Milton Nascimento "Clube Da Esquina 2" EMI/Odeon, 1978.
MPB。1971年の"Clube Da Esquina" の続編であるが、サウンドはもはや貧乏そうなフォークロックではない。前作"Geraes"を踏襲したフォルクローレおよびクルーナー路線の音となっている。しかも前作以上に多様な曲想、そして多様なアレンジを試みている。また、参加メンバーが豪華で、Wagner Tiso、Toninho Horta、Beto Guedes、Lo Borges、Nelson Angeloといったいつものミナス勢に、シコ・ブアルキにエリス・レジーナ、Azimuthらがゲスト参加している。収録曲も全23曲の二枚組。
気合の入った超大作だが、トータル80分でさすがに冗長に感じられるのは避けられない。とはいえ、優れた曲が数多くあり、全体を通して退屈というわけではない。聴き手がミュージシャンの要求する水準の集中力で聴きとおすことができないだけのこと。いくつか出来の良い曲を挙げると、CD1ではまずtrack 2'Nascente'。ミナス系第二世代の歌手Flavio Venturini作の、暗めのストリングスをバックに歌い上げるバラードで、ナシメントの歌唱の中では最高峰の美しさである。Track 8の'O Que Foi Feito Devera'はエリス・レジーナの呪いをかけるような歌唱が聴ける神秘的な曲。CD2ではLPのD面にあたるtrack7以降の流れがとてもよくて、歌いあげ系バラードの'Leo'、ミドルテンポのビートルズ風ポップソング'Maria Maria'、アコギ弾き語りバラード'Meu Menino'、子どもと一緒に「ラララ」とスキャットするだけの'Toshiro'、Azimuthがバッキングするリズミカルで音の厚い'Reis e Rainhas do Maracatu'、最後にオーケストラをバックに明るく盛り上げる'Que Bom Amigo'と展開する。
1971年には無名だった野心満々の貧しい少年たちが、7年後には中堅どころになって大御所とも付き合うようになりました、力量もこんなにあります、と記した報告書みたいだな。なおこれがナシメントのEMI最後の録音となって、その全盛期の幕を閉じてしまう。実のところ、その後もアルバムの質はそれほど落ちていない。彼はブラジル人音楽家の中でかなりアルバム作りが上手いほうで、長いキャリアの中ではずれ作品は少ない。それでも、本作以降は憑き物が落ちてしまったような気がする。1980年代に入って使われようになったシンセサイザー音のせいではないかとにらんでいるのだが...。
MPB。1971年の"Clube Da Esquina" の続編であるが、サウンドはもはや貧乏そうなフォークロックではない。前作"Geraes"を踏襲したフォルクローレおよびクルーナー路線の音となっている。しかも前作以上に多様な曲想、そして多様なアレンジを試みている。また、参加メンバーが豪華で、Wagner Tiso、Toninho Horta、Beto Guedes、Lo Borges、Nelson Angeloといったいつものミナス勢に、シコ・ブアルキにエリス・レジーナ、Azimuthらがゲスト参加している。収録曲も全23曲の二枚組。
気合の入った超大作だが、トータル80分でさすがに冗長に感じられるのは避けられない。とはいえ、優れた曲が数多くあり、全体を通して退屈というわけではない。聴き手がミュージシャンの要求する水準の集中力で聴きとおすことができないだけのこと。いくつか出来の良い曲を挙げると、CD1ではまずtrack 2'Nascente'。ミナス系第二世代の歌手Flavio Venturini作の、暗めのストリングスをバックに歌い上げるバラードで、ナシメントの歌唱の中では最高峰の美しさである。Track 8の'O Que Foi Feito Devera'はエリス・レジーナの呪いをかけるような歌唱が聴ける神秘的な曲。CD2ではLPのD面にあたるtrack7以降の流れがとてもよくて、歌いあげ系バラードの'Leo'、ミドルテンポのビートルズ風ポップソング'Maria Maria'、アコギ弾き語りバラード'Meu Menino'、子どもと一緒に「ラララ」とスキャットするだけの'Toshiro'、Azimuthがバッキングするリズミカルで音の厚い'Reis e Rainhas do Maracatu'、最後にオーケストラをバックに明るく盛り上げる'Que Bom Amigo'と展開する。
1971年には無名だった野心満々の貧しい少年たちが、7年後には中堅どころになって大御所とも付き合うようになりました、力量もこんなにあります、と記した報告書みたいだな。なおこれがナシメントのEMI最後の録音となって、その全盛期の幕を閉じてしまう。実のところ、その後もアルバムの質はそれほど落ちていない。彼はブラジル人音楽家の中でかなりアルバム作りが上手いほうで、長いキャリアの中ではずれ作品は少ない。それでも、本作以降は憑き物が落ちてしまったような気がする。1980年代に入って使われようになったシンセサイザー音のせいではないかとにらんでいるのだが...。