山内貴範『ルポ書店危機』Blueprint, 2024.
全国小売書店の状況についてのルポルタージュ。著者は1985年生まれのジャーナリストで、前半1/3は彼の出身地にある秋田県羽後町の書店の店主のインタビューである。中盤は全国10か所の書店状況のルポ。最後の1/3は図書館や公設書店の八戸ブックセンター、コンビニや小規模出版社などについてである。小売書店業界全体としての解決策はないけれども、個々の書店の生き残りのヒントならば見つけることができるかもしれない。書店関係者でなくても、出版界の置かれた状況を手っ取り早く知ることができる。
月刊『創』編集部編『街の書店が消えてゆく』創出版, 2024.
雑誌『創』では2019年頃から書店の危機を報道してきた。本書はそれら記事をまとめたものだが、いくつか初出記事もある。日書連といった団体の役員から、大規模チェーン店、小規模な個人経営店、独立系書店など、さまざまなタイプの関係者に取材を行っている。ただし、この業界でキーになるのが取次業者なのだが、『2028年街から書店が消える日』と同様に、発言がないのが気になるところ(取材を断っている?)。寄稿者の一人である松木修一氏はトーハン出身だが、JPIC専務理事という立場で書いている。全体としては「書店の終わりの記録」という印象が強い。
小林一博『出版大崩壊:いま起きていること、次にくるもの』イースト・プレス, 2001.
1990年代以降の出版の危機を伝える。日本の出版産業の売上のピークは統計上1996年であるとされているが、著者はそれは怪しいという。1980年代から書店の出店ブームがあり、さらに1990年代になると大型書店が現れるようになった。この時期、書店の数が増えてかつ敷地が広くなった分、書店在庫も拡大した。すなわち、1990年代前半の書籍・雑誌の売上の伸びは、書店在庫分が売上として会計上で計算されていたためであり、実際には売れていなかった、とする。著者は出版産業の売上が減少に転じたのは1989年あたりからだと見積もっている(p.92-96)。したがって、図書館の普及やAmazon到来以前に出版流通制度に構造的な問題があったわけで、著者もやはりそこに手をつけろと主張している──再販価格の維持を支持するけれども、書店の取り分を多くすることと買切り制とすること。20年以上前の書籍で、古さもあるけれども、有益な示唆も多かった。
全国小売書店の状況についてのルポルタージュ。著者は1985年生まれのジャーナリストで、前半1/3は彼の出身地にある秋田県羽後町の書店の店主のインタビューである。中盤は全国10か所の書店状況のルポ。最後の1/3は図書館や公設書店の八戸ブックセンター、コンビニや小規模出版社などについてである。小売書店業界全体としての解決策はないけれども、個々の書店の生き残りのヒントならば見つけることができるかもしれない。書店関係者でなくても、出版界の置かれた状況を手っ取り早く知ることができる。
月刊『創』編集部編『街の書店が消えてゆく』創出版, 2024.
雑誌『創』では2019年頃から書店の危機を報道してきた。本書はそれら記事をまとめたものだが、いくつか初出記事もある。日書連といった団体の役員から、大規模チェーン店、小規模な個人経営店、独立系書店など、さまざまなタイプの関係者に取材を行っている。ただし、この業界でキーになるのが取次業者なのだが、『2028年街から書店が消える日』と同様に、発言がないのが気になるところ(取材を断っている?)。寄稿者の一人である松木修一氏はトーハン出身だが、JPIC専務理事という立場で書いている。全体としては「書店の終わりの記録」という印象が強い。
小林一博『出版大崩壊:いま起きていること、次にくるもの』イースト・プレス, 2001.
1990年代以降の出版の危機を伝える。日本の出版産業の売上のピークは統計上1996年であるとされているが、著者はそれは怪しいという。1980年代から書店の出店ブームがあり、さらに1990年代になると大型書店が現れるようになった。この時期、書店の数が増えてかつ敷地が広くなった分、書店在庫も拡大した。すなわち、1990年代前半の書籍・雑誌の売上の伸びは、書店在庫分が売上として会計上で計算されていたためであり、実際には売れていなかった、とする。著者は出版産業の売上が減少に転じたのは1989年あたりからだと見積もっている(p.92-96)。したがって、図書館の普及やAmazon到来以前に出版流通制度に構造的な問題があったわけで、著者もやはりそこに手をつけろと主張している──再販価格の維持を支持するけれども、書店の取り分を多くすることと買切り制とすること。20年以上前の書籍で、古さもあるけれども、有益な示唆も多かった。