29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

情報検索の基本から小ネタまでをやさしく

2017-12-28 10:18:53 | 読書ノート
中島玲子,‎ 安形輝,‎ 宮田洋輔『スキルアップ! 情報検索:基本と実践』日外アソシエーツ, 2017.

  献本御礼。献本シリーズの前二回(参照 1 / 2)とは異なり、つい最近もらったので懺悔することはありません。著者らは僕の知人、どころか先輩・後輩な方々で、会う機会もそれなりにある。仕事も頼んだりする。なので下手なことは書けません。以下に記すことは「評」ではなくて宣伝文です。

  全体は基本編、実践編、裏ワザ編の三部に分かれていて、基本編ではデータベースと検索の理論を、実践編では図書、雑誌記事、新聞記事、統計などの具体的な検索方法を解説するという構成である。中で挙げているサイトについていちいち画像を掲載したりはしていない。それらについては、URLやインターフェイスの変更が頻繁にあるということで、出版社ページにリンクがまとめられている1)

  本書に特徴的なのが裏ワザ編で、検索を正確かつ効率的に行うためのこまごまとしたテクニックが紹介されている。ここは筆頭著者の中島さん渾身のお役立ち情報満載で、検索上級者ならばマスターしておくべき内容だ。あと、情報検索に関連する概念を教えてくれるコラムも役に立つ。全体的にくだけた調子で書かれているのも読みやすい。

  それほど厚くない書籍で、読むだけでよくわかる内容である。情報検索について学びたい一般の人向けだろう。検索をよく知っている人にも、裏ワザ編は使えるはず。司書資格課程の必修「情報サービス演習」にも適している。適しているのだが、その場合に備えて章末問題があったらよかったなあ。著者らには、改訂したらと言わず、来年度に備えて下のWeb情報源に演習問題も加えてほしい。お願いしますよ。

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1) 日外アソシエーツ / スキルアップ!情報検索 / Web情報源
  http://www.nichigai.co.jp/sales/skillup_link.html

2) 宮田洋輔 / 著者によるサポートページ
  https://gist.github.com/miyayo/f09a703511a1927268743a35525636b4
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英国の下層の子どもたちのたくましさと悲惨

2017-12-25 09:22:54 | 読書ノート
ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争:ブロークン・ブリテンの無料託児所から』みすず書房, 2017.

  みかこ姐さんの英国レポート。モリッシー論は軽く読めてしまったが、こちらは英国在住保育士の立場から英国の格差社会ぶりを伝えるシリアスな著作である。内容は託児所を利用する親や子ども観察したうえでのエッセイで、硬いものではないのだが、英国のソーシャル・アパルトヘイトの実態を伝える重いものとなっている。

  各種報道からイメージされる先進国の格差と差別というのは、大卒ホワイトカラー層(リベラル)と高卒ブルーカラー層(保守)の格差であり、加えて後者が移民を差別するというものだ。「弱者がより弱者を」式の連鎖である。後者による移民への差別に対抗して、前者が倫理的に優位な立場から、社会的な不利な立場にいる後者を糾弾しさらに痛めつける。これが後者側のルサンチマンとなってトランプ出現やらブレクジットがあった、と。

  著者が伝えるのはそんな単純なものではない。無料託児所には貧乏な英国人の子どもも、貧乏な移民の子どもも預けられる。しかし、向上心に溢れているのは移民の方。生活保護で暮らすような英国人はたいてい人間関係や生活が崩壊しており、子どもの養育もまるでダメ。このため移民の子どもの母たちが、下層英国人の子どもや下層出身の保育士を警戒し、差別をしているという。この差別的視線に対し、これまた移民の保育士たちが対抗する。ところが、下層英国人の中には移民保育士を差別していたりする人もいて、子どもの発言にそれが表れてしまい、著者は傷つけられたりもする。

  著者によれば、近年の保守党の緊縮政策が、そうした下層(「労働者階級のその下の階級」というニュアンスがあるとのこと)英国人の生活を破壊し、また託児所の運営も困難にした(最終的に潰れた)という。というわけで緊縮財政反対という立場になるのだが、そのあたりは主ではない。メインは託児所における人間模様であり、子どもたちの姿にほろりとさせられる場面もあって、人情もののようにも読める。左に傾いた力みはあるのだが、観念的にならないところが素晴らしい。
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一揆とはルール不在のガチ勝負ではなくてプロレスだ、と

2017-12-22 21:27:46 | 読書ノート
呉座勇一『一揆の原理:日本中世の一揆から現代のSNSまで』洋泉社, 2012.

