29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

短大新入生向けエントリ・その2

2009-03-30 14:56:03 | 読書ノート
飯間浩明『非論理的な人のための論理的な文章の書き方入門』ディスカバー携書, Discover21, 2008.

  学生が短大に入って途惑うものの一つがレポート課題だ。非常勤として他大をいくつか教えた経験から言えば、これは本学に限らず、四年制大学でも同様である。というのも、日本では中等教育段階で論理的に文章を書く教育プログラムが組まれていないからだ。何も指導をしないと、学生は読書感想文の延長のような文書をレポートとして提出してくる。

  レポートでは、複数の解釈を許さない、誤解を招くことのないような文章が求められる。感情を表現しただけのものは禁物だ。このような文書を書く技術を習得することは、就職などに直接影響するというものではないかもしれない。しかし、考えを整理したり、他人に受け入れられるように意見を提示するのに効果的だ。その後の職業人生や社会生活で評価されることがきっとあると思う。

  レポートのマニュアル本は多く出版されている。古典と呼べるようなものもある。だが、内容がインターネットとワープロの時代に対応していないか、または情報量が多すぎるかのどちらかだ。後者の場合、四年制大学ならいざ知らず、短大の二年間という短い時間で習得させるにはちょっとハードルが高い。

  だが、昨年末に出版されたこの本の主張はシンプルである。全体を問題-結論-理由の順序で構成すること。これに各段階での簡単な注意を与えているだけである。この種の文書を書く際に求められる細かい形式については気にせず、レポートをレポートたらしめている基本的な叙述形式のみに焦点を当てて論じている。短大生にも使い易いだろう。

  この本は入口として優れている。願望を言えば、中学高校の段階でこのレベルの文章指導をやってほしいところ。
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短大新入生向けエントリ・その1

2009-03-27 10:33:37 | 読書ノート
岩田規久男『景気ってなんだろう』ちくまプリマー新書, 筑摩書房, 2008.

  2009年度のミス日本・宮田麻里乃さんが読んだ1)という経済学の入門書。なんでも、彼女は経済ジャーナリストを目指すのだそうで。

  岩田規久男は、構造改革よりもデフレ対策(いわゆるリフレ政策)を優先すべしと、1990年代の不況期から訴えていた学者として知られる。僕も彼の新書を何冊か読んだことがあるが、その説得力は高い。

  この本は、ちくま新書のシリーズとは異なり、ちくまプリマー新書という中高生向けのシリーズに属する。しかしながら、著者は全然手を抜いていない。わかり難いというのではない。概念をまず定義して、説明を展開するという著者の手堅い記述スタイルが、一般向けの教養新書のときと変わらずに貫かれている。慣れた人にとっては、これほど曖昧さの少ない、論理的な文章は無いと思われる。だが、不慣れな人には、生硬で論理一辺倒の記述に疲れを感じるかもしれない。学生にはこういう文章を平易だと感じられる頭を持ってほしいものだが…。

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1) 『J-CAST』 “17歳のミス日本 将来の夢は「経済ジャーナリスト」” 2009/1/29

  http://www.j-cast.com/2009/01/29034502.html
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祝・WBC連覇!!

2009-03-24 15:41:39 | チラシの裏
  やったー!!

  拙攻続きで、9回に同点にされたときはもう駄目かとも思った。ので10回のイチローの2点タイムリーには泣けた。素晴らしい。本当に素晴らしい。
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暗黒音楽研究・その4

2009-03-19 21:05:22 | 音盤ノート
Steve Reich "Triple Quartet" Nonesuch, 2001.

