渋武容『日本の航空産業:国産ジェット機開発の意味と進化するエアライン・空港・管制』(中公新書), 中央公論, 2020.
飛行機の機体開発、航空ビジネス、空港と管制について一般向けに解説する内容。「日本の」とあるが、航空産業は欧米でより発展しているので、国外の動向についても詳しい。もともとは東京大学大学院の講義録だそう。著者は、国土交通省の元官僚で、現在は東大で特任教授をしているとのこと。
副題にあるように、話のまくらは現在開発中の国産ジェット機のMRJ。報道では「納期が遅れている」など悪いニュースしか聞かないMRJだが、本書では今後の期待があるかのように描かれている。なんでも、ジャンボジェット機の機体の市場はエアバスとボーイングの大手二社で争われていてニッチがまったくないけれども、その下のクラスのリージョナル・ジェットの市場は成長途上でもありまだ参入の余地があるという。これに絡めて、機体開発産業および安全性の認証システム、エアライン会社の戦略動向や搭乗者数の拡大など航空路線をめぐるビジネス、空港ビジネスと管制システムがどうなっているのかなどについて章を設けて解説している。
航空産業に関わる幅広いトピックがカバーされていて、全体像をつかむにはよいのではないだろうか。ただし、類書を読んだことがないのでトピックにもれがないかどうかはわからない。もとは工学系院生向けの講義であるものの、ビジネスや制度的なところはくわしい一方で、技術的なところはあまり詳しくないような印象がある。頁数の都合で端折った、それらトピックは専門の先生がいるので彼らから学んでくださいということなんだろう。ただまあ、MRJの評価はこれでいいんだろうかという疑問も残る。それとも報道のほうがネガティヴなバイアスに満ちているのか。納期の遅れは事実のようだけれども。
MRJを開発しているという三菱重工の工場はイチロー生誕の地として知られる(?)愛知県豊山町にある。僕の故郷の小牧市の南と豊山町にまたがって県営名古屋空港があり、滑走路は航空自衛隊・小牧基地と共有されている。その隣接地に三菱重工の「航空宇宙システム製作所」小牧南工場があるのだ。実家に帰省した際に、空港のショッピングセンターを訪れたりするときに通り過ぎる位置にある。僕が子どものころ、あそこの三菱重工と言えば、自衛隊機を修理・生産(ただし戦闘機の設計は米国でありライセンスによる生産)するところだと聞かされていた。民間機も作るという話がでてから、もう20年近くになるはずだが…。本書を読んでその大変さはわかった。
飛行機の機体開発、航空ビジネス、空港と管制について一般向けに解説する内容。「日本の」とあるが、航空産業は欧米でより発展しているので、国外の動向についても詳しい。もともとは東京大学大学院の講義録だそう。著者は、国土交通省の元官僚で、現在は東大で特任教授をしているとのこと。
副題にあるように、話のまくらは現在開発中の国産ジェット機のMRJ。報道では「納期が遅れている」など悪いニュースしか聞かないMRJだが、本書では今後の期待があるかのように描かれている。なんでも、ジャンボジェット機の機体の市場はエアバスとボーイングの大手二社で争われていてニッチがまったくないけれども、その下のクラスのリージョナル・ジェットの市場は成長途上でもありまだ参入の余地があるという。これに絡めて、機体開発産業および安全性の認証システム、エアライン会社の戦略動向や搭乗者数の拡大など航空路線をめぐるビジネス、空港ビジネスと管制システムがどうなっているのかなどについて章を設けて解説している。
航空産業に関わる幅広いトピックがカバーされていて、全体像をつかむにはよいのではないだろうか。ただし、類書を読んだことがないのでトピックにもれがないかどうかはわからない。もとは工学系院生向けの講義であるものの、ビジネスや制度的なところはくわしい一方で、技術的なところはあまり詳しくないような印象がある。頁数の都合で端折った、それらトピックは専門の先生がいるので彼らから学んでくださいということなんだろう。ただまあ、MRJの評価はこれでいいんだろうかという疑問も残る。それとも報道のほうがネガティヴなバイアスに満ちているのか。納期の遅れは事実のようだけれども。
MRJを開発しているという三菱重工の工場はイチロー生誕の地として知られる(?)愛知県豊山町にある。僕の故郷の小牧市の南と豊山町にまたがって県営名古屋空港があり、滑走路は航空自衛隊・小牧基地と共有されている。その隣接地に三菱重工の「航空宇宙システム製作所」小牧南工場があるのだ。実家に帰省した際に、空港のショッピングセンターを訪れたりするときに通り過ぎる位置にある。僕が子どものころ、あそこの三菱重工と言えば、自衛隊機を修理・生産(ただし戦闘機の設計は米国でありライセンスによる生産)するところだと聞かされていた。民間機も作るという話がでてから、もう20年近くになるはずだが…。本書を読んでその大変さはわかった。