  なぜ売れたのかがわからないベストセラー『応仁の乱』(中公新書, 2016)の著者のデビュー作。『応仁の乱』は未読だが『戦争の日本中世史』についてはすでに取り上げた。タイトルは硬いが、学術書ではなくてくだけた調子の一般向け書籍である。本書は2015年にちくま文庫となっている。

  一揆に革命のロマンを見出してきた戦後歴史学者たちの一揆観を修正しようとする試みである。著者によれば、一揆には「ゲームの規則」があって、鉄砲は使ってはいけないし、基本的に農具で武装しなくてはならなかったという。それは本物の武力闘争ではなく、体制の存続を前提とした条件闘争であり、体制の変革を求めるものではなかった。市民社会の萌芽とか笑止で、ガチ勝負ではなくプロレスなのだ、と。そして一揆の起源をさかのぼると、混乱の時代を生き抜くための、同盟関係を築く契約である、ということになる。そこはSNSとなぞらえられるのだが、個人的には蛇足に思えた。

  とはいえ読ませる。図式的なマルクス主義史観を廃することに成功しているし、当時の人たちのしたたかさもわからせてくれる。僕の一揆のイメージの源といえば『カムイ伝』だが、あんな暗い社会でやっていけないよな、と思い直した次第。
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金額と冊数でみた古書市場の規模

2017-12-18 20:42:43 | 図書館・情報学
  古書市場の規模について調べてみた。環境省は古書を「リユース書籍」と定義して、三年に一度市場調査を行っている(『平成27年リユースの市場動向調査結果(暫定版)』)。それによれば2015年の「リユース書籍」の市場の規模は787億円である。リサイクル通信では、2016年の「リユース書籍」の市場の規模は995億円と見積もられている(『中古市場データブック2017』)。出版科学研究所に従うと、2016年の新刊市場の規模は1兆5,220億円とされる(『2017年版出版指標年報』)から、金額で見れば古書市場は新刊市場のおよそ5%~6%の大きさとなる。

  金額でみた場合の古書市場の規模は小さい。冊数ではどうか。ブックオフの2013年の販売部数は2億7,525万冊と報じられている1)。2016年の数値は不明だけれども、同年も2013年と同程度であると仮定する。ブックオフの古書市場におけるシェアが53.9%と見積もられている(『中古市場データブック2017』ただし金額ベース)ことをもとに推計すると、古書市場全体で年間およそ5億1千万冊の販売部数があることになる。出版科学研究所によれば,2016年の推定販売部数は6億1,769万冊である(『2017年版出版指標年報』)。したがって,販売部数を基準としたとき,古書市場は新刊市場のおよそ83%の規模となる。ブックオフ単体でも44%となる。

  けれども,これは高めの見積もりだ。というのも、単価の高い書籍を扱う従来の古書店がまだ多く存在しているし、また古書市場の数値には雑誌が含められているからである。これらを考慮すると、古書市場全体の書籍の実際の販売部数はもっと少なくなるはずであり、新刊市場に対する規模もこれより低くなるはずである。それでも、新刊市場にとって無視できない大きさであることは確かだろう。

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1) 新文化「ブックオフ,2013年の販売冊数は2億7525万点」『新文化HP』, 2014/1/27.
  http://www.shinbunka.co.jp/news2014/01/140127-02.htm
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新興都市はクリエイティヴがお好き

2017-12-15 08:48:22 | 読書ノート
リチャード・フロリダ『新クリエイティブ資本論:才能が経済と都市の主役となる』井口典夫訳, ダイヤモンド社, 2014.

  1990年代以降、アメリカ経済を牽引する新しい階級が勃興し、開放的な都市に引き寄せられ、そのような都市が繁栄するようになっているということを主張する内容である。原書は、初版The rise of the creative class (Basic Books, 2002 / 邦訳『クリエイティブ資本論:新たな経済階級の台頭』ダイヤモンド社, 2008.)の十周年記念改訂版(Basic Books, 2012)である。

 「クリエイティブ・クラス」の定義に何が入るのかというと、コンピュータ関連職、エンジニア、科学者、法律家、医者、芸術家、メディア関係者、管理職などなどである。教育者、図書館員(‼)も一応入っている。現在の米国の労働人口の3割ぐらいを占めているらしい。彼らは、終身雇用が崩壊した企業社会の中で、プロジェクト毎に集結して不規則に忙しく働く。予定を入れてコンサートに行くことなどできないので、たまの余暇ができた時に気軽に立ち寄ることのできる娯楽の選択肢が多くあったほうがよい。というので、ある程度以上の規模の「ゲイや移民に開放的な」都市が好まれるという。生き残りたいならば彼らの好みに合わせよ、と地方都市の指導者に向けて著者はいう。

