以下のニュースを見て、10 年ほど前にも似たような議論があったことを思い出した。
『文藝春秋』(2000年12月号)の掲載記事“図書館は「無料貸本屋」か”で、著者の林望は、書籍が発行されてから90日間の貸出禁止を求めていた。このエッセイは大きな反響を巻き起こしたが、結局図書館側はそれを受け入れなかったので、公共貸与権の導入という議論にスライドしていった。その後「公共貸与権が導入されるだろう」という噂を耳にしつつ何も変化しないまま現在に至っている。
上の提案には「公共図書館での貸出によって売上は減少する」という認識がベースにある。個人的にはそうだろうと思うが、異論もいくつかあった。10年前の論争では「図書館の購入が直接の売り上げを支えている」「図書館での閲覧が書籍購入の契機となっている」という意見も出た。なかなか影響関係を証明/否定する調査のデザインを考えるのは難しいのだが、学者の端くれとして図書館所蔵が書籍市場にどの程度影響するのかは確かめたいと考えている。そう思いつつもう10年経ってしまったのだけれども。
図書館貸し出しに「待った」 作家樋口さんが自著で要望
作家樋口毅宏さんが25日発売の新刊小説「雑司ケ谷R.I.P.」(新潮社)の巻末に、公立図書館に対して貸し出しを半年間猶予するよう求める文章を掲載した。作家が図書館での貸し出し制限を自著で要望するのは異例。
文章は「公立図書館のみなさまへ」と前置きした上で、工事現場の作業員風の男性が頭を下げるイラストとともに「八月二五日まで、貸し出しを猶予していただくようお願い申し上げます」と記されている。
新潮社の担当者は「発売直後に図書館で貸し出されると売り上げに影響するため、樋口さんから文書の掲載を依頼された」としている。
日本文芸家協会は、図書館での無料貸し出しに対して著者に補償金が支払われる制度の導入を国に求めている。
日本図書館協会の松岡要事務局長は「樋口氏の主張は理解できる部分もあるが、全ての人に本を読む機会を提供する図書館の公共性を考えると受け入れがたい。法的にも貸し出すことに問題はない」と話している。
2011/02/25 18:48 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022501000717.html
『文藝春秋』(2000年12月号)の掲載記事“図書館は「無料貸本屋」か”で、著者の林望は、書籍が発行されてから90日間の貸出禁止を求めていた。このエッセイは大きな反響を巻き起こしたが、結局図書館側はそれを受け入れなかったので、公共貸与権の導入という議論にスライドしていった。その後「公共貸与権が導入されるだろう」という噂を耳にしつつ何も変化しないまま現在に至っている。
上の提案には「公共図書館での貸出によって売上は減少する」という認識がベースにある。個人的にはそうだろうと思うが、異論もいくつかあった。10年前の論争では「図書館の購入が直接の売り上げを支えている」「図書館での閲覧が書籍購入の契機となっている」という意見も出た。なかなか影響関係を証明/否定する調査のデザインを考えるのは難しいのだが、学者の端くれとして図書館所蔵が書籍市場にどの程度影響するのかは確かめたいと考えている。そう思いつつもう10年経ってしまったのだけれども。