスケルツォがベトソナフィニッシュとなるのを認識していたのかもしれない。偉大なものは単純なり。
光るバリーの腕捌きは音楽を立体的にする。ジャングルジムを通して先が見えてくる。この構造感。

第3楽章、アンダンテ・ソステヌート。
昨年2016年、ユジャ・ワンの29番を二回聴きました(9/49/7)。あれも別世界でしたけれども、今日のバリーはもう一つの別世界かな。

幾何学模様が機能的に運動している。音のない空白さえ音楽になっているユジャのこの楽章でしたけれども、時間軸が大幅に伸びたバリーの演奏では音が一つのパッセージが済んでもそれが底辺を据えたままで斜め前に動いてきて、また別のフレーズが斜めに動いてきて、それらが新たな構造物のようになり動き出す。抽象的ですね。ま、そうゆうことです。
ベートーヴェン別世界の模索から到達へ。幾何学模様は何層にもなっている。
バリーの音は何層もある。素早く動く両腕はここでも変わらない。ピンポイントでセットアップされた位置から指が垂直に落ちる。響きの強さは何段階でも作れそうだ。
沈殿した灰汁は取り払われ、清らかな音は静謐さを増し、ユニバースの広がりを魅せてくる。身体が宙に浮いていく。宇宙がゆっくりと一回転しているような筆舌に尽くし難い演奏だ。

終楽章は前楽章の夢の世界をひきずったような境目の感じられない序奏のあと、最初の2小節ほどでこれってフーガだよねって極めてよくわかる。なんだか、安堵。
バリーの技には音響美が加わっていく。幾層もあった響きが重なり合って厚みを増し勢いを増していく。凄い、ジャングルジム、分解されて宙に浮いて遠くに果てる。

夢のような世界、凄い演奏でした。感動した!!



夢のような世界、現実に戻してくれたのは、係のオヤジ。潮さんとちょっとしたマイク挨拶をしたバリーに向かって袖口から怒鳴り散らしている。予定時間越えのリサイタルとなったためフィナーレのエンディングに間に合わなくなるからあんまりしゃべらず早くしゃべ終われという感じだと思うが、潮さんが恐がっている。
この見苦しい係オヤジを次までにファイアーしてくれることを望む。日本では国会中継の政治家からテレビドラマの刑事ものまで怒鳴り散らすDNAがあって日常茶飯事とはいえ、全部ぶち壊しそうになったこのオヤジ、見えたのは前席の方たちだけだろうから不幸中の幸いか。オヤジも目を開き、世界を見てけれよ。

それに、このお祭りのタイムチャート。これ自体は問題ないかも知れないですけれども、例えば今回出演した3オーケストラ、高雄市響を除く2オケのモタモタとした登場は、在京にも同じようなオケがあるが、それ以上にひどいもの。だからフィナーレも少しぐらい遅れてもいいんじゃないのと言いたくなる。舞台にナビゲーターがいるからそこを怒鳴るというのは大いなる間違いで、それがいないオケ演奏ならいいのかと。まずはオペレーションの極意を学べ。
運営については色々とあったようですが、バックステージストーリーは好きではありませんのでやめます。見えた話しかしません。

この後味の悪さはありましたけれども、そういった事をはるかに越えたベトソナ全企画、大いに楽しめました。本当にありがとうございました。
おわり


左桟敷席から

 


2332- ベトソナ全曲演奏 第3夜、1,4,19,20,23,30,31,32、ヴァリアス・アーティスト、2017.5.4

2017-05-04 21:54:46 | リサイタル

2017年5月4日(木) 6:30-10:00pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第3夜

第1番ヘ短調 菊池洋子      5-4-3-5′
第4番変ホ長調 木下由香    6-9-3-7′
第19番ト短調 三浦友理枝    4-4′
第20番ト長調 三浦友理枝    4-4′
第23番ヘ短調 熱情 アンナ・フェドロヴァ  11-7+6′

