という訳で思春期を描いた作品には何となく抵抗があるわたしなのですが。
ムムッ、お主なかなかやるな。というのがこの本を読んでの感想です。思春期の少年たちを描くのに、生臭くない。からっとしていておもしろいんですよ。
久保寺健彦「中学んとき」(角川書店)です。この作者は初めて読むのですが、他の本も読みたいと思いました。
世代としては、椰月美智子と同じです。でも、この作品の人物はいらいらしていないのがいい。男女の差でしょうか。
この年代、女子はいろいろと面倒ですからねー。男子はまだまだのんびりしている子が多い。それに、彼らの思春期は「十五歳から十八歳」と筆者が考えていることも大きいと思いました。
四つの短編が入っています。東京都内ですが、かなり埼玉寄りの町。六本木まで直通の電車があることがセールスポイント。この地域には二月中から五月中までの中学があり、そこで現在を過ごす少年たちが描かれます。
まず、「純粋恋愛機械」。これがおもしろかったのです。主人公ののぼせ上がりぶり、友人たちの行動、ラストはある意味どんでん返し(笑)。
伏線も丁寧です。主人公がひっかかる様々な違和感がほどけるのがおもしろい。
これからこのグループの恋愛模様が続くのかしら、と思ったら、次の「逃げ出した夜」は一転してハードでした。これは「ここではないどこか」を求める少年なのかもしれません。つねに他の子どもとは異質で、区別されている。世の中がみんな胡散臭く見えて生きにくい。唯一の友達から誘われた「家出」。しかし、そこでも価値観の違いがあらわになる--。
楽しかったのは「願いましては」ですねー。そろばんを六級でやめたわたしには信じられない三人組ですが、これがさわやかでかわいい。珠算教室の先生ご夫妻がまたいいのです。愛すべきキャラクターたちが織り成すコメディタッチの一作です。
「ハードボイルドなあいつ」は、他の話と違って、唯一現在の主人公の視点が混じっていました。弱いくせにハードボイルドな鷹野。ナイスです。で、やっぱり集団には厳しさは必要なんだよなーとも思わされました。エスカレートしていくいじめの様子に胸が痛みます。悲劇を食い止めるなら、いつだったのか……。
そして、前作品が提示した「いざとなったら体売れるか。そうしなきゃ生きていけなくなったら」という疑念が、背後にうごめいていることに気がつきます。いざとなったら。それは最悪の選択だった訳ですが。
で。
短いエピローグが入っています。一読したときは、なぜこれがここに必要なのかちょっと悩みました。でも、読み返して気づいたのは、これが「リサ」の物語であるということです。戻ってきて、普通の顔をして生きてきたリサの本質が見える。そして、おそらく修も同じように生活していくのだろう、と思わされるのです。
そして、中学時代を筆者はどう見ているのか。このエネルギーの大きさを描きたかったのかな、と感じました。
ムムッ、お主なかなかやるな。というのがこの本を読んでの感想です。思春期の少年たちを描くのに、生臭くない。からっとしていておもしろいんですよ。
久保寺健彦「中学んとき」(角川書店)です。この作者は初めて読むのですが、他の本も読みたいと思いました。
世代としては、椰月美智子と同じです。でも、この作品の人物はいらいらしていないのがいい。男女の差でしょうか。
この年代、女子はいろいろと面倒ですからねー。男子はまだまだのんびりしている子が多い。それに、彼らの思春期は「十五歳から十八歳」と筆者が考えていることも大きいと思いました。
四つの短編が入っています。東京都内ですが、かなり埼玉寄りの町。六本木まで直通の電車があることがセールスポイント。この地域には二月中から五月中までの中学があり、そこで現在を過ごす少年たちが描かれます。
まず、「純粋恋愛機械」。これがおもしろかったのです。主人公ののぼせ上がりぶり、友人たちの行動、ラストはある意味どんでん返し(笑)。
伏線も丁寧です。主人公がひっかかる様々な違和感がほどけるのがおもしろい。
これからこのグループの恋愛模様が続くのかしら、と思ったら、次の「逃げ出した夜」は一転してハードでした。これは「ここではないどこか」を求める少年なのかもしれません。つねに他の子どもとは異質で、区別されている。世の中がみんな胡散臭く見えて生きにくい。唯一の友達から誘われた「家出」。しかし、そこでも価値観の違いがあらわになる--。
楽しかったのは「願いましては」ですねー。そろばんを六級でやめたわたしには信じられない三人組ですが、これがさわやかでかわいい。珠算教室の先生ご夫妻がまたいいのです。愛すべきキャラクターたちが織り成すコメディタッチの一作です。
「ハードボイルドなあいつ」は、他の話と違って、唯一現在の主人公の視点が混じっていました。弱いくせにハードボイルドな鷹野。ナイスです。で、やっぱり集団には厳しさは必要なんだよなーとも思わされました。エスカレートしていくいじめの様子に胸が痛みます。悲劇を食い止めるなら、いつだったのか……。
そして、前作品が提示した「いざとなったら体売れるか。そうしなきゃ生きていけなくなったら」という疑念が、背後にうごめいていることに気がつきます。いざとなったら。それは最悪の選択だった訳ですが。
で。
短いエピローグが入っています。一読したときは、なぜこれがここに必要なのかちょっと悩みました。でも、読み返して気づいたのは、これが「リサ」の物語であるということです。戻ってきて、普通の顔をして生きてきたリサの本質が見える。そして、おそらく修も同じように生活していくのだろう、と思わされるのです。
そして、中学時代を筆者はどう見ているのか。このエネルギーの大きさを描きたかったのかな、と感じました。