福澤諭吉=「脱亜論」= アジア蔑視・侵略主張というステレオタイプ。巻末にベトナム語・中国語(漢文)・フランス語・英語などさまざまな外国語のおびただしい参考文献が挙げられているが、日本語の読解力は大丈夫か。『福沢諭吉全集』に収録された「時事新報」論説をそのまま福澤のものと見なしてしまっているのは、この研究が平山洋氏や井田進也氏の研究が出る前のものだから仕方がないにせよ、「処分」即“侵略・分割”とするなど、自分の目と頭でテキストを読んでいるかどうかが問題なのである。この人は、母語でも外国語でもいい、辞典を常に横に置いて、すこしでも解釈に自信がない、自分が知っている意味では文脈上腑に落ちない言葉があったら引くのだろうかと。
(巌南堂書店 1993年2月)
(巌南堂書店 1993年2月)