int

第30番ホ長調 アンナ・フェドロヴァ   5-3-12′
第31番変イ長調 鶴見彩       7-2+11′
第32番ハ短調 竹田理琴乃     10+18′


ガル祭2017
ベトソナ三日目、今日は8曲、全員女性ソリストです。

第1番
作品2のうち昨晩の3番と今日の1番を菊池さんが演奏。
この1番もそのまますぐにシンフォニーに編曲できそう。シンフォニックな作品。
菊池さんの方針は3番と同じような色あい。流されることのない演奏でベートーヴェンの堅実さが良く出ている演奏。菊池さんというとモーツァルトを浮かべてしまうが、これら作品はハイドン的な色彩を感じさせるもの。彼女が現在どれだけハイドンやベートーヴェンあたりに取り組んでいるのかわかりませんが、新境地的なところもあるのだろうか。
手ごたえ十分な演奏、古典から炎が少しずつにじみ出てくる。

第4番
初期の作品は4楽章スタイルで規模の大きな作品群。
木下さんの演奏は耽溺するようなところが無くて約25分ほどでエンド。第2楽章は長いものですけれども、祈りのような、沈んでいく音楽。ここは少し長く感じた。
次に長い終楽章が表情豊かでいい流れでしたね。この楽章のメロディアスな居心地良さ、前楽章も同じように流れるメロディーで、これら両楽章の佇まい鮮やかでした。

第19番
コンチェルト3番で素晴らしい演奏をした三浦さんの出番。
短い曲です。フォーエヴァーに弾いていたいような、聴く方もそんな感じ。心地よい音楽が絶え間なく流れていく。素晴らしく躍動する旋律。
HJリムさんのベトソナCD箱には、beethoven complete piano sonata と書いておきながら19番20番は未収録。ご自身の判断によるものでしょうが、なんとももったいない。三浦さんの演奏を聴くとそういう思いがつのります。素敵な演奏でした。

第20番
これも三浦さんの演奏で。19番と同じように心地よい演奏に癒される。

第23番 熱情
フェドロヴァさんの演奏で。1,2楽章は含むものがあるというか、やや思わせぶりなところがある。ちょっと力んでいるのかもしれない。激しい音楽がゴツゴツと鳴る。
終楽章は余計なことを考えながらの演奏はなかなか難しくて、かえってそれが功を奏したようなところもあり、蛇腹のようにつながり流れる熱情、いい演奏でした。

ここまで5曲。前2晩と同じく短い休憩。

後半はベートーヴェンのピアノ・ソナタ大詰めの3曲。大詰めと言えば29番も入るような気もするし、そうすると28番も足を突っ込んでいそうだし、
色々と楽しみが絶えない。

第30番
前半の最後で熱情を弾いたフェドロヴァさんが登場。
ちょっと重いかな。なんだか最初からダメ押し的なところが見受けられる。第1,2楽章と終楽章変奏曲との切り替えが難しいのか。切り替えはいるけれど違う曲2曲という配列ではないので、そこはもう少し、あと一押し要りましたね。全楽章にわたり一つ筋が通るようなものが欲しいところです。それから、機能的な音符の流れから情緒がにじみ出てくるようなところも欲しい。抽象的で申し訳ありませんが。

第31番
今日の30番を聴いた後で鶴見さんの31番を聴くと、30と31の距離はかなりあるように思えてくる。
なにか途中から始まったような第1楽章、つまり終楽章の気配が濃厚なアトモスフィアを大いに感じさせてくれる出だし。それは自分が持っているイメージ通りのもの。テンポ設定と呼吸が最高。形を崩すことなく高低の動き、くまなくバランスがとれた演奏でした。
終楽章の序奏はフーガが始まらないと序奏だったのかとわからないほど濃厚。機能美に溢れた序奏、序奏後半の嘆きの歌はウェットで短いながら実にしびれる。
フーガの醍醐味を楽しみつつ、嘆きの歌も再度感じつつ、短いコラール風味のパッセージ出現、鶴見さんはゆっくりとメゾピアノのレベルに抑えたもの、息の詰まる緊張感、そして鮮やかな開放へ。お見事!!
ベートーヴェンの内面を照らして魅せてくれました。この終楽章、秀逸な演奏でした。感動した!!