  時間を経てみるとその良さがわかるという作品があるが、この録音もその一つ。一曲目の"Triple Quartet"を初めて聞いたときは、期待外れだと思った。この曲に至るまで、ライヒはエレクトロニクスを使った作品を多く発表してきていた。しかも名曲"Different Trains"以来の弦楽四重奏曲。馴れた聴き手ならば、サンプリング・ヴォイス付きのエキセントリックな楽曲を予想するだろう。しかし、CDから聞こえてきたのは、多重録音になっているとはいえ、しごくまっとうな弦楽四重奏曲。斬新さのかけらもない。「これまでの作品で重ねられてきた実験が活かされていない」と感じたものだ。

  後に発表された作品を知ってしまった現在の耳で聞くと、"Triple Quartet"は「電子楽器を"使わない"中規模アンサンブルのための曲」を、作曲家としてのキャリアの中心に再びし始めた最初の曲と言えるかもしれない。この弦楽四重奏曲は、その中でもとりわけ暗く沈痛な作品だ。しかし、それでもヨーロッパの作曲家のように重く滞留するような感覚が無く(動きが速いせいか?)、ライヒらしい乾いた疾走感のある曲となっている。

  同じCDに収録されている他の3曲は、すべて過去に録音されたことのある作品の再録音である。ディストーションの効いたエレクトリック・ギターで演奏される"Electric Guitar Phase"は、オリジナルの"Violin Phase"の物憂い感じが無くなって、馬鹿馬鹿しくもカッコの良い曲になっている。"Music for Large Ensemble"は、ECMでの演奏を超えてはいないけれども、マリンバ等の旋律打楽器はよりマイルドに響き、低音部も明瞭になって、異なった魅力を獲得している。もともとフルートのために書かれた"Tokyo/Vermont Couterpoint"は、MIDIのmarimba音を使って演奏(プログラム?)され、おもちゃのように可愛い曲に変貌した。
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ちょっとだけ公共図書館が登場する英国映画

2009-03-18 12:42:26 | 図書館・情報学
  ちょっとした行事のため、英国の労働者階級映画『ケス』と『リトル・ダンサー』を見直した。どちらも炭鉱の町が舞台でローティーンの少年が主人公だ。

  図書館屋としては、図書館の登場する場面に関心が向く。ただ、その描き方はどちらかと言えばネガティヴだ。『ケス』では、女性の図書館員が、主人公の少年に対して、会員ではないので利用できないこと、母親に身分証明してもらうことの二つを説明して追い返す。『リトル・ダンサー』では、移動図書館が出てくるが、やはり利用資格が問題となる。主人公は必要な本をどうやって手に入れたのか? 前者では主人公は街の古本屋で万引きする。後者でも移動図書館で万引きする。彼らが必要とした本は、文学書などではなく、マニュアル本である。

 『ケス』の方は、最初から最後まで主人公に対して周りの人物がとことん否定的な言葉を浴びせ、結末も悲惨なのだが、不思議と清涼感のある映画になっている。『リトル・ダンサー』の方は、主人公は夢をかなえるのだが、その成功には家族や友人が属する階級を捨てることを伴っているので、ハッピーエンドの持つ爽快感と同時に複雑な気分にもおそわれる。

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人間行動については「今後の検証待ち」多し

2009-03-16 10:28:59 | 読書ノート
 長谷川寿一, 長谷川眞理子『進化と人間行動』東京大学出版会, 2000.

  人間行動に進化生物学を適用した著作。しかしながら、進化心理学系の一般書籍の中では、進化論を当てはめるのに慎重な部類に属するだろう。論じられている人間行動に遺伝的基盤があるのかどうかの判断に、留保が多いからである。

  例えば次のケース。本書全体では、雄にとって一夫多妻が、雌にとって一夫一妻が多くの生物で合理的であるかのような説明が多くなされている。しかし、第10章「ヒトの繁殖と配偶行動」になると、前半では上の説を支持する議論を配置しながら、後半で“男は一夫多妻的、女は一夫一妻的という簡略化は、進化生物学から導き出されてヒトに当てはまるというわけではないでしょう”(p.225)とくる。そのぐらい慎重である。

  こうした知的誠実さのため、ジョン・H. カートライトによる入門書1)よりも分量が多く、説明も詳細になっている。だが、分かりやすさの程度は変わっていない。

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1) ジョン・H. カートライト『進化心理学入門』鈴木光太郎;河野和明訳, 新曜社, 2005.
  
