くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ニュースがまちがった日」林直哉

2010-06-17 21:14:12 | 総記・図書館学
岩手県の指定図書に、注目しています。去年の「失くした記憶の物語」も一昨年の「俳句のツボ」もおもしろかった。で、この本も以前、選ばれたそうです。林直哉+松本美須々ヶ丘高校・放送部「ニュースがまちがった日 高校生が追った松本サリン事件報道、そして十年」(太郎次郎社)。
読みたかったんだー! この前の林先生の本がすごくよかったので。メディアに関わるコーナー(NDC070)をチェックしたらありました。でもなかなか読み終わらなくて、時間を見つけてちょこちょこ読んだ感じです。
内容的にはだいぶ、この前読んだ「高校生のためのメディア・リテラシー」と重複していますが、松本サリン事件の報道について放送部がどう検証したか、というメインテーマなので、具体性がより強く感じられました。
実はわたしも放送部の顧問だったことがあるのですよー。といっても写真撮影(現像)とビデオ編集が中心で、当時新任だったため何をやったらいいのか分からず……。
でも、カメラワークとか場面場面の切り取りとか、今思えば考えることが多かったですね。今ならもっと真剣に向き合える気がするのですが。
話を戻しましょう。
部員を使って自分の作品作りをしている、とまで言われたという林先生ですが、わたしにはこんな熱い活動はできません。だって夜中まで残って企画して会議して議論して撮影して編集して取り直して、コンクールがあればその直前まで手を入れ、結果が出てもまだできることがあるのではないかとテーマを深めていく。なかなかできることではないと思います。
作品は教師と生徒の協働で創られるというのが林先生の考えです。
松本サリン事件がすぐ身近であった報道だけに、高校生たちは違和感をもった。その正体はなんなのか。
通報者が犯人と決めつけるような偏った放送。実はオウムによる犯行だと分かってからも謝罪はなされず、報道関係者たちはどう感じているのかインタビューすることになります。
その中で明らかになっていく放送への疑問。
でも、メディア編集とは何なのか。一言「信じられない」で切り捨てできるものでもない。
何年にもわたる活動を通してリテラシーについて考え、理解していくのです。
この時期にメディアについてこれほど考えを深めている場はなかったのではないでしょうか。
メディアには相手へわかりやすく伝えるための工夫もあり、自分たちの意図を効果的に盛り込むために編集している。リテラシーを伝えようと生徒が作った授業は、同級生たちに衝撃を与えますが、映像に裏切られたと感じる感想が多かったようです。それを一概に悪として受け止めることはできないはずなのに。
なにもかもを鵜呑みにするのではなく、自分のものの見方を鍛える、メディアリテラシーにはそのような姿勢が必要なのではないかと考えさせられます。

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