くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「誰よりもキミが好き!」山内博之

2010-12-10 19:09:22 | 言語
小倉とクリームチーズの入った鯛焼きが大好きなのです。あるチェーン店に立ち寄っては購入しています。で、ふと行ってみた店のものが、ふわふわっとしてとてもおいしい。が、このところ販売されていません。人気ないのかなー。
このお店、以前勤められていた教頭先生の御自宅に近いのです。
「わたしの大好きな、教頭先生の家の近くの店でさー」
と言おうとして、ふと気になりました。こう言ったら、「好き」なのは「教頭」みたいじゃないのさ。
こういうまぎらわしい文、作文ではさけなくてはならないので、この本、おもしろく読みました。山内博之「誰よりもキミが好き! 日本語力を磨く二義文クイズ」(アルク)。筆者は実践女子大の国文学教授だそうです。
「女性はたくさんいるけれど、キミのことがいちばん好き!」という意味と「キミのことをいちばん好きな男はボクだ!」という意味、どちらとも解釈できる。なるほど、文脈で捉えるしかないですよねー。二義文というそうです。そういう語例が集められているのですが、大学の授業で紹介していたら雑誌にクイズ形式での連載が始まり、それを単行本化したものだそうです。このタイトル、もうひとつ別の意味があるそうなのですが、全くわかりませんでした……。
あ、掲載以外の二義文でわたしが知っているものをあげてみたいと思います。
「Aさん、結構嫌いな人が多いからね」
Aさんの好き嫌いが激しいのか、Aさんがみんなに好かれていないのか。
「大人しそうな顔の大きい男だった」
大きいのは、体格? それとも顔面?
「かつて同じアパートに住んでいた人から手紙がきた」
手紙がきたのは今? 以前?
ちなみに本文にはこんなのがあります。「ドラゴンズの監督がかわった」「まるで僕の奥さんみたいだね」「昨日、うちのおばあちゃんは胃の手術をした」「どこかから送ってきたと母が言っていた」「わたしに勝てる相手を選んでください」等々。
山内先生は、普段からこういう多義の文を気にかけていらっしゃるようですね。新聞記事に「北部同盟、タリバンと戦う」という見出しを見て、北部同盟はタリバンの味方なのか敵なのかわからなかったとおっしゃいます。なるほどー。
ところで、「誰よりもキミが好き!」のもうひとつの意味、もしかして「キミが誰よりも好きなお菓子を買ってきたよ」みたいな使い方をするというのでは? 先の二つは、好きなのは「僕」ですが、こちらは「キミ」の好きなものです。
日常の中で言葉の不思議を考える本、結構貴重です。