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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

沖縄歴史研究会編  『新版 沖縄県の歴史散歩』

2011年05月16日 | 日本史
 「新全国歴史散歩シリーズ」の11。
 できがいい本。これを持って沖縄へ行けば良かった。
 最後の人頭税についてのコラムに衝撃を受ける。沖永良部島に関して言えば、人頭税は定額制であった、つまり人口が増えれば一人当たりの負担は軽くなったはずだから、あながち重税ではなかったはずだという。それが後世に伝えられるまでに悪税として名をはせたのは、税そのもの以外の理由を考えるべきではないかと。人頭税=悪税、というより“悪いもの”という価値判断を先行させていた自分に喝!
 
(山川出版社 1994年7月1版1刷 1998年7月1版3刷)

宮崎市定 『宮崎市定全集』 全24巻・別巻1冊

2011年05月16日 | 東洋史
 『アジア史論考』(上中下)と、『アジア史研究』(全5巻)と、『アジア史概説』と、『中国史』(上下)と、『隋の煬帝』と、『世界の歴史7.大唐帝国』と、『五代宋初の通貨問題』と、『科挙』と、『九品官人法の研究』と、『論語の新研究』と、『中国文明選11 政治論集』と、『雍正帝』と、最後に『自跋集』と、あとせいぜい砺波護先生が肝いりで出された随筆集数冊とを読めば、この全集を読む必要はないのではないか。京大御家流の弟子筋に当たらぬ外部の者が「馬廠長日記」など読んで何の意味があるのかという感想。

(岩波書店 1991-94年)

YouTube 「テキサス親父が築地市場の旅行者締め出しを語る(字幕) 」

2011年05月15日 | その他
http://www.youtube.com/watch?v=2oN0orbmGGU&feature=related

 前項の訂正。
 この人、明らかにイタリア人、Italian-American だよ。喋りといい、身振りといい。しかも間投詞にイタリア語が交じっている。
 実は、昔オーストラリアでこのオッチャン(敬意を籠めてこう呼ぶ)に外見そっくりのイタリア人に会ったことがあって、最初から多分そうだろうとは思っていたが。

「動画サイトで話題の米国人、太地の捕鯨に理解」 から

2011年05月15日 | 抜き書き
▲「YOMIURI ONLINE(読売新聞)」2011年5月15日07時58分。(部分)
 〈http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110515-OYT1T00065.htm?from=main5

 インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」で反捕鯨団体シーシェパード(SS)を批判、〈テキサス親父(おやじ)〉として知られる米国人トニー・マラーノさん(62)が、和歌山県太地町を訪れ、三軒一高町長と面談し、捕鯨に理解を示した。
 役場を訪れたマラーノさんは、三軒町長から捕鯨とともに歩んできた町の歴史を聞き、「町民が生活を守るためにクジラを捕ることに問題はない」と述べた。昼食に初めてクジラ料理を食べたといい、「とてもおいしかった。牛を食べるのも、クジラを食べるのも全く同じ」と話した。

 YouTube の動画ではあまりそう見えないけれど、この写真、西村晃さんにそっくりだな。
 そしてこのテキサスの御隠居は、ご自分の番組(?)で、シー・シェパード(Sea Shepherd)を“腰抜けのガキ”だの“アホ”だの“白痴”だの言いたい放題言ったあげくに、「悔しかったらテキサスに来てビーフステーキ食うなと抗議してみな」と哄笑、わざわざ“She Shepherd"と、テロップまで出している。
 この人は、シー・シェパードは、人種差別意識から日本人をねらい打ちしていると断定している(→こちら)。私はこれまで、物証も彼らの言質もないのでこれまであえてそのことには触れなかったが、おなじ白人からするとこれは自明のことなのだろうか。
(ちなみに姓からしてマラーノ氏はイタリア系のようである。ただしアメリカ人の家庭は養子が案外多いから姓だけではその人のエスニック・バックグラウンドは必ずしも分からない。)

「プーチン露首相をあがめる新興宗教登場」 から

2011年05月14日 | 抜き書き
▲「msn 産経ニュース」2011.5.14 21:41、SANKEI EXPRESS。(全)
 〈http://sankei.jp.msn.com/world/news/110514/erp11051421450004-n1.htm