  読む前に批判的な書評を多く目にしていたけれども、実物を読んでみるとけっこう面白かった。著者の出身地である工業都市ピッツバーグの没落や、テキサスのオースチンがどうやってIT関連の注目の都市になったのかなどの小話も面白い。データも豊富で(詳しすぎて、米国の地理に詳しくないとまったくイメージがわかない都市名も出てくる)、思い付きの議論ではないことも理解できる。社会関係資本なんか面倒くさいからみんな街に出てくるのだよ、という話も納得。ただし、都市が成功する要因の分析は必ずしも上手くいっているわけではなくて、技術、才能、娯楽、開放性と要因を並べられてもいったいどういう順番で始めたらいいのかという疑問がわく。この点、グレイザーモレッティが批判しているところである。

  現象としては著者の指摘する通りなのだろう。なので、議論のたたき台として読んでおいても無駄にならない書籍である。ただなあ、「クリエイティブ」を連呼されると、なんだか軽薄さを感じるし、自己啓発っぽくて鼻白む感がある。もっといい単語は無かったのだろうか。僕がひねくれているのか。
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完璧に見える「妖しげな雰囲気」の演出だが、サックスに綻び

2017-12-11 10:33:50 | 音盤ノート
Avishai Cohen "Into The Silence" ECM, 2015.

  ジャズ。次作の"Cross My Palm With Silver"が気に入ったのでさかのぼって聴いてみた。次作は四重奏団だったが、この作品では自身のトランペットとドラムとベースとピアノに、さらにテナーサックスを加えた五重奏団での演奏である。

  枯れた辛口の叙情感は次作と変わらない。だが、こちらのほうがアンサンブル重視というか、アドリブよりも曲構成を聴かせるような演奏になっている。曲のクオリティは高くて聴かせるのだが、そこそこ締まる程度にアンサンブルをまとめようとしている分、次作よりも緊張感が劣る。個人的には次作のほうが好きかな。まあ、そんなに大きな違いはないのだが。全体的としては薄く漂うようなムードがなんとも妖しげに感じられる作品で、この雰囲気にやられてしまう人はいると思う。汗と体臭は厳禁で、身体のラインがわからないような服をヒラヒラさせて、孤独感を訴える知的な会話でもって誘ってくるような音である。

  ピアニストのYonathan Avishaiは寂寞たる演奏で凄くよろしい。だが、サックスのBill McHenryは添え物的な役割で浮いている。いちおうソロを聴かせたりもするのだが、出てきた途端に正統派ジャズっぽくなってしまう。これが全体の浮世離れした質感と乖離している。この点を考慮しても、やはり次作のほうがいいな。
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川口・金澤論文「公共図書館によるクラウディングアウト効果と公共貸与権」について

2017-12-07 20:16:33 | 図書館・情報学
  図書館関係者の間で話題となっている川口・金澤論文1)を読んでみた。まず「やっと出たか、図書館所蔵と新刊売上の負の相関」というのが第一印象。図書館関係者の間では十年前から論争があったけれども、小規模なデータを使った議論が多くて決定打が無かった。今年になって、経済学者の浅井澄子(明治大学)と貫名貴洋(広島経済大学)がそれぞれ関連する論考2)3)を発表していて、図書館の貸出と売上の低下の間の因果関係を否定していた。「やはり図書館の影響はないのかな」と関係者──僕も含めて──も思い始めていたところだった。それが年末に出たこの論文で覆されたわけで、その衝撃は大きい。

  浅井・貫名ともにタイトル間の違いを考慮しないマクロデータを使っての検証だったが、川口・金澤論文は、個別のタイトルの所蔵数と販売冊数を突き合わせるという、ミクロデータを使っての検証である。2017年の4月から7月の毎月の、自治体単位での所蔵と売上数をデータとして回帰分析をかけている。自治体規模、発行後の時間経過による売り上げ減少の影響も統制されている、その結果、需要の多い書籍の売上は図書館所蔵によって妨げられるということが明らかになった。ベストセラー本の場合、もし図書館所蔵がゼロならば売上は50%も増えるという。ただし、需要の少ない書籍に対する図書館所蔵の影響は明らかではなく、貸出の影響もはっきりしていない。

  ありそうでなかなか確認できなかった「図書館の影響」を数字で裏付けたという点で、これはめちゃくちゃ意義の大きい論文だろう。出版産業の損害をどう補償するかという議論も再燃しそうである。需要の高い書籍に限って図書館の影響がみられるはずと予想していた薬袋先生は正しかったわけだ(参考)。

  ただし、である。採用されたモデルだと、図書館の影響の値は大きく出過ぎてしまうように見える。というのも、古書の販売も、新刊の売上に影響する要因として考慮すべきだからである。古書の供給数もまた発売後だんだんと増えていくので、図書館所蔵と正の相関関係を持っているだろう。そうすると、投入された独立変数「所蔵数」は、実際の図書館所蔵数と古書供給数を含んだ指標となってしまっている可能性がある。民間による古書販売は「クラウディングアウト」の定義から外れるもので、これはきちんと分離されるべきものだ。個人的には古書店による新刊の売上への影響はそこそこあると考えるので、まだまだ議論は尽きないだろう。

