昨年1月20日第1刷発行の『民主党が日本経済を破壊する』を読みました。
読む前と、後では著者、与謝野馨氏に対する印象がずいぶん変わりました。著者は2006年に扁平上皮がんで13時間に及ぶ手術している。症状から生存率2年半ともいわれた。彼が情緒の政治を排し、歴史と向き合う気概をもったのは、この大きな病の影響とは切り離せない。深刻な日本の国家財政を自身の「癌」との闘病にたとえて語る。
今般、なぜ周囲の批判を浴びながらも民主党政権の中にあえて閣僚として入ったのか。また一方菅総理側も何ゆえ与謝野氏を招いたのか、本書にはその答えが込められていた。首相官邸も、事前にこの本は熟読し参考にしたのことは間違えない。
与謝野氏の経済政策は、小泉・竹中氏らの「改革」路線からは、明らかに脱却している。めざすキーワードは「安心社会」、そして皆保険、皆年金のありがたさを継承し、さらにその延長政策として欧州大陸型福祉国家論となっている。そのため日本の現在の「中福祉・低負担」を「中福祉・中負担」に是正しよう、ということなのだ。
氏の余命を、日本の国家に重ねて憂う気持ちは素直に受け止め評価したい。ただ本書の題名には異議あり。『民主党が日本経済を破壊する』は誤解を呼ぶ(呼んだ)。むしろ内容的は『超党派で日本経済を救おう』とすべきであった。このタイトルは多分に商業主義的、挑発的である。こうした点からは残念ながら氏がめざしている「ステーツマン(大物政治家)の職責」を理解されるには、まだまだ時間の要るところ、と感じてしまう。
民主党が日本経済を破壊する (文春新書) | |
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