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思春期の子どもの発想と行動を予見して親は対処せよ、と。

2016-06-27 11:53:21 | 読書ノート
フランシス・ジェンセン, エイミー・エリス・ナット『10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか』野中 香方子訳, 文藝春秋, 2015.

  精神医学をベースにした育児本。著者のジェンセンは米国の小児科医で大学教授、かつシングルマザーで二人の息子を育てたという(で、息子二人はエリート職に就いているとも)。もう一人のナットは向こうでは著名なジャーナリストのようだが、日本でいう「語りおろし本」の編集者兼ライターみたいな役割のようで、表には出てこない。ジェンセンの育児体験談や彼女に寄せられた育児相談を挟んで、10代の脳や神経がどう働くかを解説し、それを踏まえて親や教師にアドバイスをするという内容となっている。

  10代の脳はまだ未完成であり、感情や欲望の面でコントロールがきかないというのがその基本的な主張。そのメカニズムの話は詳細だが、具体的な育児アドバイスの方はそんなに目新しいものではない。依存症になりそうなものを避けよ、というのがその大半で、煙草、アルコール、薬物、デジタル機器などの害悪が中盤で長々と説かれる。この他、睡眠不足の害、ストレスの害、スポーツでの脳震盪の害への言及などがある。統合失調症や男女差、少年犯罪の量刑などのトピックもあるが、これらは十分な考察であるとはいえない。

  「これこれは脳に害がある。なので子どもから遠ざけたほうがよい」とはいうものの、子どもも10代になってしまえば親の言うことなんか聞いてくれないことも多い。著者は親が誠実に対応すれば子どもが心を開くはずというニュアンスで述べているが、甘いんじゃないかな。平気で親をだます子どももいる。この点で、親子関係よりも「子どもの友人」による影響を大きく考えているスタインバーグ著の方が優れていると思った。まあ「ながら勉強では頭に入らない」など、役に立つアドバイスがないわけではない。
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