29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

悪くはない、だが音楽家の可能性を狭める過剰プロデュース

2015-05-29 10:47:25 | 音盤ノート
Mathias Eick "Midwest" ECM, 2015.

  ジャズ。ノルウェーのトランペット奏者マティアス・アイクのECM三作目。メンバーは刷新され、Gjermund Larsen (violin), Jon Balke (piano), Mats Eilertsen (bass),
Helge Norbakken (percussion)のクインテット編成になっている。タイトルの"Midwest"というのは、米国中西部を訪れたときの印象を曲にしたものということらしい。

  ドラムを一台に戻し、ベースはエレキからアコースティックに統一、フェンダーローズも無し。さらにヤン・バルケがメンバーに復帰した。このように前作を完全否定した今作は、一作目の"The Door"以上に電気臭無しの北欧室内楽ジャズである。アイクの叙情的なソロは相変わらず素晴らしく、バックの演奏もそれに寄り添うようにな優しい。バイオリンの存在は、北欧トラッドやカントリーミュージックをかすかに匂わせる。聴きやすいし決して悪くない作品なのだが…。

  個人的には、ツインドラムによる前作"Skala"の反復ビートが気に入っていた。そもそもJaga Jazzist(参考)に参加するような人だから、ロック~エレクトロニカ寄りのアプローチもできるはずの人である。ECMのプロデュースはそうした資質を殺してしまっている。
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他山の石としての江藤淳、目指すは孤高の作家

2015-05-27 10:16:38 | 読書ノート
小谷野敦『江藤淳と大江健三郎:戦後日本の政治と文学』筑摩書房, 2015

  タイトルにある二人を扱った評伝。二人とも1950年代後半に若くして文壇にデビューし、20世紀後半の日本の文壇にそれなりの影響力を持った。本書は二人の雑誌上の発言や人間関係を時系列を追って検討するというもので、文壇ゴシップの趣きがある。一方、彼らの著作に対してはコメント程度のものがあるだけで、詳しく分析されているわけではない。要は二人の「生き様」が検討されているのだ。加えて、ところどころに著者の突っ込みが入る。

  著者の評価は、大江健三郎に対して肯定的で、江藤淳に対して否定的である。大江健三郎の戦後民主主義的な政治思想に説得力はないが、小説のクオリティは高いという。ただしその評価は、大江は核戦争による人類絶滅に性的エクスタシーを感じている、という憶測に支えられたものだ。江藤に対しては、特権階級意識が時折顔を出す嫌味な俗物で、勉強不足のため人生の後半にはまともな著作を書けなくなっていたと手厳しい。反米かつ天皇崇拝家という点も著者にとって駄目なところらしい。生き様の点では、虚飾ばかりの江藤より、徒党を作らず作品やエッセイ(政治文書を除く)で自己をさらけ出す大江に軍配が上がるというわけである。以上のように、最終的な人物評価には、生き様だけでなく残した作品もかなりの重みで考慮されている

  かなり資質の違うこの二人を比較対象とするのは適切なのだろうかと疑問に感じるところだが、僕はこれが著者の欲望の方向なのだと理解した。つまり、著者は大江のように良い作品を書きたい──その作品が必ずしも正しく世間に認知されないとしても。一方、たとえ文壇で影響力をふるうことができたとしても、良作を書けない江藤のようにはなりたくない。芸術至上主義者としての小谷野敦の誕生である。こういう欲望を、作品論ではなくゴシップまわりの検討によって匂わせてしまうところに、著者の深い屈折を感じてしまう。
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怨念からやや解放、ストリングスを従えて優雅に歌う

2015-05-25 18:22:56 | 音盤ノート
Marianne Faithfull "A Secret Life" Island, 1995.