第32番
昨晩25番を弾いた竹田さんが32番を。
第1楽章ヘビーなハ短調、あわてず急がず一つずつの音をクリアに決めていく。正確さは機能美を感じさせる。
対照的な2楽章、20分にとどこうかというスローでスタティックで圧倒的なベートーヴェンでした。持続するインスピレーション。滴るベートーヴェンモノローグが続く。終わりそうで終わらない。ポツポツと音と音の間の空白の静寂が悉く雄弁にきまり尽くす。ものすごい説得力。完全にベートーヴェンの響きを自己の中に感じての演奏と見うけました。鬼気迫る演奏。草葉のベートーヴェンも蓋が開くぐらい喜んでいるに違いない。ベートーヴェンヘヴン。
ベートーヴェンはプレイヤーを試しているのであろうか。聴こえていない作曲家は自作でもはや自演の一体化は出来ない。演奏家がどれだけ作曲家に近づくことが出来るか。竹田さん自己をさらけ出したかのような心情告白モノローグ、作曲家とこの日シンクロしたのではなかったのか。もちろん聴いている聴衆も。
このインパクトはしばらく消えるものではない。とてつもないウルトラ演奏、ありがとうございました。
興奮さめやらぬ。
おわり

 


2328- ベトソナ全曲演奏 第2夜、3,7,8,10,11,14,17,24,25、ヴァリアス・アーティスト、2017.5.3

2017-05-03 23:40:23 | リサイタル

2017年5月3日(水) 6:30-9:45pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第2夜

第3番ハ長調 菊池洋子          12-6-3-5′
第7番ニ長調 木米真理恵         5-8-2+4′
第8番ハ短調 悲愴 米谷昌美      8-5-5′
第10番ト長調 近藤嘉宏          7-6-4′

int

第11番変ロ長調 渡邉康雄       8-7-3-6′
第14番嬰ハ短調 月光 横山幸雄  6-2-5
第17番ニ短調 テンペスト 石本えり子  6-8-5′
第24番嬰へ長調 テレーゼ 山田ゆかり  4-3′
第25番ト長調 竹田理琴乃  5-3-2

ガル祭2017
昨晩の初日は9曲、今日も9曲、男性陣が一人増えて3名、女性6名という布陣。
作品2の3曲のうち、この日は3番からスタート。

第3番
菊池さんはメトロポリタン・エリアでのコンサートによく出ていて、モーツァルトのコンチェルトを何度か聴きました。
今日は30分に迫ろうかという大曲。小菅さんやアリスさんのCDを取り出す機会多いのですが、こうやって生で聴く3番は格別。
シンフォニックで大がかり、第2楽章アダージョの頭は、楕1楽章アレグロのメロディーラインそのままではないのかと思わせてくれる親近性の強いもので、なにやらそういった気配が随所に聴かれる。強い構成力を感じる。この両楽章で言いたいことはあらかた尽くされている感じ。まぁ、だまっていてもフォルムは自然に出来上がるのでその部分はベートーヴェンに任せておいて、といった演奏もありですね。
菊池さんのタッチはみずみずしいものですが決して角張らない。鋭角になることのない響きで、まるで真綿の手袋をしていてそれ越しに鍵盤を押さえているような鳴り。以前聴いたモーツァルトよりも柔らかでやや幅があるような印象。
曲は尻つぼみというわけでもないが収束していく、響きはさらにまろやかになる具合でプレイヤーの存在が徐々に大きくなる、充実の演奏でした。

第7番
昨晩27番を弾いた木米さんが弾く。この曲は20分ほどあり規模が大きく、ものものしい旋律が1,2楽章と続く。ちょっと軽くした3,4楽章が好み。しっかりとしたリズムの中、進むにつれウェットな詩情がさわやかに流れてくる。短い後半楽章のさりげないプレイが魅惑的な演奏でした。素敵でした。

第8番 悲愴。
今日午前、横山さんのリサイタルで聴いたばかり。今度は米谷さんの演奏で。一日に2回も聴ける。ハッピーですな。
横山さんとは別路線。間の取り方が独特、体の動きを見ていないと次の展開への入りがわからなくなるようなところもありますね。緊張感を作り出すための間というわけでもなくて、なんというか、デリカシーな流れと一体化したような具合です。
ひとつのカクテル、作り手によって大いに味わいが異なる。その違いも楽しめる。贅沢の極み。

