ポポロ通信舎

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原発はほんとうに危険か?

2011年10月08日 | 研究・書籍

クロード・アレグレは1937年、パリ生まれ74歳。地球物理学者でリオネル・ジョスパン(フランス社会党)内閣では文部科学大臣も経験。7月1刷発行の新書『原発はほんとうに危険か?』は、原発先進国のリベラル派からのメッセージとして興味と期待をもって読んだ。できることなら原発を少しでもプラスに理解したいという気持ちが先にあって。

しかし、結論からいうと「原発はほんとうに危険だ!」と改めて思った。クロードは「『原子力は恐怖か?』の答えは『ノン』です」と最後にむすんでいたが、わたしはその「ノン」の答えに「ノン」。

チェルノブイリの原発には格納容器がなかった。それに老朽化していた・・日本の原子力技術はフランスより劣る。フランスの原発では水素爆発は起こらない。日本には「水素再結合装置」がない・・。この自信はどこかの国の神話でも聞いたようなセリフだ。いずれきっとフランスでも大きな原発事故が起こるような気がしてならなくなった。

クロードは「原子力自体はもちろん恐怖だ。しかしきちんと管理された放射性物質なら危険はない。フランスの原発の安全性は優れている」と、どこまでも自信を隠さない。

クロードは地質調査所長だったとき、放射性廃棄処分案(保管縦穴4千メートル)に対して、複数の民間企業から意見を変えて欲しいと懇願された。ジレンマに陥った彼はその後、積極的な反対は控えた。結局、「縦穴4百メートル」と当初の10分の1に短縮された形で妥結されたと自らの苦しい経験を述べている。安全の論理と採算の論理のはざまで事が進められて行く、このプロセスを知るだけでも将来に渡って「きちんと管理」ができると言い切れるものなのかどうか、とても疑問だ。文中に出てくる「放射性廃棄物の問題が解決できるのであれば原子力を敵視しない」と主張するダニエル・コーン・ベンディッド(元学生運動リーダー、環境派の急先鋒)の見解の方が明快に感じる。

クロードは、ダニエルのような「エコロジストの主張はフランス人の生活レベルを半減させる。科学を否定してはいけない」と批判する。繁栄維持のためにはあくまで原発は活用していく。そこには消費の抑制、「知足」(不満を持たず現状を満ち足りたものと理解する)の考え方とは無縁のようだ。

 

フランスからの提言 原発はほんとうに危険か?
クロード・アレグレ 林昌弘・訳
原書房
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