ダニエル・ハーバート『ビデオランド:レンタルビデオともうひとつのアメリカ映画史』生井英考, 丸山雄生, 渡部宏樹訳, 作品社, 2021.
米国ビデオレンタルの社会史。関係者へのインタビューが中心で、1970年代後半の創成期から、オンデマンド・サービスに取って代わられる2000年代後半の衰退期までの変化を描いている。原書はVideoland: movie culture at the American video store (University of California Press, 2014)である。著者は、複数のレンタルビデオ店でのアルバイト経験を持つ社会学者である。
ビデオレンタルが登場する以前の1960年代から70年代にかけて、映画に接するには映画館かテレビ放映のルートしかなかった。その上映期間や日時および放映時間帯は限られており、観るタイトルを気軽に選択できるものではなかった。しかし、70年代後半に家庭用ビデオ機器が登場したことで、80年代から90年代にかけてビデオレンタル店が多く開業し、好みの映画を選ぶという行為が米国人にとって普通になる。ビデオレンタル店は、映画館以上に、個々人の「趣味」の形成を促すものとなった。ただし地域差もあって、都会では名画専門店やB級専門店が多様なニーズを満たす一方、保守的な地域にあるレンタル店ではアダルトビデオコーナーを設置できなかったという。
80年代には個人経営のレンタル店が多く誕生したが、90年代以降それらは大手グループに統合されていった。しかし、安価なセルDVDが1990年代末に登場すると、借りるのではなく「買う」という消費形態が広まり、レンタル業界は打撃を受ける。さらに00年代後半になるとNeflixなどのオンデマンドサービスが普及し、レンタル店の廃業が加速することになる。このほか、流通業界や映画カタログ(カタログ誌からimdbなどデータベースの話につながってゆく)への言及もある。
以上。ブルデューなどの名前も出てくるが、衒学的な雰囲気はなく、わかりやすく記述されているのが好ましい。一方で、映画についての詳しい解説はまったくないので、出てくるタイトルや人物名が分かった方が楽しめる(例えば『イレイザーヘッド』など)。まあ、わからなくても読み進めることはできるのだが。ハードウェアの変化が消費にどのような影響を及ぼすかを描いており、出版関係者ならば身につまされる話だろう。図書館との比較もちょっとだけある。
米国ビデオレンタルの社会史。関係者へのインタビューが中心で、1970年代後半の創成期から、オンデマンド・サービスに取って代わられる2000年代後半の衰退期までの変化を描いている。原書はVideoland: movie culture at the American video store (University of California Press, 2014)である。著者は、複数のレンタルビデオ店でのアルバイト経験を持つ社会学者である。
ビデオレンタルが登場する以前の1960年代から70年代にかけて、映画に接するには映画館かテレビ放映のルートしかなかった。その上映期間や日時および放映時間帯は限られており、観るタイトルを気軽に選択できるものではなかった。しかし、70年代後半に家庭用ビデオ機器が登場したことで、80年代から90年代にかけてビデオレンタル店が多く開業し、好みの映画を選ぶという行為が米国人にとって普通になる。ビデオレンタル店は、映画館以上に、個々人の「趣味」の形成を促すものとなった。ただし地域差もあって、都会では名画専門店やB級専門店が多様なニーズを満たす一方、保守的な地域にあるレンタル店ではアダルトビデオコーナーを設置できなかったという。
80年代には個人経営のレンタル店が多く誕生したが、90年代以降それらは大手グループに統合されていった。しかし、安価なセルDVDが1990年代末に登場すると、借りるのではなく「買う」という消費形態が広まり、レンタル業界は打撃を受ける。さらに00年代後半になるとNeflixなどのオンデマンドサービスが普及し、レンタル店の廃業が加速することになる。このほか、流通業界や映画カタログ(カタログ誌からimdbなどデータベースの話につながってゆく)への言及もある。
以上。ブルデューなどの名前も出てくるが、衒学的な雰囲気はなく、わかりやすく記述されているのが好ましい。一方で、映画についての詳しい解説はまったくないので、出てくるタイトルや人物名が分かった方が楽しめる(例えば『イレイザーヘッド』など)。まあ、わからなくても読み進めることはできるのだが。ハードウェアの変化が消費にどのような影響を及ぼすかを描いており、出版関係者ならば身につまされる話だろう。図書館との比較もちょっとだけある。