  女性ボーカルもの。ライブ盤"Blazing Away"(Island, 1990)から路線を微修正、暗い過去を滲ませながら重く訥々と歌い上げるスタイルから、少しばかりの癒しを感じさせる優しげな作品となっている。プロデューサーもハル・ウィルナーからデビッド・リンチ組のアンジェロ・バダラメンティに替わり、彼自身が作曲も行っている。

  本作ではバダラメンティらしい、優雅ながら暗い情念を感じさせるストリングスが全編にわたって聴ける。彼が参加したサントラは他人の曲とのオムニバスになることが多いのだが、本作はバダラメンティ作曲作品だけをまとめて聴ける。ただし、彼の浮遊感のあるメロディーが、フェイスフルのしわがれ声と合っているかというと微妙なところではある。暗く語りかけるような場面ではしっくりくるが、歌いあげるような箇所ではもっと清涼な声のほうがいいかな、と思ってしまう。Track 5の'She'だけはその例外で、ドスの効いた声でも暖かい癒しを与えることができることを示した名唱。

  同時期にバダラメンティは、フランス産SF映画『ロスト・チルドレン』(1995, 監督はジャン=ピエール・ジュネとマルク・キャロ)のサウンドトラックも手掛けており、そちらでは'Who Will Take My Dreams Away'においてフェイスフルのボーカルが聴ける。一方、映画のエンディング・テーマ曲として本作収録曲の'She'が使用されていたと記憶するのだが、この曲はサントラCDには収録されていないようだ。
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理系の研究生活事情。それなりに黒い世界も垣間見える

2015-05-22 13:21:16 | 読書ノート
今野浩『ヒラノ教授の論文必勝法:教科書が教えてくれない裏事情』中公新書ラクレ, 中央公論, 2013.

  論文の書き方というよりは、論文執筆で生計をたてていくためのノウハウを開陳したもの、といった方が正確だろう。研究費の獲得や投稿論文を受理させる方法のほか、論文の量産を可能にする考え方、研究者としての人生態度などについても議論が及んでいる。著者は日本における金融工学の草分け研究者で、この先端分野が日本のアカデミズムでどう受容されていったかもわかる。

  全体で36のアドバイスがあるが、印象に残ったものをひとつだけ。「同時に二つの研究テーマを追求するよう心がけること」(p.110)。テーマを一つに絞ってそれがうまくいかないと、研究生活が挫折してしまう。二つ用意して両方を行き来するようにすれば、アイデアが煮詰まってしまう可能性を減らすことができるとのこと。これはそうだようなあ、と煮詰まった経験がある僕は大いに納得したところである。でも、駆け出しの研究者の頃はそんな器用なことはできないというのも確かで、若いころは自分の「専門」といえるテーマを確立するのに精いっぱいだったりするのだ。

  この他、学術雑誌における査読での攻防の話は滅茶苦茶面白い。リジェクトされた論文の内容が査読者にパクられたとか、複数いる著者の順番を合意無しに入れ替えたために訴訟となってしまい研究者生命が絶たれたとか、編集委員会には査読を依頼してはいけない人物のブラックリストがあるとか、大学の先生も生き馬の目を抜くようなエグい世界で戦っているということがよくわかる。というわけで大学院生におすすめ。文系の院生でも本書で描かれた理系の状況を知っておいたほうがいいと思う。

  
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転落した元清純派アイドルが酒やけ声で恨み節を歌う

2015-05-20 11:46:23 | 音盤ノート
Marianne Faithfull "Strange Weather" Island, 1987.

  ジャズからフォークまで歌う女性ボーカル作品。復活後のマリアンヌ・フェイスフルの録音で、酒やけしたしわがれ声でジャズ・スタンダードやクルト・ワイル、ボブ・ディラン、トム・ウェイツの曲を歌う。バックバンドには、ビル・フリゼルや当時ルー・リードのバンドにいたFernando SaundersやRobert Quineらの名前が見える。とにかく暗くて重いので、暗黒音楽ファン必聴の名作である。

