うううーん……。待ち望んだ日本ものがこれでは、ちょっと肩透かしというか……。
茅田砂胡「祝もものき事務所」(Cノベル)。平積みでした。その後訪れた別の書店でも。
おもしろいですよ。でも、わたしとは違う価値観のおもしろさなのです。もちろん、カリカチュアライズされているのはわかります。でも、家のあとを継ぐって、結構重いことだとわたしは思っているので、それ自体を「悪」として捉えるのは納得がいかないのです。作中人物に言わせれば、わたしも「囚われの身」なのでしょうか。でも、「悪」であるのは、立場を守ることしか眼中になくて子供たちをないがしろにした親たちであって、家督の問題とは少しずれるはずなのです。それを一緒くたにしてしまうから違和感が残る。
ちなみに、文章中に「悪」と書いてあるわけではありません。でも、あまりにも茅田さんらしい勧善懲悪物語だったこともあり、ううむとうなってしまうのです。
なにしろ、主人公は「ももたろう」です。犬猿キジそれに鬼とともに悪を倒す(ちょっと頼りないですけどね)のです。
百之喜太朗は無類の方向音痴。しかし、ある特殊能力のために事件の真相があぶり出されるのです。もともとは警察官だった百之喜は、冤罪事件を根底から覆すような証拠を次々と見つけますが、それは彼が有能なのではなく、事件が自分から近づいてくるというか……。本人には全くその気がないのに、なぜかそうなってしまうため、探偵としては役に立たず、かといって便利屋でもない、そんな事務所が運営されることになったのでした。
有能な美人秘書の凰華、幼なじみの犬槙(格闘家)、芳猿(役者)、鬼光(公務員。だけどハッカー)、そして弁護士のキジ名が協力して解決した事件は、おそらく百之喜がいなければ、真相は闇に葬られたことでしょう。
まー、要するに、異能者集団が自分たちの正義を通すために活躍する話なのです。
今回の依頼人は、弟が殺人容疑をかけられたため、婚約破棄されたという女性。物証もあるし本人も自白している。でも、一縷ののぞみをもって事務所を訪ねてきたのでした。
彼女の婚約者は、ある町の権力者の次男。百之喜はそれと知らず、真実に近づいていくのですが……。
いやー、これは読んでみないとこのけだるさとかやる気のなさが伝わらないと思うのですよ。このあらすじで間違いないとは思うのですが、ここだけ読むとちょっとハードボイルドタッチですもんね。
でも、帯に「なんちゃってミステリー?」とあり、さらに作者が「間違ってもミステリーではありません」といっているように、この物語はそういうジャンルにはあてはまらないと思います。ミステリーだと思って読むと、真犯人登場で「そりゃないよ!」と叫びたくなると思うので、くれぐれもご注意を。重ねていいますが、これはトラブルメイカーである主人公が、異能力ときらびやかな仲間たちの協力で、自分たちとは価値観の違う集団に「勝つ」話なのです。
だから、彼らと同じ視点を持っている方ならたいへん楽しいはずです。わたしは古くさい人間なので駄目でしたけどね……。
ところで、作中で鬼怒川弁護士さん(依頼人婚約者の叔母)が、大学時代が昭和の終わりごろだったと述懐していて愕然としました。わたし、昭和が終わった時期にちょうど学生だったのです。ということは、主人公よりもその親世代に近いのですね。うーん、だから納得いかないのかしら。
茅田砂胡「祝もものき事務所」(Cノベル)。平積みでした。その後訪れた別の書店でも。
おもしろいですよ。でも、わたしとは違う価値観のおもしろさなのです。もちろん、カリカチュアライズされているのはわかります。でも、家のあとを継ぐって、結構重いことだとわたしは思っているので、それ自体を「悪」として捉えるのは納得がいかないのです。作中人物に言わせれば、わたしも「囚われの身」なのでしょうか。でも、「悪」であるのは、立場を守ることしか眼中になくて子供たちをないがしろにした親たちであって、家督の問題とは少しずれるはずなのです。それを一緒くたにしてしまうから違和感が残る。
ちなみに、文章中に「悪」と書いてあるわけではありません。でも、あまりにも茅田さんらしい勧善懲悪物語だったこともあり、ううむとうなってしまうのです。
なにしろ、主人公は「ももたろう」です。犬猿キジそれに鬼とともに悪を倒す(ちょっと頼りないですけどね)のです。
百之喜太朗は無類の方向音痴。しかし、ある特殊能力のために事件の真相があぶり出されるのです。もともとは警察官だった百之喜は、冤罪事件を根底から覆すような証拠を次々と見つけますが、それは彼が有能なのではなく、事件が自分から近づいてくるというか……。本人には全くその気がないのに、なぜかそうなってしまうため、探偵としては役に立たず、かといって便利屋でもない、そんな事務所が運営されることになったのでした。
有能な美人秘書の凰華、幼なじみの犬槙(格闘家)、芳猿(役者)、鬼光(公務員。だけどハッカー)、そして弁護士のキジ名が協力して解決した事件は、おそらく百之喜がいなければ、真相は闇に葬られたことでしょう。
まー、要するに、異能者集団が自分たちの正義を通すために活躍する話なのです。
今回の依頼人は、弟が殺人容疑をかけられたため、婚約破棄されたという女性。物証もあるし本人も自白している。でも、一縷ののぞみをもって事務所を訪ねてきたのでした。
彼女の婚約者は、ある町の権力者の次男。百之喜はそれと知らず、真実に近づいていくのですが……。
いやー、これは読んでみないとこのけだるさとかやる気のなさが伝わらないと思うのですよ。このあらすじで間違いないとは思うのですが、ここだけ読むとちょっとハードボイルドタッチですもんね。
でも、帯に「なんちゃってミステリー?」とあり、さらに作者が「間違ってもミステリーではありません」といっているように、この物語はそういうジャンルにはあてはまらないと思います。ミステリーだと思って読むと、真犯人登場で「そりゃないよ!」と叫びたくなると思うので、くれぐれもご注意を。重ねていいますが、これはトラブルメイカーである主人公が、異能力ときらびやかな仲間たちの協力で、自分たちとは価値観の違う集団に「勝つ」話なのです。
だから、彼らと同じ視点を持っている方ならたいへん楽しいはずです。わたしは古くさい人間なので駄目でしたけどね……。
ところで、作中で鬼怒川弁護士さん(依頼人婚約者の叔母)が、大学時代が昭和の終わりごろだったと述懐していて愕然としました。わたし、昭和が終わった時期にちょうど学生だったのです。ということは、主人公よりもその親世代に近いのですね。うーん、だから納得いかないのかしら。