第10番
近藤さんの出番。さっそうと登場。周りの聴衆からほぉとため息が漏れる。偉大なものは単純である(F)、軽々しさを一瞬たりとも見せない。集中したプレイでした。第1,2楽章のつながりを強く感じさせてくれるのはそのコンセントレーションのたまものですよ。
正確でウィットに富んだ表現、音がきれいに弾む。スバラシイ。

ここまで4曲、あっというまの出来事でした。昨晩と同じく短い休憩。
後半は11番から。

第11番
御大登場。この曲も規模がデカい。このままオケ用に編曲すればシンフォニーになるのではないのか。指揮者の渡邉暁雄のシベリウスなどは殊の外豪快な筆の運びで、見た目と違ったところがあったが、御大は力が抜けていて力まず、きれいな音で、大きな体躯、ピアノを抱え込んでしまいそうな勢いのようにみえるけれども、出てくる音楽はクリアな鳴りのベートーヴェン。進むにつれてフォルムの塊から火花がビビッと出てくる。味わいのある演奏でした。

第14番 月光
横山さんの演奏は昨晩ワルトシュタイン、今日の午前は悲愴、熱情を聴きました。ここで、月光。
楽章の対比感、コントラストがどこまでもよく効いている。楽章毎のメリハリのよさにとどまらず楽章対楽章が呼応するような具合で全体俯瞰が素晴らしくよい。終楽章の過激さはエキセントリックな様相を呈する。そんな中、冷静に見つめるもう一つの目があるような気配。

第17番 テンペスト
昨晩16番を弾いた石本さんが今度はテンペストを。
魅惑的な曲ですが、ニ短調はだいたいやにっこい。ブル9、第九、シュマ4だいたいやにっこい。聴き手の積極的な受け入れる力を求められますね。まぁ、好きですが。
石本さんの演奏は第1,2楽章のつながりを素晴らしく良く感じさせてくれるもの。ほとんど一体化している。終楽章はなにやら別の魅惑的な曲を聴いているような趣きで、2曲聴いた様な聴後感。

第24番
短い序奏が魅惑的な曲。短い序奏とはいえ曲自体短いものなのでバランスとしてはちょうどいい。山田さんにはちょっと物足りないかな、弾き足りない感じに見えました。
主題の曲想変化の妙というよりも、断片的なアクセントとその連鎖のように聴こえてくる。それはそれでお見事なもので印象的でした。

第25番
竹田さんが登場。今度は男の聴衆からほぉとため息がもれる。
シンプルな曲で両端楽章は楽しそうに弾いている。音楽もその通りにリズミックなもの。
中間の短調楽章が物憂げで印象的。ここらへんにも彼女の真価があるのではないか。


ということで、前半4曲、後半5曲。初日に続き今日もみなさんの素晴らしいベートーヴェン、堪能しました。
おわり

 


2324- 悲愴、熱情、横山ピアノリサイタル、2017.5.3

2017-05-03 13:15:31 | リサイタル

2017年5月3日(水) 11:00-11:50am 金沢市アートホール

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 悲愴  7-5-5′

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 熱情  10-6+7′

ピアノ、横山幸雄


ガル祭2017、ベトソナ全集企画とは別の公演。
前の晩のベトソナ企画第一夜でワルトシュタインを弾いた横山さんの単独リサイタル。
熱情のコントラストの妙が際立っている。両端楽章の深刻さ、過激さ。鮮やかです。それにサンドウィッチされたアンダンテ、シンプルな進行は冷静な横山さんのもう一つの面かもしれない。多様なベートーヴェンの心の動きが見事に表現される。スバラシイ。

