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【転載記事】IPPNW共同会長/ICAN創立者・ティルマン・ラフ医学博士の論評 「フクシマ原子力災害から8年」

2019-05-08 00:13:32 | 原発問題/一般
はじめに

IPPNW (核戦争防止国際医師会議)は、1980年に設立されて以来、核戦争を医師の立場から防止するために活動してきた国際組織であり、1985年にはその功績を認められてノーベル平和賞を受賞した。2007年、IPPNWを母体にして、ICAN (核兵器廃絶国際キャンペーン)が発足した。ICANは、核兵器禁止条約の採択に貢献した功績などを認められて、2017年にノーベル平和賞を受賞した。ご紹介させていただく論評の著者であるティルマン・ラフ氏は、IPPNWの共同会長でありICANの創立者でもある。

論評は、今も進行中であるフクシマ大惨事を包括的に捉え、その実相を浮き彫りにしている。そして、わたしたちに様々な疑問を投げかけている。それらの疑問は、政府および原子力規制機関のフクシマ対策/原子力対策のあり方、収束の見込みの薄いフクシマ災害、東京オリンピック招致をめぐるスキャンダル、放射線が及ぼす健康被害、避難者の人権・健康への権利、などに及ぶ。ラフ氏は、このクリティカルな論評を通して、核エネルギーの危険性について、鋭い警報を鳴らし響かせている。

なお、論評を日本語訳することについては、ティルマン・ラフ氏から許諾を受けている。原文へのリンク

フクシマ原子力災害から8年
著者:ティルマン・ラフ (Tilman Ruff)

〈 医学博士/ IPPNW共同会長 / ICAN創設者 / メルボルン大学准教授 〉

(日本語訳:グローガー理恵)

2019年3月11日

今も進行中の福島第一原発事故は2011年3月11日に始まった

世界で最も複雑な核災害が発生してから8年。損壊された福島第一原発と核燃料プールからは、いまだに、放射能が漏洩し続け、危険であり、膨大な量の放射能汚染水が止まることなく蓄積されていっている。毎日、約8,000人の労働者がクリーンアップ作業に従事し、クリーンアップの作業は今後も、何十年もの間にわたり続行されていかねばならない。被ばくした人々のニーズは、いまだに無視され、東電と行政機関の過失がフクシマ原子力災害の根源的原因であったにもかかわらず、その責任を問われて刑務所に入っている者は一人もいない。留意しなけばならないフクシマ核災害の教訓の殆どが、いまだに軽視されている。

日本で最初の独立した調査委員会である国会事故調査委員会 (東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の委員長を務めた黒川 清教授は、最近、「2012年に国会事故調の提言が国会に提出されて以来、有意な進捗がほとんど見られなかった 」と、論文に書いている。[1] 彼は、(これまでに為された)規制組織の変革を「単なる表面的な模様替え(コズメティック・チェンジ)にすぎない」と評している。日本の原子力規制機関が一般市民の安全を守ることよりも原子力産業の利益のために奉仕していたという典型的な「規制の虜(とりこ)〈*訳注1〉」状況は殆ど変わっていない。黒川教授は、「国会事故調の報告書は〈*訳注2〉政府機関の変革を促した。しかし、実際に政府機関内で為された変革は、必要最小限レベルの形式的なものにすぎなかった」と述べる。さらに彼は、「いまだに規制の虜の構造体はしっかりと維持されている」と記述している。

原子力災害の影響を被るのは日本の市民である。そればかりではない。日本の市民は東電が国から受ける無利息の貸付金1190億ドルのような膨大なコストの大部分を、自分たちが支払う税金によって、負担することにもなるのである。

国会事故調は「一号機で放射能漏洩が始まったのは、津波が一号機に到達する前に、地震によってもたらされたものである、という主に間接的ではあるが有力な証拠に鑑みて、日本国内に立地するその他の原発においても、同様なことが起こる可能性があるということを慎重に検討すべきである」と、提言した。しかし、この提言が履行されることはなかった。2011年以来、日本では9基の原子炉が再稼働された。もし、福島原発やその他の原子力施設で再び、何らかの災害が起こったとしたら、現在の危機管理体制 が、はたして、8年前の福島第一原発事故においては、まったく機能しなかった危機管理体制よりも遥に改善されたものであるのか、確信を持つことはできない。