  1960年代の清純派アイドルから麻薬中毒に陥ったマリアンヌ・フェイスフルの転落物語についてはググればすぐ出てくる話。長い沈黙の後に1979年の"Broken English"(Island)によって復活するのだが、復活後の三つのアルバムはいずれもニューウェーヴ風のサウンドで、ドスの効いた彼女の声とまったくマッチしていなかった。新たに雇われた本作のプロデューサー、ハル・ウィルナーはそこを改善。シンセサイザーとドラムを廃し(ただしブラシを使ったドラム演奏はある)、ホーンの入るジャズ的な編成か、ギターとベースの小編成(ストリングスが入ることもある)、あるいはピアノかギターとのデュオ、アカペラ等さまざまな編成を使って、作曲年代の多様な曲を演奏させる。こうしてジャンルも時代も不明な、どこかノスタルジックな音楽が出来上がった。これが当時のフェイスフルのウリである「栄光と転落を生き抜いた中年女性」のイメージと完璧にマッチしていた。Track4の'Yesterdays'は本当に素晴らしく沈痛な曲で、憂鬱な気分をさらに下降させること請け合い。

  アルバム全体で、フェイスフルのような滅茶苦茶なキャリアを持つボーカリストの、そのキャラクター戦略にぴったりと合う音が鳴っている。というわけで、僕はハル・ウィルナーのプロデューサーとしての力量に感心した。また作品全体が、過去にしがみついてネガティヴに生きる、というのもありなのだという強烈なメッセージとなっている。デビュー曲でかつての恋人であるミック・ジャガー作'As tears go by'の再録音もあり、過去のスキャンダルにも巧みに言及している。商魂たくましい。
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地図好きの中でも特に地形に興味にある人向け

2015-05-18 10:36:04 | 読書ノート
今尾恵介『地図入門』講談社選書メチエ, 講談社, 2015.

  地図の読み方について記した一般向け書。地図を見て地形や街の風景が正確に想像できるようにと、地図表記のツボである地図記号や等高線、地名表記のフォントなど細々としたことを解説してくれる。「入門」となっているものの掲載情報はかなりマニアックであり、地図を眺めるのが好きでかつもっと地図の世界にズブズブ浸りたいと思っている人に向いている。

  前半三章は、地図記号や等高線の読み方および外国との比較である。「総描」や「転位」など「必ずしも正確に描かないことによってわかりやすく伝える」表記法ほか、建物記号の位置表記など近年の変更で逆に解釈し難くなったところ、数字で表記されている標高と水深の基準点が異なることを説明する。中盤の四・五章は地名表記と戦時中の改描(軍事情報を隠蔽するために嘘が書かれた地図)の話。戦時中に作成された地図の改描のあるなしについては、価格に丸括弧がついているかどうかでわかるそうだ。最後の六章は著者の興味を引いた地形について解説されており、大井川や四万十川の蛇行、開聞岳や桜島などの火山、日本にあるメサ(頂上の平な山)やマール(円形の噴火口跡)などが挙げられている。

  僕もけっこう地図を眺めるのが好きな方ではあるが、知らないことだらけで勉強になった。言及される土地の地図や写真などの図版はもれなく掲載されているが、それでも本書を読む際には手元に日本地図があった方が良い。というのも図版の縮尺(1:25,000)では大きすぎて位置がわからず、日本地図上のどの辺りなのかというのを確かめたくなるため。ただし、家庭用の安い日本地図帳の縮尺はだいたい1:500,000で、本書図版の縮尺の1:25,000~50,000に及ばない。気軽に地形を楽しみたいならばGoogle Mapも悪くないと感じた。
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結婚難にある北米の高学歴女性たちの本音のようなもの

2015-05-15 08:59:03 | 読書ノート
マリナ・アドシェイド『セックスと恋愛の経済学:超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業』酒井泰介訳, 東洋経済新報, 2014.

  北米の現在の「性」事情を経済学的に分析した一般向けの書籍。原書はDollars and Sex: How Economics Influences Sex and Love(2013)。邦訳の副題における「ブリティッシュ・コロンビア大学」が一般の日本人読者へのアピールとなるのか疑問であるが、読者対象としてカナダの大学の名が分かるような渋い高学歴層を特に狙ったということだろうか。(同大学は文学研究者の小谷野敦がかつて留学した先で、フェミニズムに懐疑的なことを授業で発言したら教授から「豚」呼ばわりされたというエピソードを彼の著書で読んだ記憶がある)。