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1) Kohei Kawaguchi / Kyogo Kanazawa "Crowding-Out Effects of Public Libraries and the Public Lending Right" SSRN, 2017.
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3082016

2) 浅井澄子 "公共図書館の貸出と販売との関係" 『InfoCom review』(68), 2017.
http://ci.nii.ac.jp/naid/40021105065

3) 貫名貴洋 "図書館貸出冊数が書籍販売金額に与える影響の計量分析の一考察" 『マス・コミュニケーション研究』 90(0), 2017.
http://ci.nii.ac.jp/naid/130006153884
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校外にも打って出てゆく高校司書奮戦記

2017-12-04 21:01:12 | 読書ノート
木下通子『読みたい心に火をつけろ!:学校図書館大活用術』岩波ジュニア新書, 岩波書店, 2017

  師走の献本御礼および懺悔シリーズの第二弾。この本も夏にはすでに頂戴していて、絵葉書と缶バッジとポスターまでおまけにもらっておきながら、長期間放置しておりました。どうもすいません。今週木曜、僕の講義にゲスト講師として来ていただくということを思い出して、あわててエントリをおこした次第。

  著者は埼玉県の高校司書で、現在は春日部女子高に勤務している。本書の1章では高校図書室での体験や工夫を伝えているが、2章以降はその経験が図書室の外へと広がっていく。ビブリオバトルやら図書館フェスの開催やら推薦図書リストの発行やら、とてもパワフルである。とはいえ悲壮感は無くて楽しそうなところがいいところ。近年、埼玉県の県レベルでの司書職募集(今年は二桁の人数‼)を見かけることがあったが、これも著者の活動の賜物だったとは知りませんでした。書籍の具体的なタイトル名も多く記載されており、今時の中高生が何を読んでいるかよくわかって興味深い。

  15-16年前、僕が埼玉純真女子短期大学に非常勤講師に行っていたときに、実は一度著者にゲスト講師をお願いしたことがあるはず。そのときは児童サービス論の講義でブックトークをしていただいた。ただ、キャリアウーマン風の格好いい女性が僕の記憶にある著者の姿であり、それと著者近影や図書館総合展で見かける猫耳を付けた親しみやすそうな女性とはギャップがあって、記憶違いだろうかと少々不安になる。会ったら確認してみる。
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生産的な人たちの図書館利用を可視化するインタビュー集

2017-12-01 11:57:27 | 読書ノート
岡部晋典『才能を引き出した情報空間:トップランナーの図書館活用術』勉誠出版, 2017.

  献本御礼。というか、もらっておいてお礼の連絡もせず四カ月も放置していてすいません。以前、著者と会う機会があったときに本書の企画を聞かせてもらったことがあるのだが、同席した知人は「図書館の理解者による図書館礼賛本じゃないの?」とその意義に否定的だった、著者を目の前にして。僕らのように量的研究をやっていると「個人のエピソード」に対して懐疑的になってしまうというところはある。だが、著者による終章によれば、このような質的調査に挑んだのは「敢えて」とのこと。

  読んでみると単純な図書館礼賛本ではないことがわかる。結果として図書館を肯定する発言は多くなっているものの、まずは著者の言う「トップランナー」たちがどのように知的な経験を積んできたか、キャリアを形成する上でどのように情報収集してきたかを明るみにするというコンセプトが先行し、そのうえで図書館との関わりを浮き彫りにするというインタビューの構えとなっている。なので、インタビュイーにはキャリア形成において図書館が特に重要というわけではない人もいた。もちろん、図書館の話は多いのだが。

  読み物としても面白い。「貧しい生まれで本が買えず図書館で勉強して出世し今や財界の大立者」的な図書館界の王道サクセスストーリーは全然無い。インタビューの前半では、少年期のサブカル歴を披露して大盛り上がりするというパターンがあって、ロキノンの2万字インタビューを思い出した、「子どもの頃はちょっと変わってたんだ。友達がいなくてルー・リードを聴いて孤独を癒した」みたいな。後半は、仕事やプロジェクトを遂行するうえでどう図書館を使ったか、あるいは遂行する上で図書館はこうあってほしいという話となる。それぞれ興味深く、これはエピソードの勝利だろう。「トップランナー」たちも半分は僕が全然見聞きしたことの無かった人で、よく探してきたなと思う。

  著者の博識さは図書館情報学の専門の枠を超える。今後活躍していくだろう要注目の研究者である。会った際の印象では饒舌で言葉がポンポンでてくるし、しゃべりも上手い。いち図書館情報学者としては、現在空位となっている「ポスト糸賀雅児」の座を彼が埋めることを期待している。

  
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