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ご当地ラーメンを求めて、ついでに日本図書館情報学会の集会に

2016-11-14 15:40:41 | 図書館・情報学
  先日、奈良にある宗教都市・天理市にご当地ラーメンがあると聞いたので、さいたま市からわざわざ食べに出かけた。ついでに天理大学で開催される日本図書館情報学会の研究集会にも顔を出した。

  さて、今回の日本図書館情報学会の研究集会は発表数こそ多かったものの、僕が見たかぎりでは質疑応答が低調で、議論が盛り上がっていなかった。会場から質問が出ないので、司会者が無理矢理尋ねたいことをひねりだす、というシーンをしばしば目撃した。これは、発表者が多くて会場が三つに分散してしまったため、一会場における聴講者数が少なくなったせいだと思う。やはり一会場にある程度の人数が集まるようしたほうがいいんじゃないかな。あと、巨大な研究テーマの一部分を切り取っての発表というのがけっこうあって、その切り取った範囲ではコンパクトにまとまった発表であるものの、発表者の全体的な研究計画やコンセプトがわからなくて、聴く方の関心に訴えてこないというケースも少々あった。「その研究にどういう意義があるんですか」(悪意なし)とわざわざ説明を求めるのも野暮に感じてしまうのだが、尋ねたほうがいいのかな。だが、そもそも発表者が発表の中できちんと説明すべきことだとも思う。

  以下、印象に残ったものをあげる(敬称略)。まず、長谷川哲也(静岡大学)と内田良(名古屋大学)の「国立大学図書館における図書資料費の変動に関する社会学的研究」。ミーハーなので、発表者の片方は組体操批判の茶髪の先生だ、と思いながら聴いた。教育社会学分野から越境してきての発表であり、資料費の経年変化を示すデータの解釈についてアドバイスを求めに来たというスタンスだった。国立大を3ランクに分け、ランクの高い大学の資料費は維持されているが、低い大学ではそうではなく、格差が広がっているという。うーむ、ここで格差か。文科省がよこす国立大学関連予算の総額ではなくて、大学間格差を問題とするとなると、高ランク大の予算を削って低ランク大に渡して平準化したほうが良いという話に向かうように思える(もちろん発表者はそんなことは言っていない)。危機感は伝わったので、大学間格差についての説明があればもっとよかっただろう。

  次に、宮本剛志(日本大学)の「国立国会図書館における資料利用制限措置」。発表者はかつて国会議員の秘書だったとのこと。その立場で国立国会図書館に通ううちに閲覧制限の存在を知ってしまったという。現在、児童ポルノに該当する「おそれ」のある本は、閲覧制限がかかっていて、一般利用はできない。さらに、そうした本の書誌も目録から抹消されており、存在自体を確認できないようになっている。発表者が情報公開の手続きを経て該当文献のリストを求めても、タイトルを特定できないよう黒塗りで書類がでてきたという。この児童ポルノに該当する「おそれ」の判断は館長の名の下、国立国会図書館内で行われている。この処置は妥当か、またこうした処置を判断する手続き自体が妥当なのかと、二つのレベルで問いを投げかけるものだった。国立国会図書館側にも言い分はあるだろう。しかし、そんなことがあったんだということを示してくれた点で興味深い内容だった。

  三つ目は手前味噌だが、安形輝(亜細亜大学)ほか「公立図書館における図書購入の実態」。焼肉図書館研究会案件である。全国の公立図書館中央館に、どこから資料を買っているか、割引率はいくらか、装備付きでの納入か、などについて尋ねたものである。結果、8割の図書館が、装備有定価、または割引のみ、装備有でかつ割引有など、なんらかの割引を受けていた。割引率はばらついており、20%を超えるところもある。割引率の高い図書館は、規模の大きい南関東圏の図書館であり、地方の小規模な図書館は装備無の定価で買わされている。こうしたシビアな現実が明らかになった。会場から、そんなの当たり前だというコメントも出た。そうかもしれない。公共図書館も資本主義の秩序にまきこまれており、出版社のある東京に近い地域の図書館は割引を受け、遠い地域の図書館は輸送コスト分を負担する。大口顧客は安く買える一方、小口の顧客は定価購入だ。しようがないね、というわけだ。その妥当性について判断するつもりはないのだけれども、図書館関係者はもう少し「金の話」をしてもいいのではないかと思う次第。

  あと、今回の旅のメインだった天理ラーメンの件。天理スタミナラーメン本店に行って食べてきた写真が下。チャーシューメンである。とんこつと鶏がらを出汁にした辛口のスープに、白菜とチャーシューという構成。同席した「ラーメン二郎派」の重鎮と、いったいどちらが健康的なラーメンかを巡って論争となった。


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