ローレンス・スタインバーグ『15歳はなぜ言うことを聞かないのか?:最新脳科学でわかった第2の成長期』阿部寿美代訳, 日経BP社, 2015.
10代の子どもについて解説した発達心理学の一般書籍。思春期の子どもをどう指導したらよいのかについて、親や教師に対してのアドバイスもある。原書はAge of opportunity : lessons from the new science of adolescence (Mariner Books, 2009)である。特に15歳に焦点を当てる内容でもなく、反抗期が主題でもないので、邦題は少々誤解を与えるものだ。著者は米国発達心理学者である。
先進国においては、栄養状態の改善によって思春期がかつてより早く始まり、進学率の上昇によって20代半ばまで修行時代が続く。この時期は、乳幼児期とはまた異なる領域において、脳の可塑性が高まることが明らかになっているとのこと。このチャンス溢れる期間に、子どもの自制心を鍛えるように学校制度および家庭教育を組織せよ、というのが著者の主張である。思春期の子どもでも、一人でじっくり考えれば大人と同様の冷静な判断をすることができる。ところが、同世代の者の視線があるとリスクテイクの閾値が下がって、馬鹿なことをしでかしやすいという。危険を冒して成功することができれば、仲間の評判を得ることができ、それが進化の上で繁殖上の有利さにつながったのではないかと著者は推測している。若者が暴走しないよう彼らの自制心を育てるべきとして、瞑想やエアロビクスが提案されている。ただ、そうそう精神力に頼れないので、環境のコントロールも提案されている。例えば、若者が運転するときは同世代の者を同乗させてはいけない(実際そういう法律を持つ州があるらしい)などの対策である。
以上。もはや流行りといってもよい「自制心」を扱いながら、思春期をその育成時期と置いた点が本書のポイントだろう。ただ、思春期に脳の可塑性が高まると述べられるものの、この年代向けの自制心育成プログラムがあまりよく検討されたものではないことは明らかで(効果があるのが瞑想とエアロビだけなんてことは無いだろう)、十分なメニューが提示されているわけではない。あと、あまり若者だけでつるむのは危険、というのが本書の教えなのだが、ではどのような選択アーキテクチャを作ったらよいか──露骨な禁止ではなく、試行錯誤を認めながら危険度を下げるようなもの──を考えるも重要な論点だ。うーん、でも思春期なのかなあ。幼児期に自制心を育成した方が低コストだろう、たぶん。
10代の子どもについて解説した発達心理学の一般書籍。思春期の子どもをどう指導したらよいのかについて、親や教師に対してのアドバイスもある。原書はAge of opportunity : lessons from the new science of adolescence (Mariner Books, 2009)である。特に15歳に焦点を当てる内容でもなく、反抗期が主題でもないので、邦題は少々誤解を与えるものだ。著者は米国発達心理学者である。
先進国においては、栄養状態の改善によって思春期がかつてより早く始まり、進学率の上昇によって20代半ばまで修行時代が続く。この時期は、乳幼児期とはまた異なる領域において、脳の可塑性が高まることが明らかになっているとのこと。このチャンス溢れる期間に、子どもの自制心を鍛えるように学校制度および家庭教育を組織せよ、というのが著者の主張である。思春期の子どもでも、一人でじっくり考えれば大人と同様の冷静な判断をすることができる。ところが、同世代の者の視線があるとリスクテイクの閾値が下がって、馬鹿なことをしでかしやすいという。危険を冒して成功することができれば、仲間の評判を得ることができ、それが進化の上で繁殖上の有利さにつながったのではないかと著者は推測している。若者が暴走しないよう彼らの自制心を育てるべきとして、瞑想やエアロビクスが提案されている。ただ、そうそう精神力に頼れないので、環境のコントロールも提案されている。例えば、若者が運転するときは同世代の者を同乗させてはいけない(実際そういう法律を持つ州があるらしい)などの対策である。
以上。もはや流行りといってもよい「自制心」を扱いながら、思春期をその育成時期と置いた点が本書のポイントだろう。ただ、思春期に脳の可塑性が高まると述べられるものの、この年代向けの自制心育成プログラムがあまりよく検討されたものではないことは明らかで(効果があるのが瞑想とエアロビだけなんてことは無いだろう)、十分なメニューが提示されているわけではない。あと、あまり若者だけでつるむのは危険、というのが本書の教えなのだが、ではどのような選択アーキテクチャを作ったらよいか──露骨な禁止ではなく、試行錯誤を認めながら危険度を下げるようなもの──を考えるも重要な論点だ。うーん、でも思春期なのかなあ。幼児期に自制心を育成した方が低コストだろう、たぶん。