ポポロ通信舎

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亡命公使・太永浩、怒りの執筆

2019年07月15日 | 研究・書籍

『コミック版二十歳の原点』ではタイムスリップして1960年代の世界に戻りましたが、新刊『北朝鮮外交秘録』では、国境を越え謎の多い北朝鮮の姿を内部から見ることができました。読書の醍醐味です。

三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録』(文藝春秋 2019年6月第1刷発行)は、元駐英北朝鮮公使、太永浩(テ・ヨンホ)が著した実録のものです。巻頭の日本語版への序文では「金一族による世襲政治が70年以上続く、北朝鮮の国民は奴隷のような人生を送っている。北朝鮮の国民と日本人拉致被害者がそんな日々から解放される日を一日でも早めるため、私の人生をささげるという気持ちに迷いはない」と2019年5月の記載。

「平壌心臓部を生き抜いた元高級官僚が誰も知らなった新事実を怒りの執筆!」まさに。 どの話もすごいことばかりでとどめ置かなくてはならないことばかりですが、その一つ 張成沢(チャン・ソンテク)の粛清では、張成沢一家ばかりでなく彼の側近たち1万名余りを粛清し尽くしたという。高官であってもいつ足をすくわれるかわからない。粛清の名のもとに人命がいとも簡単に消されていく。

著者がイギリスで、エリック・クラプトン公演に訪れた金正哲(金正恩の兄)の案内役をした苦労話は、当方もクラプトンは興味があるだけに注目した。 https://youtu.be/mTi14zcU1l8

生まれたときから苦労を知らずに育ったお坊ちゃまの金正哲ではあるが「王子の孤独」にも垣間見たようだ。 著者が帰宅して、すでにうわさで知っていた子どもたちからの反応が冷静だったという。「お父さんは金正哲を案内していたんだ。一般市民には腐った資本主義の音楽など聴いてはいけない。聞けば大学から追放までされる。人民には苦難の行軍を強要しながら、金一族はやりたい放題だ。ロンドンで一日に何千ドルも浪費して、ありえない」

北朝鮮の瀬戸際外交で知られる「外交巧者」のゆえんも書かれていた。今、朝鮮問題に関心のある人にはぜひ読んでいただきたい一冊です。(敬称略)

 

それではさいごに「腐った資本主義の音楽」から一曲。エリック・クラプトン『チェンジ・ザ・ワールド』♪

 

 

Eric Clapton - Change the World

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