松塚ゆかり『概説教育経済学』日本評論社, 2022.
教育経済学の教科書。著者は一橋大学の先生。この分野について日本語で読める概説書というのは、ありそうながら実際はこれまでなかった。いくつかのトピックについては個人的にときおり目にしたことがあったが、本書では議論が整理されていて、かつ現状どこまで議論が進んでいるのかを理解できてとても有益である。
教育経済学の基本的な問いは次のようなものだ(と勝手に解釈してみる)。教育の効果とは何か。教育の利益を受けるのは個人か、企業か、国か。そしてどの主体が教育に出資すべきか、あるいはどのような割合で負担を分け合うべきか。本書もまた、これらの疑問について理論と実証研究によってアプローチしている。
最初の章は「教育経済学」というコンセプトの説明である。以降、教育の効果は誰に帰するのか、およびその測定方法について論じられ、続いて人的資本論、シグナリング論、教育の過剰問題について、データを交えつつ議論される。中盤は、学校卒業後の学習(研修や労働訓練など)、教育費の公費負担をめぐる議論、教育の民営化、学校選択、女子教育について議論される。終りのほうの章では、生涯学習と高学歴者の国際移動が俎上にのせられている。
僕は教育学科に所属しているが、教育学領域できちんと考えられていないテーマが費用負担である。そこでは「お金は国や自治体が出せ」という単純な主張に落ち着きがちだ。が、教育経済学ではそういう安易さが無いところがいい。特に第6章の公費負担の議論は、公共図書館への支出にも通じる議論で、図書館情報学研究者として興味深かった。
教育経済学の教科書。著者は一橋大学の先生。この分野について日本語で読める概説書というのは、ありそうながら実際はこれまでなかった。いくつかのトピックについては個人的にときおり目にしたことがあったが、本書では議論が整理されていて、かつ現状どこまで議論が進んでいるのかを理解できてとても有益である。
教育経済学の基本的な問いは次のようなものだ(と勝手に解釈してみる)。教育の効果とは何か。教育の利益を受けるのは個人か、企業か、国か。そしてどの主体が教育に出資すべきか、あるいはどのような割合で負担を分け合うべきか。本書もまた、これらの疑問について理論と実証研究によってアプローチしている。
最初の章は「教育経済学」というコンセプトの説明である。以降、教育の効果は誰に帰するのか、およびその測定方法について論じられ、続いて人的資本論、シグナリング論、教育の過剰問題について、データを交えつつ議論される。中盤は、学校卒業後の学習(研修や労働訓練など)、教育費の公費負担をめぐる議論、教育の民営化、学校選択、女子教育について議論される。終りのほうの章では、生涯学習と高学歴者の国際移動が俎上にのせられている。
僕は教育学科に所属しているが、教育学領域できちんと考えられていないテーマが費用負担である。そこでは「お金は国や自治体が出せ」という単純な主張に落ち着きがちだ。が、教育経済学ではそういう安易さが無いところがいい。特に第6章の公費負担の議論は、公共図書館への支出にも通じる議論で、図書館情報学研究者として興味深かった。