日本政府は、2020年の東京オリンピックを控えて、「フクシマの事態は基本的に正常に戻っており 状況は統御されているの(アンダーコントロール)であるから、フクシマ原子力災害は 『過去の問題』である」と、主張しようと決意しているようである。東京オリンピックの五輪聖火リレーは福島で始まり、ソフトボールや野球の試合も福島で催される予定になっている。2013年の安倍首相による真しやかな宣言は、日本のオリンピック招致のチャンスを補強した。彼は、「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」と、断言したのである。

〈*訳注3〉

日本の2020年オリンピック招致の確保にかかわったのは、安倍首相の虚言だけではなかったようである。2018年12月10日、竹田恆和 JOC (日本オリンピック委員会) 会長が、フランスで、東京五輪招致の贈収賄容疑で訴追されたのである。フランスの経済犯罪検察官は、日本の五輪招致の支持票獲得のために、アフリカの国際オリンピック委員会関係者に賄賂が支払われた、と陳述している。[2]

〈*訳注4〉

フクシマの現状

福島原発事故発生以来8年間、ティルマン・ラフ医師はフクシマの健康影響を注意深くモニターしてきた。

“世界原子力産業現状報告書2018年版 (The 2018 Edition of the World Nuclear Industry Status Report) “は、フクシマの現状について適切な概観を提示している。[3]

損壊された原子炉(複数) から使用済燃料を取り出す計画が、何度も、いつの間にか、先延ばしにされ、どのようにして燃料デブリを取り出すのか、その方法が決定されることもなかった。溶融した燃料棒のデブリが、すべての原子炉の破損された格納容器内に存在し、同様に、その外側にあるペデスタル上にも存在する。メルトダウンした1号機から3号機までの原子炉に、それぞれ、毎時3m³の水が絶えず注水され続けなければならない。注水された水は損傷した格納容器の亀裂から流れ出し、破損された地下に侵入した地下水の水と混合される。

新たに生じる汚染水の増加率は下がったが、1,000,000 m³ 以上の汚染水が敷地に保管され、その量は増え続けている。汚染水に含まれた様々な放射性物質は多核種除去設備で除去されるが、トリチウムは除去できない。そのため汚染水には、まだ、高濃度のトリチウム(>500,000Bq/リットル) が含まれている。土地の人々は、トリチウムの含まれた汚染水の海洋放出に反対し続けている。

2016年、345億円が費やされたといわれる凍土遮水壁の運用が開始されたが、その効果が示されることはなかった。

2017年までに、計4万人の作業員が広範囲に及ぶ廃炉作業にかかわった。廃炉作業が終了するまでには、あと何十年もの歳月が必要とされている。現場では、およそ8千人の労働者が常に、継続的に、作業に取り組んでいる。 作業員の90%以上が下請け労働者であり、彼らは十分な訓練を受けておらず、酷い労働状況のもとに置かされている。彼らが受ける被ばく線量は、平均して、東電の従業員が受ける被ばく線量の2倍以上になる。

2018年1月に下請け労働者が受けた最高の被ばく線量は、ひと月に10ミリシーベルト(10mSv/月) 以上だった、と記録されている。これまで、クリーンアップ作業員の中で5人に発症した、がんの症例が、業務と関係した労災として正式に認定されている。これらの症例の内訳は:白血病が3例、甲状腺がん 1例、肺がん 1例 となっている。

日本政府は、福島県の放射能汚染された市町村の避難指示解除を積極的に推し進めてきた。こうすることで、避難することを公認された避難者の数を作為的に減らせることになる。日本政府は、フクシマは正常に戻ったのだという、人を惑わすファンタジーをつくり上げようと企む一方、フクシマ大惨事から8年経った今も、市民が受ける年間追加積算被ばく量の許容量を20 ミリシーベルトと決め、それを適用している。原子力災害の後、これほど高い追加積算被ばく線量を、これほど永年の間、容認した国は、世界中で日本だけである。

