くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「13ヶ月と13週と13日と満月の夜」アレックス・シアラー

2009-11-18 05:12:38 | 外国文学
この本は同僚にすすめられて読んだのです。
「今を大切にしていこうと思いました」ときいて、一瞬はやりの自己啓発ものかと思ってしまったけど、どうしてどうして。思春期に夢中になって読める本です。
アレックス・シアラー「13ヶ月と13週と13日と満月の夜」(求龍堂)。金原瑞人訳で、結構さくさく読めますし。
主人公カーリーは、転校生のメレディスと親しくなろうとするうちに、どうも彼女とおばあさんとの関係が尋常ではないことに気づきます。おばあさんが虐げられているような。
実はおばあさんは、魔法によって孫娘と体を入れ替えられていた! 七十歳の体に十二歳の心。彼女を助けようと動き始めるカーリー。しかし……。
まあ、ネタバレになってしまいますが、カーリーもおばあさんになってしまう訳です。さらに、両親は魔女の心を持った娘のいうままに、彼女を老人ホームに入れるのです。
何とかしなくては! でも体はうまく動かないし、歯は入れ歯。移動には歩行器が必要ときてはどうしようもない。
13ヶ月と13週と13日、とは魔女たちが自分たちの本当の力を取り戻すまでの時間。魔女の力が目覚めたなら、早速両親をナメクジに変えて、自分たちの好きに暮らそうという計画なのです。
この話でいちばん心に残ったのは、少女から一足飛びに老女になってしまう悲劇。自分の経験すべき青春を失ったまま、終焉を迎えようとする悲しみです。
また、カーリーの心がどこにあるのかに気づかない両親にちょっとだけ哀しみを覚えます。
でも、自分も子どもたちの「中身」が違う人になっていても気づかないでしょう。外見はそのくらい強いものですから。
変身の物語を、何編か読んでみたいと感じました。でも思いつくのは、カフカと「百鬼夜行抄」くらいなんだなあ。地道に探してみます。