くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「カシュトゥンガ」水沢秋生

2015-03-23 22:39:29 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 阪神大震災とオウム真理教のサリン事件があった年に生まれた子どもたち。思春期を迎えた彼らの間で囁かれる「おまじない」が、学校の中に嵐を連れてくる……。
 見えないもの、実際にはないものを信じさせていく少女の存在が、なんともいえない寂寥感を出しています。
 水沢秋生「カシュトゥンガ」(祥伝社)。
 
 水沢さん、実は学校に勤務されたことがあるんじゃないの? と思うリアルさでした。わたしは学校関係の描写が非常に気になるので、それはないだろうというような設定があると興ざめしてしまうんですが、この作品にはそれがなかった。中学校の閉塞感とか、そのなかで生きづらさを味わう子どもたちとか、そういうのがよく描かれています。
 中でも、クラス担任の浜中の考え方。極端かもしれません。でも、一面の真実ではある。
 学校というのは、はみ出した部分を削り、自分の弱さを克服して、社会で役立つように育成することが目標だというニュアンスが語られています。だから、気が弱くていいように使われがちの那須野くんなどは、ここで自分がどう動いていけばいいのか学習していく必要がある。副担任の蓉子には納得できない面があるようですが。
 
 高校生になった女子の一人が、中学時代を回想するところから始まり、中学二年生の半年余りが描かれます。ラストは進級して三年生。冒頭部分と一年の開きがあります。
 そうすると、思わせぶりなエンディングが、ちょっともったいないですね。「おまじない」をしかけた華那がいなくなっても、しんねりと不満を抱えた下級生がいる、つまり同じように事件が繰り返される……という展開にはならなかったということになるので。

 内気な生徒たちが不満を表に出していくなか、自分としっかり向き合える愛の誠実さ。そして、打算なく誰にも優しくできる咲希のあたたかさに救われる気がします。

 今月は、本当にやたらと気ぜわしくて、ゆっくり感想をまとめる時間がありませんでした。それでも、もう明日で修了式を迎えます。
 振り返るとあっという間ですね。とりあえずは一区切りです。
 次年度はもう少しゆったりさせて……。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