スティーブン・D.レヴィット, スティーブン・J.ダブナー『ヤバすぎる経済学:常識の箱から抜け出す最強ロジック』望月衛訳, 東洋経済新報, 2016.
『ヤバい経済学』(参考1 / 2)のコンビによる四作目。内容はブログ(freakonomics.com)の記事をトピック別にまとめたのもので、未検証のアイデアが細切れに並べられているだけである。ほとんどの話は思いつきの域を出ておらず、きちんとした学術論文からネタを集めた最初の二作ほどのインパクトはない。
ごく一部だが研究論文をベースとした記事もある。例えば「見える手」という短い節。著者とは別人の研究だが、インターネットにiPod販売の広告を打ち、広告の写真にiPodを持つ手を1)白人の手、2)黒人の手、3)入れ墨が入っている白人の手、が写る三バージョンを用いて、売買価格の違いを比較するという試みである。で、2)と3)の成績は同じように悪いらしい。広告の完成度や住民の人種構成などの変数もこれに加えて検証し、結論として統計的差別があることを引き出したとのこと。でも、この記事くらいだな、知的に楽しめるのは。他の節ではダニエル・カーネマンやタイラー・コーエンといった著名な研究者が短くコメントしていたりして、賑やかではある。だが、素晴らしい知見が披露されているというわけでもない。
昔のレコード産業のたとえを用いれば、オリジナルアルバムとは異なるシングルB面曲の編集盤といったところか。僕は三作目の『0ベース思考』(ダイヤモンド社, 2015)を未読なので、著者らの熱心なファンというわけではない。そういう人間にとっては、新たな発見があるわけでもない、あまり価値のない本だろう。まあ、著者本人たちもそれはわかっているようで、あくまでもファン向けの書籍である。
『ヤバい経済学』(参考1 / 2)のコンビによる四作目。内容はブログ(freakonomics.com)の記事をトピック別にまとめたのもので、未検証のアイデアが細切れに並べられているだけである。ほとんどの話は思いつきの域を出ておらず、きちんとした学術論文からネタを集めた最初の二作ほどのインパクトはない。
ごく一部だが研究論文をベースとした記事もある。例えば「見える手」という短い節。著者とは別人の研究だが、インターネットにiPod販売の広告を打ち、広告の写真にiPodを持つ手を1)白人の手、2)黒人の手、3)入れ墨が入っている白人の手、が写る三バージョンを用いて、売買価格の違いを比較するという試みである。で、2)と3)の成績は同じように悪いらしい。広告の完成度や住民の人種構成などの変数もこれに加えて検証し、結論として統計的差別があることを引き出したとのこと。でも、この記事くらいだな、知的に楽しめるのは。他の節ではダニエル・カーネマンやタイラー・コーエンといった著名な研究者が短くコメントしていたりして、賑やかではある。だが、素晴らしい知見が披露されているというわけでもない。
昔のレコード産業のたとえを用いれば、オリジナルアルバムとは異なるシングルB面曲の編集盤といったところか。僕は三作目の『0ベース思考』(ダイヤモンド社, 2015)を未読なので、著者らの熱心なファンというわけではない。そういう人間にとっては、新たな発見があるわけでもない、あまり価値のない本だろう。まあ、著者本人たちもそれはわかっているようで、あくまでもファン向けの書籍である。