しかも、復興処点に指定された4つの区域において住民が年間に受ける追加積算被ばく線量が、50ミリシーベルト以上に及ぶことが確認されたのである。さらに、2023年までには、住民がこれらの高度汚染区域へ帰還することが計画されている。避難指示が解除された地域から避難している人たちは、許容できない危険な環境に帰還するようにと強い圧力をかけられているのである。そうしなければ、彼らはすべての経済援助を失うことになる。こうした政府の圧力にもかかわらず、避難指示解除された5市町村に帰還した住民は、たったの3%から29%であった。元住民の50%までが帰還しないことを決め、その多くは帰還すべきか否か、まだ決めていない。

日本政府は、相変わらず、国民の安全と健康を優先することを怠り、いまだに、「100ミリシーベルト以下の電離放射線が健康に有害であることは実証されていない」という科学的に不正な見解を推進しつづけている。

住民の放射線被ばくについての重要なデータが公表された。データは、2012年から、5万人以上の福島県・伊達市民を対象にして行われたガラスバッジ個人線量計モニタリングによる個人外部被ばく線量測定をベースにしたものである。福島市の東北に位置する伊達市は、福島第一原発から50キロ以上離れていて、市は最も放射能汚染された地域には含まれない。発表された2本の論文はいくつかの重大な調査結果を提供している:

★ ガラスバッジ個人線量計で測定された外部被曝線量が同時期に行われた航空機によるモニタリング調査によって得られたガラスバッジ装着者の住居の周辺線量と比例した;[4] 〈*訳注5〉

★ 除染による個人線量の低減効果は見られなかった;

★ 最近、論文の第一著者(早野龍吾教授)が、論文にある生涯被ばく線量の計算を1/3に過小評価していた誤りがあったことを認めた。[5][6] これを計算に入れると、伊達市の3つに分割された区域 *(区域A、区域B、区域C)における住民の生涯被ばく線量の平均値の範囲は、33mSvから54mSvとなり、99パーセンタイル値の範囲は、60mSvから105 mSvとなる。これらは、実際の被ばく線量測定に基づいた、かなり高い被ばく線量であり、最も汚染された地域外に住む住民を対象に推定された通例の被ばく線量よりはるかに高い。

― 遺憾ながら、この調査が進められたプロセスに関して、非常に深刻な倫理規範的問題があったという事実が浮かび上がった。[7] 〈*訳注6〉

2018年9月までに、日本の復興庁が確認した福島第一原発事故関連死の死者数は2202人であった。主な死因は自殺や医療が中断された事などとなっている。しかしながら日本では、原子力災害がもたらす住民への健康影響をモニターするための、包括的で長期的な将来も考慮に入れたメカニズムが確立されていない。目を背けたら、何も見つけ出すことはできないのだ。日本の断片的で不完全ながん登録の特徴に鑑みれば、被ばくによる健康影響が見つかることはないであろうという可能性が強い。

原発事故発生当時、18歳以下だった福島県民を対象に実施されている超音波エコーによる甲状腺スクリーニング検査は、特別なケースであるとみなされるかもしれない。甲状腺スクリーニング検査において、2018年12月までに、穿刺細胞診で悪性疑いと診断されたのは207人であった。その内、手術を受けて甲状腺がんと診断確定されたのは166人であった。独立した研究調査が行った福島県の甲状腺検査の分析は〈*訳注7〉:「スクリーニング効果というものはある。しかし、福島の非常に高い小児甲状腺がん発症率は、福島県の放射能汚染度をそのまま反映したものであり、日本全国の年間発生率よりも、はるかに高く、スクリーニング効果では説明できそうにないこと[8]」および「術後病理診断で、手術症例の92%にリンパ節転移、遠隔転移、甲状腺外浸潤があったことが判明したこと[9]」を指摘した。

