Model 107

1985年の107
じっくり時間をかけてお気に入りの一台に仕上げます。

てっぱく 大宮 鉄道博物館 1290型 1292号機 9月13日 2017年-05

2017-10-04 | Weblog
とても珍しい機構を持つ蒸機です。

1290型蒸機機関車は1873年イギリスの“Maning Wardle社”によって製造された蒸機です。

官鉄(官設鉄道*国が運営する明治期の鉄道)が最初に2両輸入し東海道本線などの鉄道建設に使われたそうです。

1881年に追加輸入された1292号機は日本鉄道会社の建設工事に貸与されました。

その際、船に乗せて隅田川を遡り川口の善光寺付近で陸揚げされたため“善行号”と命名されたそうです。(*栄光の日本の蒸気機関車86頁より引用)



正面の姿から観賞していきます。

お世辞にも「美しい」とは言い難い姿です。

細めのボイラーの上には不釣合いな箱のようなものが…これ「サドル・タンク」と呼ばれる水タンクです。

普通の「タンク機」はC11などのサイド・タンクと呼ばれるボイラー両脇にタンクを抱える形状なのですが、なぜ高重心になって運動性能にも悪影響してしまうサドル形式とするのか、その理由は分かりません。



横にまわって見てみます。

ボイラーの上に乗っかっているのが水タンクです。

大きさのアンバランスを感じます、



タンク横にも取り付けられたナンバー・プレート。

形式ナンバーも併記され磨き上げられた大型のプレートが誇らしげです。

真鍮製のパイピングは必要最短距離で配管されているようで、美しさはありません。



蒸機ドームからの配管も「プロト・タイプ(製造前の検証用実物模型?)」のような印象を受けます。



取り敢えず実験室で走らせてみました…のような雰囲気です。



ここから見る限りでは「ただの“古い蒸機”」としか見えませんが…



金色の光を放つ一際目立つ蒸機ドーム

キャブは直線で構成された「箱」形状です。



そのキャブ前に取り付けられた金色プレート。

上からManing Wardle の社名

No,815 はManing Wardleが製造した蒸機、総製造数2033両のうち815番目の製造という意味でしょうか

“LEEDS”はManing Wardle社が所在したイギリスの町名でしょう。

1881はこの蒸機の製造年でしょうね。



キャブ内を覗いてみます。

外観の雑な配管に反して意外と綺麗にまとまっています。

水面計はカバーガラスなしのガラス管がむき出しです。

20度くらい傾けて取り付けられています。



直線だけで構成された何の色気?もないデザインと思いきや…屋根下を見てください。

似つかわしくないデザインが施されています。

“コーニス”と呼ばれる装飾でしょうか。



いつものように「前振り」が長くなりましたが、ここからが1290型蒸気機関車の最大特徴です!

この写真がその特徴の全てを写しています。

1290型1292号機の下には「ピット」と呼ばれる点検整備のための“穴”が掘られています。

なかなか蒸機の下部に潜ってメカを観賞する機会などは少ないです。



ピットの壁に貼られた説明パネル。

「インサイド・シリンダー」の説明です。



やはりピットに貼られている写真の説明パネル

インサイド・シリンダーの位置が良く分かります。

それを踏まえて…



ピットからもう一度実機を見てみましょう。

シリンダーの状態が良く分かりますね。



「これかぁ~」ってね。



通常、シリンダーのある位置にはそれはありません。

空っぽです!

もちろん、クロスヘッドも滑り棒などの摺動装置は見当たりません。



その代わりに、台枠内部は写真のような複雑なリンク装置で一杯です!

先の「栄光の日本の蒸気機関車」の解説でも「狭軌のSLに何故このような機構を採用したのかは理解できない」とされています。

設計者にはもちろん崇高な理由があったはずです。

思い出したのは…スバル1000とかスバルFF-1とかのスバル車です。

オジサンくらいの年代のクルマ好きならきっと知っていると思います。

このクルマ、フロント・ディスクブレーキがエンジンルームのミッションの出力シャフト側に取り付けられているんです。

“インボード・ディスクブレーキ”と呼ばれていました。

これはレーシング・マシーンなどに使用例があるほど高度な技術ですがそれを市販車に採用したのにはそれなりの理由がありました。

FWD(Front Wheel Drive)形式のクルマは、ステアリング装置と動力伝達装置を一つのシャフトに兼ねさせなければなりません。

その装置として等速ジョイントという機構が採用されていたのですが当時の技術では完全な等速ジョイントは開発途上でした。

そのための一つの問題解としてインボード・ディスクブレーキが採用されたそうです。

そのお陰で滑らかなハンドリングを手に入れたスバル車でしたが、複雑な機構のためメンテナンスや修理に手間が掛かるという問題が露呈したそうです。

結局、インボード・ディスクブレーキを搭載したスバル車はスバル1000とかスバル・ff-1、スバル・ff-1 1300G などに継承されながらスバル・レオーネの世代には通常のブレーキ・システムに改められ、今日のスバル車でインボード・ディスクブレーキを採用する車種はありません。

スバル・ff-1 1300Gなどに憧れていたオジサンでしたが、残念ながら新車でそれを手に入れることは叶わず、妥協した結果「レオーネ」を購入してしまいました…というオチがつきます。*初めて手に入れたクルマですよ!

何となく1290型蒸気機関車の「インサイド・シリンダー」とスバルの「インボード・ディスクブレーキ」の技術者の想いが甘酸っぱい青春の思い出にかぶってきました。

1290型蒸気機関車の開発技術者にも技術のブレーク・スルーに崇高な想いがきっとあった筈です。

完成された技術の恩恵にどっぷりと浸かった今日の技術者にはそれが理解が出来ないのでしょう。



「善行号」の説明パネルです。

サッパリとした説明です。

技術者の志を鉄道記念物指定が表しているかのようです。

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