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鉄道・運輸機構の剰余金1.2兆円を鉄道・交通政策に!

2010-09-24 23:46:49 | 鉄道・公共交通/交通政策
<鉄道建設機構>余裕1.2兆円も 検査院が国庫納付求める(毎日新聞)

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 独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の利益剰余金から将来に必要な費用を差し引いても、1兆2000億円もの余裕があることが会計検査院の調査で分かった。検査院は24日、余裕のある資金を国庫に納付するよう国土交通省に求めた。1兆2000億円もの指摘金額は過去最高。検査院が昨年指摘した不適切な経理や無駄遣いは計717件総額約2364億円で、その5倍になる。

 対象となるのは国鉄清算業務の利益剰余金。検査院が08年に多額の剰余金が存在することを公表し、今年4月の行政刷新会議の事業仕分けで取り上げられ、国庫に納めるよう求められた。検査院は09年度末で1兆4534億円に上る利益剰余金のうち、いくら国庫に戻せるか分析した。

 国鉄清算業務では、JR東日本、西日本、東海の3社の株式や旧国鉄用地の売却益などで得た収入を、旧国鉄職員の年金や業務災害の補償費などに使い、余りを積み立てている。検査院が年金を含め将来必要となる経費を試算したところ、年金受給者の数が減る一方、JR3社に売却した新幹線施設の代金が今後も分割され収入として入ることから、積立金を2500億円ほど残せば事業を安定して継続できると判断。差額の1兆2000億円は必要ないとした。清算業務には現在、利益剰余金を国庫に納めるための法律の規定がないため、法改正も必要となる。

 剰余金を国庫に返納することについて、JR各社は今年7月、「JR北海道や貨物など経営がまだ自立していない社もあり、剰余金は返納ではなく、経営基盤強化などに充ててほしい」との要望書を国交省に出している。

 国交省鉄道局財務課は「政府に加え国会での議論も必要になる。機構の剰余金を国庫に納めるか、鉄道政策に使うか、行政だけでは決められない」としている。【桐野耕一】
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「鉄道・運輸機構は、巨額の剰余金を国庫返納すべし」という会計検査院の指摘は、筋論としては理解できる。この剰余金は、元を質せば国有財産だからである。

旧国鉄は、1949年の日本国有鉄道法施行に伴い、旧運輸省鉄道総局が行っていた官営鉄道事業が公共企業体として分離され発足した。国鉄の資産は、このとき政府が国鉄に出資(現物出資・現金出資)したものである。その後、「分割民営化」により国鉄資産はJR各社と国鉄清算事業団に引き継がれた。このうち、国鉄清算事業団が保有する現金資産(JR株式の売却益を含む)がこの剰余金の正体である。元々国有財産だったのだから、国に返納せよ、というのはその通りだし、会計検査院としてそれを指摘するのは職責でもあろう。

一方、1986年、国鉄分割民営化のための関連法案が審議されていた参議院国鉄改革に関する特別委員会で、法案可決に当たって行われた付帯決議(参考資料:国会会議録)の二として「各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと」が掲げられている。

これは、国鉄の解体によって、大規模な自然災害の際の復旧工事費や安全投資のための資金拠出が困難になることが予想されたため、政府にそのための財政措置を講ずるよう求めたものだが、結果的に、この付帯決議は実行されなかった。災害によって鉄道の復旧が必要となった際に、鉄道会社からの申請でその都度、復旧費を手当てするという場当たり的な対応が続けられ、鉄道会社が災害復旧のため、いつでも引き出して使えるような恒久的財源としての災害復旧基金は、ついに創設されることなく今日まで来てしまったのである。

その結果、旧国鉄特定地方交通線転換第三セクター鉄道の中にも、高千穂鉄道のように災害からの復旧ができないまま廃止に追い込まれるものが出始めた。そして何より、災害復旧費の政府からの拠出がほぼ受けられないJRでは、ローカル線が災害で不通となるたびに、復旧に数年もかかるような事態が現実のものとなったのである。

当ブログ管理人が記憶する限りでも、1990年の豊肥本線の水害では復旧に2年半近くを要したほか、95年に発生した大糸線の水害では2年以上、最近のものに限っても、越美北線は2年以上、高山本線はほぼ3年近くかかっている。

公共交通である鉄道で、これほど長い期間不通が続くことが地域社会に与えるダメージは決して小さくない。復旧に時間を要する路線は地理的条件の厳しい地方の山間部であることが多く、JRの鉄道が唯一の生命線という地域がほとんどであるからだ。

国鉄解体から23年が経過し、今、JRの多くの地方交通線は、地方の衰退と人口減少により、当時の特定地方交通線と同程度かそれ以下の営業成績に落ち込んでいる。こんな話はしたくないが、もし、国鉄再建法の特定地方交通線選定基準(輸送密度~1日1キロメートルあたり輸送人員~4000人未満)を現在のJR線に当てはめて「特定地方交通線の第2次選定」を行うとしたら、JRの地方交通線の半分は消えかねないというところまで追いつめられている。今年7月から土砂崩れで不通が続いている岩泉線(岩手県)に至っては、2005年度の輸送密度がたったの85人に過ぎないのだ。この数字は、鉄道はおろか、マイクロバスでさえ輸送力を持て余すような恐るべき数字である。岩泉線をもし廃止して代替交通に転換するとしたら、恐らくタクシーでも間に合うだろう。

こんなローカル線を全国のあちこちに抱えながら、JR各社は「特定地方交通線の廃止や三セク引き継ぎで身軽になった」という理由で補助金の支給対象から外され、ローカル線の復旧も原則として自前で資金調達して行わなければならない。私たち市民がそれを「公共交通なのだから当然」のひとことで片付けることは簡単だが、この状態で災害復旧のための資金をいったいどこから出せというのだろうか。

鉄道・運輸機構に1兆円もの財源があるというのは、ある意味奇跡だし、千載一遇のチャンスである。民主党政権ごときに1兆円くれてやっても、どうせロクなことに使わないのは目に見えている。この剰余金を全国の鉄道事業者が安全を向上させ、あるいは自然災害からの鉄道の復旧を図るために引き出して使える基金に改組することこそ、鉄道の未来を見据えた真の交通政策といえよう。

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