1曲目に置かれた悲愴は、リズミックというよりもさざ波小波のような音の運び。独特な音響が醸し出される。アダージョ・カンタービレでも流れるようなさざ波感が美しい。

ワルトシュタイン、悲愴、熱情、聴き応えありました。このあと月光、コンチェルトの1番などがひかえていますね。楽しみです。
おわり


2323- ベトソナ全曲演奏 第1夜、2,9,12,16,21,22,26,27,28、ヴァリアス・アーティスト、2017.5.2

2017-05-02 23:10:55 | リサイタル

2017年5月2日(火) 6:30-9:45pm 邦楽ホール、石川県立音楽堂

オール・ベートーヴェン・プログラム
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏 第1夜

第2番イ長調 平野加奈 5-6-2-7′
第9番ホ長調 松井晃子 5-3-4′
第12番変イ長調 葬送 山田ゆかり 8-3-6-3′
第16番ト長調 石田えり子 5-11-6′

int

第21番ハ長調 ワルトシュタイン 横山幸雄 8-4+9′
第22番ヘ長調  塚田尚吾 6-4′
第26番変ホ長調 告別 鶴見彩 7-4+6′
第27番ホ短調  木米真理恵 5-8′
第28番イ長調 田島睦子 4-5-9′


石川・かなざわ
風と緑の楽都音楽祭2017
ベートーヴェンが金沢にやってきた


ベートーヴェンの企画もの、4日間でベトソナ全32曲、同期間3日間でベトピアノ協全5曲、同期間ベト交全9曲、等々を行うもの。
ピアノソナタは32曲を4日間19名のソリストでプレイ。前代未聞、超破格の企画。29番は予定していたソン・ヨルムがキャンセル、バリー・ダグラスが急遽出演。

ベトソナ1日目、途中休憩は15分ほど。約3時間で9曲。この日は男性ピアニスト2名、女性ピアニスト7名、全て違うプレイヤー。壮観ですね。

第2番
4日間の最初の曲は作品2の3曲のうち2番からスタート。1番の駆け上がるような音形の逆を行くような下降する音形で始まる。平野さんのピアノはその下降形さえ上昇していくような息づかい。きっちりとした音価レングス、正確でクリア、霧が晴れていくような気配。
作品2の3曲は4楽章構成で規模が大きく、聴く方としてはシンフォニックな構えがインプットされているので、まぁどこまでも聴いていける楽しさはある。手ごたえ十分の演奏でした。

第9番
2個の作品14のうち一つめ。リズミックでやや愁いのある運びの曲。松井さんのピアノは性急にならず、柔らかいタッチが印象的。リズムが強調されるあたりでやや冷たい感じも。悲愴の整理体操のような雰囲気が醸し出される曲ということかな。

第12番 葬送
黒のロングドレスで葬送を弾いた山田さん、多彩な表現力、緊張感を作り出す独特な間、ゴツゴツと変化していくパッセージを、ドラマチックにパウゼしながら、数珠のようにつないでいく。ベートーヴェンの作り出したストリームを自分のものとして噛み砕きつつ再構築していく様は再創造を越えている。20分越えの緊張感。形式感よりテンペラメント、第3楽章のみならず全楽章全てに才気爆発、ベートーヴェンのエモーショナルな心の動きにインスパイアされたほれぼれする演奏、お見事。感動しました。

第16番
石田さんのピアノは殊の外ダイナミックな演奏で、時折バスがピチカート風に聴こえてくる。ナイスサウンド。進むにつれてデリカシーが増してくる。気持ちの多様なあたりが垣間見える。

ここまであっという間の4曲。4人の女性プレイヤーによる多彩な表現。クラクラしてくる。
ここで休憩。
30分ほど休めるかなと思ったが、あまい。ナビゲーターの潮さんは簡潔明瞭なご案内でいいもの。それでも休憩は15分ほどしかとらせてくれない。演奏あるのみですな。3泊4日来た甲斐があるというものよ。ひたすら演奏、いいですね。

第21番 ワルトシュタイン
横山さんの弾くワルトシュタインは思いもかけず、なんだか、ぬけた明るさのようなものがあった。
余裕を感じさせる弾き、各主題フレーズ頭の歌いくちには大いなる余裕を感じさせてくれる。いやみにならず自然、というよりもこの余裕技、ピアノにもともとある一つの技巧エレメントなんだよといった手慣れたもの。至芸ですな。
アダージョ・モルトから終楽章の水面(みなも)を走る水切りの輪のような魅惑的なベートーヴェンリング水模様。鍵盤を浅く手前に軽く掻くようにして、かつ滑らかな響きはビューティフルの極み。第1楽章の激しさとの対比もバランスしていて、何から何までうなる演奏。横山さんはこのような対比感覚もさえていますね。お見事すぎる演奏で大満足。

