『教育学年報12:国家』世織書房, 2021.
昨年発行の第12号。復活号となった11号は、休刊期間中の教育学研究動向のレビューだった。今号は「国家」を特集テーマとする内容である。個々の記事については興味をそそるところがある。しかし、号全体としてはテーマ負けしているという印象だ。議論の範囲を絞った論考が多くて、通読して国家と教育の関わりの見取り図を与えるようなものにはなっていない。インタビュー記事の中で、教育学の全体像を提供するような議論はやり難くなっているとの発言が編集者の一人からなされているが、そうだとしても編集委員の誰かが敢えてこのテーマに呼応するレビュー論文を提供すべきではなかっただろうか。雑誌としては投稿主体の査読誌として行きたいようなのだけれども、特集テーマを毎号掲げるならば依頼原稿が数本あったほうがよいかもしれない。
とはいえ、苫野一徳へのインタビュー記事はとても面白かった。インタビュアーとして編集者側から5人が出席し、彼の議論に次々と疑義を呈していく。あまり友好的な雰囲気ではないのは確かだ。僕は、苫野よりも編集者側に近い考え(参考)を持っているので、この議論を興味深く読ませてもらった。ただ、教育学の世界には研究者であることに飽き足らず、実践者にもなりたいというタイプがいる。学校作りに関与したりする苫野はそういうタイプではないのだろうか。正しさでがんじがらめにせず、いろいろ試みてもらうというのが良い関り方だとも思う。次号以降もこういうインタビューが続くのならば、経済学系の教育研究者の誰か、さらに行動遺伝学者をリクエストします。
昨年発行の第12号。復活号となった11号は、休刊期間中の教育学研究動向のレビューだった。今号は「国家」を特集テーマとする内容である。個々の記事については興味をそそるところがある。しかし、号全体としてはテーマ負けしているという印象だ。議論の範囲を絞った論考が多くて、通読して国家と教育の関わりの見取り図を与えるようなものにはなっていない。インタビュー記事の中で、教育学の全体像を提供するような議論はやり難くなっているとの発言が編集者の一人からなされているが、そうだとしても編集委員の誰かが敢えてこのテーマに呼応するレビュー論文を提供すべきではなかっただろうか。雑誌としては投稿主体の査読誌として行きたいようなのだけれども、特集テーマを毎号掲げるならば依頼原稿が数本あったほうがよいかもしれない。
とはいえ、苫野一徳へのインタビュー記事はとても面白かった。インタビュアーとして編集者側から5人が出席し、彼の議論に次々と疑義を呈していく。あまり友好的な雰囲気ではないのは確かだ。僕は、苫野よりも編集者側に近い考え(参考)を持っているので、この議論を興味深く読ませてもらった。ただ、教育学の世界には研究者であることに飽き足らず、実践者にもなりたいというタイプがいる。学校作りに関与したりする苫野はそういうタイプではないのだろうか。正しさでがんじがらめにせず、いろいろ試みてもらうというのが良い関り方だとも思う。次号以降もこういうインタビューが続くのならば、経済学系の教育研究者の誰か、さらに行動遺伝学者をリクエストします。