しかし、甲状腺スクリーニングのプログラムが縮小される動きがあり、データの公開も時宜的でなく透明性に欠ける: 福島医科大学外で診断もしくは治療された症例がデータに含まれていない。さらに、甲状腺検査の受診率が低下している。 これは、甲状腺スクリーニング・プログラムに対する人々の信頼感が低下していることを反映しているようである。3巡目の甲状腺検査における受診率は、1次検査および2次検査においても、60パーセント台に低下し、その内、18歳以上の受診対象者の受診率は16%のみであった。[10]

その他 動物や植物への影響

調査された、ほとんど全ての動植物種類および生態群集において、有害な生物影響の証拠が放射能汚染度と正比例して累積しつづけている。この現象に、放射能汚染度の明白なしきい値は見られないー調査されたのは、チェルノブイリと福島の汚染地域における土壌細菌、樹木菌、種々様々な昆虫類、蜘蛛類、種々の鳥類、大型/ 小型の哺乳類などである。福島第一原発から30キロ圏内の福島海岸沿いの潮間帯においては、動植物種類の数や軟体動物の総数が、ずっと少なくなる。放射線の影響がはっきりと観察されるのは、殆どが、放射能汚染度の範囲が年間で1ミリグレイ~10ミリグレイ(1-10mGy/y)の地域においてである。放射線の人体影響と同じように、放射線が生態系にもたらす影響を知れば知るほど、その有害性がますます明らかになってくるようだ。

これを課題に、ティモシー・ムソーとアンダース・メラーが多くの重要な調査を行っている。[11] 彼らは、ありとあらゆる生物学的レベルにおける影響を記録したのである。これらの影響には、遺伝子突然変異の増加;発育異常、アルビノ(白化)、形態の非対称、縮小した脳のサイズ、白内障、低下した生殖力および減少した精子数、異常・不動精子の増加;腫瘍の増加;生物の行動異常 (鳥の鳴き声の変化など);個体数および生物多様性の減少などが含まれている。ティモシー・ムソーとアンダース・メラーの知見は、ありとあらゆる環境ストレス要因 (生物的・非生物的ストレス)のもとで生きる個体群の電離放射線に対する脆弱度が、従来の実験室をベースにした方法で推定される脆弱度よりも、だいたい10倍高いことを示している。

「人類は同じような悪影響をなんとか免れるだろう」というのは、生物学上、信じ難いことである。

人権問題について

2012年、「健康に生きる権利の実現化」に関する調査報告を任務としたアナンド・グローバー国連特別報告者が福島を訪れ、国連人権理事会にあてた報告書の中で多数の勧告を提起した。

〈*訳注8〉

国連特別報告者の勧告は下記の点を含んでいる:

(1)独立した、原子力産業の監視および規制。

(2)単に距離をベースにするのではなく、被ばく線量を規準にした(ホットスポットを含める)、公衆と避難のための正確な情報を提供する。

(3)政府は、放射線リスクについて偏りのない情報を提供する。

(4)いつまでに年間の追加被ばく線量を1mSvに低減することを達成すべきか、その期限を策定する。

(5)全ての放射能汚染地域の住民を対象にした包括的/長期的な健康管理調査を実施する。

(6)患者が自分たちの検査結果および健康情報を容易に入手できるようにする。

(7)原子力作業員の放射線による健康への影響を長期的にモニタリングし、必要な治療を提供する。

(8)被災者が、放射能汚染地域に留まるかーそれとも避難するかー何れの選択をしたにしても、被災者に経済援助を提供する。

(9)原子力災害のコストは納税者が支払うのではなく、東電が支払うべきである。

(10)避難所の計画、健康管理調査、除染の実施など、災害後の全面的な管理の計画策定に一般市民が参画する。

日本政府は、国連人権理事会がフクシマ被ばく問題に注意を払い、かかわったこと、および、国連特別報告者の重大な勧告に対し敵対的な態度を示し、ほとんどの勧告を履行しなかった(一例:現在、労働者の健康状態を調査する疫学的研究は進行中である)。〈*訳注9〉また、政府は、2013年に公表されたWHO (世界保健機関) の「フクシマ原子力災害健康リスク評価報告書」に対しても敵対的であり、この報告書の重要性を弱めようと努めた。