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短大出身でも一生働くつもりで

2009-03-13 09:25:42 | チラシの裏
  短大の学生に将来の夢について尋ねる機会があった。驚いたのは、けっこう専業主婦を希望する者がいたこと。これは短大特有の現象なのだろうか? 四年制大学の女学生と比べて、彼女たちの職業キャリアに対する期待は低いだろうから。それとも一般的な傾向なのだろうか? 耳学問では「日本の若い女性の専業主婦志向が高まっている」という言説をどっかで聞いたことがあるが(小倉千加子の本だったような…うろ覚え)。

  いずれにせよ、このご時勢で彼女たちが専業主婦になるのは難しいと思われる。結婚相手となる同世代の男性のほとんどは、雇用が不安定で低収入だろうから(たとえ正規雇用されていてもリストラや倒産が視野に入る)。お父さんの時代の雇用状況とは違うのだ。専業主婦家庭では、夫が失業すればすぐさま家計が立ちゆかなくなる。これでは責任感が強い男性ほどプロポーズに消極的になってしまう。「働いて一緒に家計を支えますよ」ぐらいの心構えの方が、同世代の男性から結婚を持ちかけられやすいだろう。

  もちろん、専業主婦OKの男性もいるだろう。ただし、妻を専業主婦にできるような安定した雇用のある男性はモテるだろうから、競争も激しいだろう。わが短大生のみなさん、このゲームに勝ち抜けるほど魅力を磨いていますか? これよりも就業先を見つける方がずっと楽だ。就職は努力でなんとかなる部分が大きいけれども、配偶者の選択で容姿の差を克服するのはずっと難しいからからね。

  だから、一生働くつもりでいてくださいよ。

卒業式の日に


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看護婦の母曰く

2009-03-11 08:12:48 | チラシの裏
  ポカリスウェットよりサントリーのDAKARAの方が体にいいらしい。二日酔いなので今飲んでいるところ。
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静岡城北公園のテント村

2009-03-09 12:38:29 | チラシの裏
  静岡市にある城北公園は図書館・庭園・サッカーグランド・子ども遊具などが揃った、緑の多い大きな公園だ。もっと大都市ならば確実にホームレスのテント村ができたと思う(最近は全国で行政が強制撤去をするようになったのでこういう問題は聞かないけれど)。しかしながら、庭園の木立の茂みの中を除くと、ビニール傘や発砲スチロールでできた小さな小屋を複数見つけることができる。人間ではなく野良猫がそこに住んでいるのだ。城北公園の猫はなかなか人懐っこくて、通りがかった人物が食べ物らしきものを持っていると、ニャーニャー鳴いて近寄ってくる。そうやって餌を獲てきたのだろう。彼らの小屋も、猫が造ることのできるものではなく、人手によるものだ。東京だったら「餌やり禁止」の看板が立てられるところだろうから、静岡はおおらかである。
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ニューイングランド幻想

2009-03-06 13:30:32 | 読書ノート
ジェシー・H.シェラ『パブリック・ライブラリーの成立』川崎良孝訳, 日本図書館協会, 1988.

  図書館史ひいては図書館学の古典。原著は1949年。植民地時代から19世紀半ばまでの北米の公共図書館の成立について辿っている。その焦点は、「ソーシャル・ライブラリー」いわゆる会員制の図書館から、自治体公認の組織であり・公費による支援を受け・利用者層を限定しない・無料で利用できる・図書館すなわち「パブリック・ライブラリー」への移行である。

  研究対象は北米の初期植民地に限られているが、訳者によれば著者は公共図書館の普遍的展望を描こうと試みているとのこと。ニューイングランドを近代社会の条件が整った最初の場所とみなすというのはもともとウェーバーの発想だ。この本もその影響があるのだろう(誰かがすでに指摘しているかもしれない)。この点は、本書の議論の構成には影響しないが、議論の「価値」には影響する。読者は、ウェーバーの説が現在ではあまり支持されていないことを知っていおいてもいいとも思う1)

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1) 以前のエントリで紹介した本(A, B)で、ウェーバーの説が他の説と比較されている。  
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