第22番
塚田さんは上背のあるかたで鍵盤に突き刺さりそうな骨っぽい感じ、演奏もそうでしたね。19,20とこの22番は規模が小さくてシンプルなものですけれども、相応な味わいがありました。ジャストフィットな演奏でした。良かったと思います。

第26番
ちょっとやにっこい序奏のあと提示部はワルトシュタインの終楽章のモードを大いに感じさせてくれるといつも思う。鶴見さんの進行は非常にバランスのいいもので均整がとれていて形式の美しさを感じさせてくれる。対楽章の平衡感覚もよかったです。

第27番
この第2楽章は一度聴いたら忘れられないメロディー。メロディーメーカーベートーヴェン、少しあまくて、木米さんの演奏は、淡々としていそうに見えて徐々にしなりが効いてくる。丘を二人でかけている感じ。その起伏は柔らかく流れていく。

第28番
田島さんのピアノはすぐに没頭ベクトル。呼吸が自然で音楽が息づいている。
楽章が進むにつれて機能美的なサウンドとなっていくもので、深淵な世界にベートーヴェンが踏み込んでいる感じ濃厚。
といったあたりの両面を見事なハイブリッド演奏で魅せてくれました。


ということで、後半あっという間の5曲、初日全9曲。夢のようなひと時。思う存分楽しませてもらいました。ありがとうございました。
明日、明後日、明々後日、続きます。
おわり








2322- ベトソナ1,8,22,26、松本明 ピアノ・リサイタル、2017.5.1

2017-05-01 23:31:03 | リサイタル

2017年5月1日(月) 7:00pm 小ホール、東京文化会館

オール・ベートーヴェン・プログラム

ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調  6-5-3-8′
ピアノ・ソナタ第8番ハ短調 悲愴  9-5-5′
Int
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調  7-5′
ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調 告別  8-4-6′

(encore)
シューベルト 即興曲 Op.142-3  8′
シューベルト 即興曲 Op.142-4  6′

ピアノ、松本明

駆け上がるような勢いのベートーヴェンの1番の入り、これまで幾度となく演奏してきているのであろう、そのステップはやや遅めの開始。積み重ねてきた年月を感じる。熟成したスタイルなのかも知れない。
エネルギーの照射、放射といった聴衆との火花、熱といったことよりもフォルム重視、作品の構成感への親近性をより強く感じる。ベートーヴェンのドラマチックな表現、位相が曲がるような激しい演奏ではない。飽くまでもあるべき形式が次々に陳列されているような趣き。したがって第1番全部を聴き終えた聴後感というのはフラットで、なにやら4楽章全て等速だったような錯覚に陥る。それから、ときに速いパッセージで左バスを中心にやや鍵盤に音が押し潰されるように聴こえてくる。腕を垂直に大きく跳ね上げる時があるのはそういったことを意識的に排除しているからなのかもしれない。
この1番では第2楽章のストイックでいながら抜けたような妙に明るいプレイが印象的。

プログラム冊子にある解説は演奏者自身が書いたものと思われます。その中で悲愴の第2楽章について、当初9番の緩徐楽章として書かれたが、9番が緩徐楽章無しで完成してしまい、行き場を失って8番に転用されたのではないか、と推測しているようです。それは一つの私見の開示であってこの冊子全文を貫いているのはほぼ、形式や構成感などについて、演奏もそういったことの主張が色濃い。
この悲愴においても、作品そのものが持つ構成感を構造から説明している。序奏と再現する序奏のスリルはベートーヴェンのソナタ形式、圧巻の表現で、プレイは有名すぎる次の楽章よりも第1楽章のフォルムの説得力のほうが圧倒的ですね。

第22番の第1楽章はこのままでは終わらないという事を最後の最後で魅せつけてくれるベートーヴェンの技。この楽章大詰めで呼吸を大きくとったいかにもベートーヴェン的で精神的な!高まり、松本さんのプレイはそれを逆手に取ったような消沈するベクトルのほうをピアニシモでゆっくりと強調して魅せてくれた。独特の解釈ですね。
第2楽章の機械仕掛けのような音楽はフォルム重視で、流されない演奏、お見事。

