明治38年日露戦争が終わる。莫大な戦費を費やしたにもかかわらず、賠償金は出なかった。大陸への進出等、今後のことを考えると国内の鉄道網を国有化して物流をスムーズにする必要がある。関西鉄道社長の片岡直温氏にとって、それはよく理解できる。しかし、国有化に際して、国は公債を発行して(借金をして)その金でもって(札束で横面をはたいて)私鉄を買収しようとしている。それでいいのか?海外投資家にも頼っている現状で、国債の暴落に繋がらないか?と懸念しているのだ・・・と私は読んだ。
政府というところは、国債で借金というところで事を済ませるのが常套手段だ。今も昔も変わらない。私達なら、まずは返済見通しをたてるが・・・。
再び「関西鉄道時報」より。
『関鉄棹尾(たくび)の運輸収入と配当率の予想』(怪来師 投稿)(関西鉄道もいよいよ国有化が決まり、どのように収めるかというところに来ている)
〇 某君の『浪花便り』に『国有化の期日が近づいて落ち着かない関西鉄道は、鹿の名所に人を呼ぶでもなく(何もせずして終焉を迎えるのか?)』と書かれたが、このような皮相的な近視眼流の観察をする人があるから困る。これまで私は、某君の通信を愛読させてもらっていたが、この一文で興ざめしてしまった。なぜ誤っているかというと、本期に入っての関西鉄道の収入は33万7千余円を増収している。それでも『国有化で落ち着かない』といわれるのか。それに8月に入ってから、運輸課所属員一同で、有終の美を飾るため伊勢参宮や奈良見物、京都本山詣りの千人・二千人という大団体を組織して、今日迄に成功せし人員は約二万五千となっていて、尚着々と成功している。この活動を見ても涙金(買取金額)の多少にのみ頭を悩ませているとは思えない。(関西鉄道は、国有化を直前にして、ぼーっとしているわけではない。頑張っているんだぞと言いたいところなのだ)
〇 監査官の来社
加茂〜奈良間の変更線路監査のため、鉄道局の辻技師は、去る17日来社せられたり。(四日市に来たのだろう)
友鶴
〇 最終割引と増収
関西鉄道棹美(たくび)の大活動たる団体政策に引き続き、秋季彼岸会7日間の割引は又もや的中して、無比の好成績を上げた。勿論、国有記念最終の値引きであるということには魅力があるが、それより社員一同の会社に対する感謝の念の賜物といえる。会社もこれに答えて未曾有の賞与金を支給することにしたそうだ。