講談社現代新書 林田慎之助著「漢詩をたのしむ」
おもしろそうなので読んでいます。漢詩は、年寄りのなぐさみものだとばかり思っていました。
ところが冒頭にこうあります
「詩は志をふるいおこすために、事物を鋭く観察するために、公共の精神を尊び、社会を正しく批判するために役立つのだ」 論語
そして始まりに、戦(いくさ)を批判する反戦の歌が並びます。
漢詩には、反戦思想や志を主張する、いわゆる内から外への歌と、外からの影響を受ける内なる感情を歌ったものに分かれるそうです。友情や愛情がそうです。
紹介する、無名氏(むめいし)の詩は、女性が、遠い戦地に赴き帰らぬ人に向かって歌った詩です。
これは、りっぱな反戦の詩なのです。
中国らしい ダイナミックで悲痛な歌です
上邪 上邪(じょうや)
我欲与君相知 我は君(きみ)と相知り
長命無絶衰 長(とこしえに)絶え衰(おとろう)ことなからしめんと欲す
山無陵 山に陵(おか)無く
江水為竭 江水は為に竭(つ)き
冬雷震震 冬は雷(いかずち) 震震(しんしん)とひびき
夏雨雪 夏に雪雨(ふ)り
天地合 天地(あめつち)の合するとき
乃敢与君絶 乃(すなわち)敢(あ)えて君と絶えん
天よ 私は誓います
私があなたを愛したからには
この気持ちがいつまでも 絶えて衰えることがないように
たとえば 山々の峰がなくなって
そのために おおきな川の水が枯れてしまい
冬というのに 雷が鳴って響きわたり
夏というのに 雪が降りしきり
天地が崩壊してしまうようなことになったとしたら
私はそのとき はじめて やむを得ず あの人の愛を絶つことになるでしょう
どうじゃ おかあん なんてはずかしくて てれくさくて・・・・・