告別の序奏のあとの提示部第1主題には、毎度、ワルトシュタイン終楽章からのつながりを感じてしまうのですが、今日はあまり余計なことを考えずに聴くことが出来ましたね。
プログラム冊子にあるこの曲の標題音楽的進行をオーヴァーラップさせながら聴くことにより別の趣向で楽しめました。

全4曲にわたり細かい音符の進行が、さざ波の様にならず、物理的一音の集合体である。といったことまでわかる深彫りされた演奏だったように思います。
お初で聴いた演奏家でしたけれども色々とイメージできました。

それとアンコールではシューベルト2曲、大物アンコール、絶品でこれも楽しく聴くことが出来ました。
ありがとうございました。
おわり

 


2311- ブラームスの室内楽、川本、竹澤、マルディロシアン、2017.4.14

2017-04-14 22:59:28 | リサイタル

2017年4月14日(金) 7:00pm 小ホール、東京文化会館

オール・ブラームス・プログラム

ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 (ヴィオラ版) 9′7′5′
  ヴィオラ、川本嘉子
  ピアノ、ヴァハン・マルディロシアン

ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調  8′5′3+5′
  ヴァイオリン、竹澤恭子
  ピアノ、ヴァハン・マルディロシアン

Int

主題と変奏ニ短調  12′
  ピアノ、ヴァハン・マルディロシアン

ホルン三重奏変ホ長調 (ヴィオラ版) 8′7′7′6′
  ヴィオラ、川本嘉子
  ヴァイオリン、竹澤恭子
  ピアノ、ヴァハン・マルディロシアン

(encore)
グノー アベ・マリア  5′
  ヴィオラ、川本嘉子
  ヴァイオリン、竹澤恭子
  ピアノ、ヴァハン・マルディロシアン


こうやってブラームスを並べて聴くとあらためてベートーヴェンはメロディーメーカーだったと再認識するわけだが、ピアノと弦の2本だけしかない旋律でさえハーモニーがよく流れるブラームス。ベートーヴェンのようにささくれだったところがない。よく秋口に聴くといった話が多くあるのも、心に秋模様が漂う時、ブラームスモードの音楽はよりふさわしいのかもしれない。その実感。

2番はヴァイオリンパートをヴィオラで弾く。演奏者自身による編曲とあるから川本さんが自ら編曲したのだろう。
川本さんの音は美しい。やや骨太でクリア、強靭なヴィオラサウンド。楽曲を明確に響かせようという意思が感じられる。潤いのウェット感の味わいはこの意思のあとからついてくるもののように聴こえる。3番の竹澤さんの鋭角に研ぎ澄まされて上に突き刺さるようなヴァイオリンとはまた違った魅力がありますね。

その3番、竹澤ヴァイオリンは呼吸が素晴らしい。歌うといった言葉で形容する弾きではないと思う。自ら感動の中に入っていない、プレイ中のプレイヤーあたりまえの振る舞いだと思いますし、自然な理性、知性の弾きを感じさせてくれます。色合いは川本ヴィオラとは異なりますけれども、お二方ともにそのようなところを感じさせてくれる。双方、一段高みにあるソロですね。いい演奏、スバラシイ。ブラームス満喫。

休憩を挟んで、4曲全部弾くピアノのお方。日本語の妙を感ぜずにはいられないお名前のかた。あまり控え目にコントロールすることもなく伴奏をつけていました。主題と変奏ではソロ弾き。女性二人にはかなわない。

最後のホルン三重奏、ここはホルンでやってほしいところだが、そのパートはヴィオラで。作曲者自身がヴィオラ代替を認めているということなので。
ヴィオラ版を聴くと、オタマがいかにも点のように聴こえてくるところが多くある。短いフレーズ、やっぱり、ホルンはホルンでお願い。
女性二人の演奏は知性理性に熱がこもり始め、対峙しているわけでもないのに火が飛び散る圧巻の熱演。ブラームスの炎、見ました。
思う存分、ブラームスを楽しみました。
ありがとうございました。
おわり