  中身は雑多なトピックの集積でできており、本文の記述をぶつ切りするように大量のコラムが挿入されている。ネット、年齢、所得、男性の身長、性病、幸福感といった事柄と、恋愛やセックスとの関係の話などが披瀝されており、下世話ながら興味深い。著者が特に関心を示しているは、高学歴な女性の恋愛と結婚事情である。北米では大学生の数が男性より女性のほうが多いという状態となっており、卒業後に自分と同程度かそれ以上の所得を得るような男性が希少となっているという。こうした事情を背景に、女子の数が多い大学ではそうでないケースより女子学生が安易に性関係を提供している、高学歴な黒人男性の希少価値が高いために相対的に数の多い高学歴な黒人女性の独身率が高くなっている、高学歴女性は低学歴男性をパートナーに選びつつあるため余波を受けた低学歴女性の結婚が将来困難なものになる、などと述べている。

  著者自身が独身女性──少なくとも本書から読み取れる限りでは──であり、相手探しに辛酸を舐めた経験があるらしく、そうした層に共感しやすい体験的エピソードもいくつか盛り込まれている。現代の北米女性の結婚難の解消のために著者が終章で提案するのはなんと「一夫多妻制」で、これにより「一夫一婦制」によって引き起こされている「質の高い」男性の不足が解消されるそうだ。女性にとっては「質の低い」男性と一緒になるくらいだったら一生独身のほうがマシ、なんなら売春したほうが経済学的には利益が多い、というのが著者の分析だ。というわけで容姿や所得において恵まれない男性には大変厳しく、救いの無い内容である。

  あと気になったこと一つ。社会学系大学の名門ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの出身(正確には中退)であることを理由に、性的魅力の経済学の「感覚的」理解者としてミック・ジャガーの名がたびたび言及される。このうち"経済学部生だったミック・ジャガーの箴言──望み通りのものがいつも手に入るとは限らない──を思い出してください"という一文については、ポップミュージック愛好家として訳者に注を求めたいところだった。これはローリング・ストーンズの1969年の名曲'You can't always get what you want'のことだろう。
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ゴシップを念頭に聴くべき夫婦関係再構築音楽

2015-05-13 13:18:19 | 音盤ノート
Cocteau Twins "Milk & Kisses" Fontana, 1996.

  コクトーツインズの8作目で最後の作品。発売当初に聴いたときは、いつもと同じ音作りでもうマンネリだな、と感じたものだ。しかし、その二年後にバンドは解散してしまう。後からこのアルバムの製作まわりのゴシップを知って、少々印象が変わった。かなり無理して「いつもと同じ」をやっていたのがわかったからだ。

  というわけで本作を楽しむにはゴシップネタを知っておく必要がある。前作録音後、ガスリーに愛想を尽かしたボーカルのフレイザーは、新進気鋭の二世ロック歌手ジェフ・バックリィと恋に陥る。しかし、結局上手くいかず二人は別れる(ちなみにバックリイは1997年に溺死)。その後録音が開始された本作は、ガスリーが戻ってきた妻を受け入れ、もう一度やり直そうという意志のもとになんとか完成させた作品ということなる。特に新しいことはしていないのだが、全体的に取り繕うように明るい。後付けながら、まるで我々は不幸せではないとわざわざ外に向かって主張しているような音である。結局、この再構築は失敗してしまうのだが。

 (ただし上の話には少々想像が入っている。夫婦関係再構築のくだりがそうだ。メジャーレーベルのリリースサイクルに合わせて、すでに赤の他人となった二人がビジネスライクに淡々と録音した作品という見方もできなくはない。その場合、解散した理由は、たとえ商売だとしてもお互い顔を合わすことさえ耐えられないくらい憎みあっていた、ということになるだろう)。

  この時期は大量に録音があって、本作だけでなく、"Twinlights"(1995)と"Otherness"(1995)のEP二枚に、二枚のシングル'Tishbite'と'Violaine'に収録された8曲におよぶカップリング曲──いずれも編集盤"Lullabies to Violaine Vol.2"で聴ける──が発表されている。いずれもアルバム収録曲に劣らぬクオリティである。また、コレクターズアイテムとして香港盤というのがあり、そこでは当時全盛期を迎えていた香港の女優フェイ・ウォンがtrack 2の'Serpentskirt'でフレイザーとデュエットしている。まあ、通常盤で十分だろう。
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公衆衛生学からみた緊縮財政反対論

2015-05-11 09:56:21 | 読書ノート
デヴィッド・スタックラー, サンジェイ・バス『経済政策で人は死ぬか?:公衆衛生学から見た不況対策』橘明美, 臼井美子訳, 草思社, 2014.