2017年、国連人事理事会による日本の人権状況の定期審査で、複数の国の政府代表者が、日本政府に、福島第一原発事故をめぐる対応について人権侵害の是正勧告をした:[12] 〈*訳注10〉

- オーストリアの勧告:福島の高放射線地域からの自主避難者に対して、住宅、金銭その他の生活援助や被災者、特に事故当時子どもだった人への定期的な健康モニタリングなどの支援提供を継続すること。

- ポルトガルの勧告:男性及び女性の両方に対して再定住に関する意思決定プロセスへの完全かつ平等な参加を確保するために、福島第一原発事故の全ての被災者に国内避難民に関する国連指導原則を適用すること。  ( *避難者の強制帰還はこれらの指導原則に反している )

- ドイツの勧告:特に許容放射線量を年間1ミリシーベルト以下に戻し、避難者及び住民への支援を継続することによって、福島地域に住んでいる人々、特に妊婦及び児童の最高水準の心身の健康に対する権利を尊重すること。

- メキシコの勧告:福島原発事故の被災者及び何世代もの核兵器被害者に対して、医療サービスへのアクセスを保証すること。

日本政府は、「これらの勧告をフォローアップすることを受け入れる(しかし核兵器被害者の子孫、後世ための特別な医療サービスは保証しない)」と、応えたが、まだ、なんの対応策も講じられていない。〈*訳注11〉

きわめて重要なのは:公衆衛生/保健医療に係わる国際的機関・コミュニティーが、災害に関連して進行中である保健医療のニーズをモニターすること、これらのニーズに取り組むための手段、リソース、その他の方策を提唱すること、日本で公衆衛生および環境衛生のために働く人々の努力を支援すること、である。

我々は、フクシマ原子力災害の教訓、そして、原子力災害によってもたらされた影響、ニーズを明らかにするために、2020年東京オリンピックを利用すべきである。さらに、我々は、これらの事実が隠蔽されたままにならないよう、確かめ、留意していかねばならない。

以上

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〈*訳注1〉規制の虜(英:Regulatory Capture): 規制機関が被規制側の勢力に実質的に支配されてしまうような状況であり、この状況下では、被規制産業が規制当局をコントロールできてしまう余地がありうる。国会事故調査委員会は、福島第一原発事故を人災と断言し、その根本的原因は政・官・財の一体化から生まれた「規制の虜」にあるとして、国民のいのちを守ることより”原子力ムラ”の利益を優先して安全対策を先送りにしたと明言した。(ソース:規制の虜は克服されたか)

〈*訳注2〉国会事故調査委員会の報告書

〈*訳注3〉安倍首相のIOC総会におけるプレゼンテーションの翻訳は首相官邸ウェブサイトを参照:

〈*訳注4〉参照記事:東京五輪招致汚職容疑、JOC竹田会長を訴追手続きーBBC報道

〈*訳注5〉参照文献:宮崎真氏・早野龍五氏 共著論文の和訳「パッシブな線量計による福島原発事故後5か月から51か月の期間における伊達市民全員の個人外部被曝線量モニタリング:2. 生涯にわたる追加実効線量の予測および個人線量にたいする除染の効果の検証」(和訳者:黒川眞一)

〈*訳注6〉参照記事:朝日新聞「市民の被曝線量、3分の1に過小評価 東大名誉教授論文」

〈*訳注7〉独立した研究調査が行った福島県の甲状腺検査の分析:2016年5月に”Epidemiology(疫学)”に掲載された論文”Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014(〈2011年から2014年の間に福島県の18歳以下の県民から超音波エコーにより検出された甲状腺がん” 第一著者:津田敏秀教授 論文(英文)

