廣光俊昭『哲学と経済学から解く世代間問題:経済実験に基づく考察』日本評論社, 2022.
経済学。将来世代のために現世代での強制貯蓄(≒増税あるいは資源保護)をしてもらうとしたら、どういうロジックを展開すればよいかについて検討している。理論レベルの議論ではあるが、世代間の合意の形成について検証するためにゲーム理論ベースの実験も行われている。数式ありの専門書で読者を選ぶ。著者は財務省所属の国家公務員である。
世代間で協力行動(≒先行世代による資源の食い潰しを止めること)を促すには、現世代の責任感に訴えるより、将来世代との間に互恵性があることを理解させるほうがよいという。そして、世代間での「互恵性の理解」を長続きさせるには、それぞれの世代で道徳教育を実施すること、また方法としては熟議がよいとのことである。
実験は本来ならば時代をまったく共有しない世代間で行われるべきものだが、本書では年齢は違えど同じ時代を共有している異なる世代の間の行動を観察したシミュレーション的なものとなっている。その結果について読者がどの程度説得力を感じるかであるが、反論する材料もないというところである。
最終的な結論は難しくないが、証明方法が難しい。結論を受け容れたとしても政策に適用するにはまだ先が長いという印象で、現世代が支配する民主制にどうタガをはめるかとか、実際にどのような形で強制貯蓄するかとか、残された議論は多い。その前段階にあたる理論構築のための作業という位置付けだ。
経済学。将来世代のために現世代での強制貯蓄(≒増税あるいは資源保護)をしてもらうとしたら、どういうロジックを展開すればよいかについて検討している。理論レベルの議論ではあるが、世代間の合意の形成について検証するためにゲーム理論ベースの実験も行われている。数式ありの専門書で読者を選ぶ。著者は財務省所属の国家公務員である。
世代間で協力行動(≒先行世代による資源の食い潰しを止めること)を促すには、現世代の責任感に訴えるより、将来世代との間に互恵性があることを理解させるほうがよいという。そして、世代間での「互恵性の理解」を長続きさせるには、それぞれの世代で道徳教育を実施すること、また方法としては熟議がよいとのことである。
実験は本来ならば時代をまったく共有しない世代間で行われるべきものだが、本書では年齢は違えど同じ時代を共有している異なる世代の間の行動を観察したシミュレーション的なものとなっている。その結果について読者がどの程度説得力を感じるかであるが、反論する材料もないというところである。
最終的な結論は難しくないが、証明方法が難しい。結論を受け容れたとしても政策に適用するにはまだ先が長いという印象で、現世代が支配する民主制にどうタガをはめるかとか、実際にどのような形で強制貯蓄するかとか、残された議論は多い。その前段階にあたる理論構築のための作業という位置付けだ。