  不況時に政府が採用する経済政策によって国民の健康がどう変わるのかを探った一般向け書籍。原書はThe Body Economic : Why Austerity Killsで、2013年に刊行されている。原書副題から著者らの立場は明白である。緊縮政策(austerity)は人を殺すので悪手だ、というのである。

  その経路は二つある。一つは、緊縮財政が単純に医療費や公衆衛生関係の費用を削るので、伝染病などが蔓延しやすくなり、また病気になったまま治療を受けられない国民も増えるため、死者数が増加するというものである。もう一つは、不況時の緊縮財政が失業やホームレスを深刻化させ、過度の飲酒やうつ病を増やし、その結果若死にや自殺が増えるというものである。これらを、ニューディール期の米国(取り組みに熱心な州とそうでない州の比較)、ソ連崩壊後のロシア、アジア通貨危機後のタイ、サブプライム危機後のギリシアなどを例に説明していいる。マレーシア、ポーランド、アイスランドなども挙げられているが、IMFが要求するような緊縮政策を拒否して、無事不況を乗り切った成功例としてである。

  以上のように、ただ一つの主張を、それを補強する複数の材料を使って繰り返し証明するという内容である。深い思考に導かれるものではないが、その説得力は強力だ。少なくとも僕は説得された。なお、サブプライム危機後の米オバマ政権は、財政出動に躊躇しなかったという点で本書で良い評価を与えられている。対して、緊縮政策を打った英キャメロン政権は失敗例扱いである。だが、今月5/7の英国の選挙では保守党が勝利して政権を維持した。英国の景気は回復しているようだし、経済政策は選挙の争点として重要ではなかったようだ。しかし、人命がかかっているんだから、何よりも重要な争点だと個人的には思うのだがなあ。残念ながら日本への言及はほとんどない。
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『グーテンベルグの銀河系』邦訳の肖像写真について

2015-05-08 11:32:31 | 音盤ノート
Marshall McLuhan "The Medium Is The Massage: With Marshall McLuhan" Columbia, 1968.

  メディア論者マーシャル・マクルーハンによる1968年の録音作品。1967年刊行の著書The Medium Is the Massage(『メディアとはマッサージである』)を基にした内容で、サイケデリックロックとジャズを中心にさまざまな音楽を短くコラージュして、それを背景にしてマクルーハン他総勢11人がアフォリズムを読み上げるというもの。ビートルズの'Revolution 9'をバックにしたポエトリー・リーディングをイメージしてもらうといいかも。珍品ではあるが一回聞けば十分という、さして面白くもない作品である。僕も特に聴くことを勧めない。

  内容云々ではなく、このエントリをおこしたのは別に気になったことがあったため。本作は1999年にSMEからCD化された。その際気づいたことがある。その裏ジャケットを一部を切り取った画像を見てもらおう。



  四人並んでいて、クレジットは左からJerome Agel(編集者?)、書籍版『メディアとはマッサージである』のデザインを担当したクエンティン・フィオーレ、マクルーハン御大、プロデューサーのジョン・サイモンとなっている。みすず書房発行の『メディア論』(1987)を手にとったことのある読者ならば、あの邦訳のカバーにある肖像写真がここから採られたことがわかるだろう。(下記写真:左が『メディア論』から。右が『グーテンベルグの銀河系』から。)



  ところが、同じく『グーテンベルグの銀河系』(1986)カバーの肖像写真もここから採られており、しかも違う人物なのだ(!!)。よく見るとクエンティン・フィオーレである。『グーテンベルグの銀河系』邦訳で使用されているマクルーハンの肖像は別人であったのだ。この話はすでに知られていることかと思いきや、ネットを探してみたら出てこなかったので記しておいた。
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