〈*訳注8〉アナンド・グローバー国連特別報告者の報告書「健康に対する権利」和訳

〈*訳注9〉グローバー報告に対する日本政府の見解・コメント(日本語仮訳)

〈*訳注10〉福島第一原発事故をめぐる対応について人権侵害の是正勧告ー4ヶ国の勧告の翻訳は外務省サイトに掲載された「日本政府審査・結果文書」を参照:

〈*訳注11〉外務省サイトに掲載された「日本政府審査・勧告に対する我が国対応(仮訳)」

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参考文献

[1] Kurokawa K, NInomiya AR. Examining regulatory capture: looking back at the Fukushima nuclear power plant disaster, seven years later. University of Pennsylvania Asian Law Review 2018;13(2), Article 2. https://scholarship.law.upenn.edu/alr/vol13/iss2/2/

[2] Panja T, Tabuchi H. Japan’s Olympics chief faces corruption charges in France. New York Times, 11 Jan 2019. https://www.nytimes.com/2019/01/11/world/europe/japan-olympics-corruption-tsunekazu-takeda.html

[3]Schneider M, Froggatt A et al. The world nuclear industry status report 2018. https://www.nytimes.com/2019/01/11/world/europe/japan-olympics-corruption-tsunekazu-takeda.html

https://www.worldnuclearreport.org/IMG/pdf/20180902wnisr2018-lr.pdf

[4] Miyazaki M, Hayano R. Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): 1. Prediction of lifetime additional effective dose and evaluating the effect of decontamination on individual dose. J Radiol Prot 2017;37:623-34. https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/aa6094/meta

[5] Miyazaki M, Hayano R. Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): 1. Comparison of individual dose with ambient dose rate monitored by aircraft surveys. J Radiol Prot 2017;37:1-12. https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/37/1/1/meta

[6] Kurokawa S. Professor Emeritus Kurokawa sets straight dishonesty and misrepresentation in the “statement” by Ryugo Hayano, the author of the radiation dose study with alleged misconduct. Fukushima Voice Version 2E. 11 Fe 2019. http://fukushimavoice-eng2.blogspot.com/2019/02/shin-ichi-kurokawa-sets-straight.html

[7] Kurokawa S, Shima A. A Glass Badge Study That Failed and Betrayed Residents —A Study with Seven Violations of Ethical Guidelines Can Be No Ground for Government Policies. Kagaku. 2019;89(2):e0017-e0024.

https://www.iwanami.co.jp/kagaku/eKagaku_201902_Kurokawa_Shima.pdf

[8] Tsuda T, Tokinobu A, Yamamota E, Suzuki E. Thyroid cancer detection by ultrasound among residents ages 18 years and younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014. Epidemiology 2016;27: 316–22.

[9] Tsuda T, Tokinobu A, Suzuki E. Thyroid cancer under age 19 in Fukushima – as of 57 months after the accident. Presentation at International IPPNW Congress, 5 years living with Fukushima, 30 years living with Chernobyl, Berlin, 27 Feb 2016. http://www.tschernobylkongress.de/fileadmin/user_upload/T30F5/P1_Tsuda_pres_final.pdf

[10] Hiranuma Y. Fukushima thyroid examination December 2018: 166 surgically confirmed as thyroid cancer among 207 cytology suspected cases. 10 Jan 2019. http://fukushimavoice-eng2.blogspot.com/2019/01/fukushima-thyroid-examination-december.html

[11] Mousseau TA, Møller AP. Nuclear energy and its ecological byproducts: Lessons from Chernobyl and Fukushima. In: van Ness P, Gurtov M (eds.). Learning from Fukushima. Nuclear power in East Asia. Acton; ANU Press, 2017: 261-83. https://press.anu.edu.au/publications/learning-fukushima Released in Japanese on 13 Feb 2019: https://press.anu.edu.au/learning-fukushima-now-published-japanese

[12] Human Rights Council. Report of the Working Group on the Universal Periodic Review. Japan. 4 Jan 2018. UN Document A/HRC/37/15. https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G18/002/35/PDF/G1800235.pdf?OpenElement

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