「正しく知って、正しく恐がる」。チェルノブイリ事故後、現地で5年半医療支援をした甲状腺専門疾患の医師で現在、長野県松本市長の菅谷(すげのや)昭氏=写真=の著書『子どもたちを放射能から守るために』を読みました。Q&A形式に書かれていますが、放射能はまだワカラナイことだらけ。正直な著者は「どこまでだいじょうぶなのかよくわからない」。「わからないからだいじょうぶではなく、わからないから怖い・・」などと、はっきりした結論を求めたい読者には物足りなさを感じるかもしれないが、これが未完の科学、原子力、放射能の実態なのだと思う。
私たちがこれから気を付けなければならないのは、内部被ばく。放射性物質が体内に入ってくる経路は3つ。
(1)鼻や口などから呼吸器を通じて入り込む・経気道的(対策はマスクなど)
(2)皮膚を通して入り込む・経皮的(対策は長袖、洗い落とすなど)
(3)食品や飲み物を通じて入り込む・経口的(対策は???)
医師会は脱原発のリーダーシップを
それにしても日本の医師会は、今回の福島原発事故に対してしっかりした態度表明をしていない。ただTPP(環太平洋連携協定)については、国民皆保険を破壊する恐れがあるとして意見書を提示している。これと同じように原子力政策に対しても、子どもたちを放射線から守るために健康の最高識者としてリーダーシップを発揮してほしい。ドイツ、イタリアでは医師たちが脱原発の先頭に立ったと聞く。日本のお医者さんたち、医師会もぜひ菅谷昭氏のように警鐘を鳴らしてもらいたい。
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子どもたちを放射能から守るために |
菅谷昭 (松本市長・医師) | |
亜紀書房 |