 フランス通信(AFP)によると、ロシアのウラジーミル・プーチン首相(58)をキリスト教初期の理論家パウロの生まれ変わりとしてあがめる新興宗教の一派がロシアに登場した。
 ロシアの週刊誌によると、この宗派は西部のニジニーノブゴロドに拠点を置き、地元鉄道の元職員で前科のある「聖母フォティーナ」と名乗る女性が率いている。フォティーナは「彼はパウロのように聖なる精神で満たされ、自分の仲間たちを導くようになった」と説いているという。


 メドヴェージェフ大統領は前から観世音菩薩の生まれ変わりだけれどね。

望月智充監督 『海がきこえる』(1993年)

2011年05月14日 | 映画
 折に触れて観たくなる作品。そして観ているうちに、ジブリの最高傑作のようにも思えてきた。小近藤おそるべし。それに、声優陣、坂本洋子さん、飛田展男さん、関俊彦さん、奇跡のような名演技ではなかろうか。自然な、抑えた。アテレコ慣れていない俳優の自然(=淡泊)さとはちがう、アニメーションの世界の自然さ。演出は誰だったのかな。

(ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2003年8月)

田名真之 『沖縄近世史の諸相』

2011年05月13日 | 日本史
 見事なまとまりを見せる論文集。沖縄近世史を学ぶ上での研究入門になるほどの。
 そのひとつ「再び琉球家譜について」から。
 王朝時代の沖縄では、本島(首里・那覇・泊・久米)士族は、童名(通称。沖縄社会における本来の名)、和名(日本、具体的には薩摩に対する際の名。家名=本土でいうところの名字+称号+名乗=和風名)、唐名(中国に対する際の名。中国風の姓+諱)という三つの名前を持っていた。しかし先島(宮古・八重山)士族は唐名を持たず、さらには姓も本島士族が一字の単姓であるのに対し二字の複姓と定められていた(本書158頁)。
 琉球士族とは姓と家譜とを持つ者と定義してよさそうだが、本島士族と先島士族の間には、姓のほか、家譜の体裁にも差があったという。田名氏はこれらの事実を指摘するだけで何も仰られないけれど、これは差別であろうか。

(ひるぎ社 1992年9月)

慶世村恒任 『新版 宮古史伝』

2011年05月12日 | 日本史
 石垣島のオヤケアカハチ(遠弥計赤蜂)も与那国島の鬼虎も、沖縄本島の首里王家へ弓引く御家の大悪人となっている。反対に、琉球王朝に初めて臣属した与那覇勢頭豊見親(宮古島の領主。ほかの史書で読んだがこの男、相当成長するまで宮古諸島と以西の八重山諸島だけを天とも地とも思いなし、東側、この世に琉球(沖縄本島)というべつの島があることを知らなかったという)と、王家の意を体してオヤケアカハチと鬼虎を討滅した仲宗根豊見親(与那覇勢頭豊見親の数代後の後継者)には、無批判というか、客観的中立を装いながら好意的であることが行間透けて見える。慶世村恒任は宮古島で古くからつづく名家(士族)の出である。時代の制約があるとはいえ(原著は1927年出版)、赤蜂も鬼虎も地下で哭いていることだろう。

(冨山房インターナショナル 2008年11月)

森達也 『ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー』

2011年05月12日 | 伝記
 ファン・ボイ・チャウ(潘佩珠)もクォン・デ(彊柢)も知らない著者は、自分の無知をこそ責めるべきであるのに、それをどうしてひるがえって日本と日本人全体の責任にしようとするのだろう。
 「日本人全体が一人で考えない」ことに危機感を抱いているとか、「世界が完全に思考停止する前に」とか、前から、この人のこういう虚け喝かしなところが嫌いだった(2003年6月25日「森達也 『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(晶文社)」参照)。(注)
 そもそも、何時誰が貴方に日本人を代表する資格を与えたのか。私は、知らないよ。

 注。さらに『下山事件(シモヤマケース)』においては、この人が思いこみの激しい、本人もそれと自覚せずに虚言する人格であるということが明らかになった(柴田哲孝氏の告発とそれに対する森氏の対応から判断して)。

 だいいちクォン・デはベトナムのラスト・エンペラーではない。ベトナムのラスト・エンペラーは別にいる(バオ・ダイ帝)。気分と感覚で適当なことを言ってもらっては困る。

(角川書店 2003年7月)