Bebel Gilberto "海を見ていた午後" meldac, 1991.
ボサノバ。ジョアン・ジルベルトの娘がポルトガル語で歌う松任谷由実カバー曲集。字面だけ見ると不可解すぎて絶対ありえなさそうだが、現実に存在する作品である。曲目は「卒業写真」「何もきかないで」「やさしさに包まれたなら」「翳りゆく部屋」「瞳を閉じて」「きっと云える」「海を見ていた午後」「 ルージュの伝言」「少しだけ片想い」「曇り空」の10曲。僕は3曲しか原曲を知らないのだが、けっこうマニアックな選曲ではないだろうか。日本企画盤であり、現地ブラジルのミュージシャンを使ってのリオ録音となっている。
出来は良くなくて、1980年代後半のアダルトコンテンポラリー的なボサノバ(初期の小野リサもそうだった)解釈である。シンセ音がチープで、本当に安い。まだ若いベベウ・ジルベルトはスルっとした歌唱法で引っかかるものがなく、後年の「ドスを効かせた包容力」みたいな魅力がまだない。ただドライブBGM狙いの企画だったと想像され、出資した日本側はボーカリストの個性よりも、聞き流せる程度のスタイルで、曲のメロディをしっかり辿ってくれることを期待していただろう。べベウはその任をきちんと果たしたとは言える。
残念ながら日本盤CDは廃盤で、現在はEvolverなる米国のレーベルが"De Tarde Vendo O Mar: Sounds of Brazil"というタイトルで曲順を変えてCDを発行している。日本盤では「ベベール・ジルベルト」と帯にでかでかと記されているのに、米国盤ではなぜかジャケット等でアーティスト名が無記名である(演奏者クレジットにはその名が記載されている)。
本作は彼女のデビューフルアルバムとなるが、本人としては自分で初めて全体をコントロールして作った"Tanto Tempo"(2000)がデビュー作のつもりだったのだろう。2002年に出たこの米国盤にリーダー作品としてクレジットされるのを嫌がったのかもしれない。とはいえ、最近の本人HPを見ると本作はきちんとディスコグラフィに上がっている。キャリアを重ねて余裕がでてきたのだろうし、宮崎駿作品のおかげで松任谷由実の名もそこそこ国際的に認知されるようになっているという事情があるのかもしれない。
いずれにせよバブル時代の日本の財力と、当時の日本人のボサノバへの深い関心を示す逸品であり、貴重な音源である。
ボサノバ。ジョアン・ジルベルトの娘がポルトガル語で歌う松任谷由実カバー曲集。字面だけ見ると不可解すぎて絶対ありえなさそうだが、現実に存在する作品である。曲目は「卒業写真」「何もきかないで」「やさしさに包まれたなら」「翳りゆく部屋」「瞳を閉じて」「きっと云える」「海を見ていた午後」「 ルージュの伝言」「少しだけ片想い」「曇り空」の10曲。僕は3曲しか原曲を知らないのだが、けっこうマニアックな選曲ではないだろうか。日本企画盤であり、現地ブラジルのミュージシャンを使ってのリオ録音となっている。
出来は良くなくて、1980年代後半のアダルトコンテンポラリー的なボサノバ(初期の小野リサもそうだった)解釈である。シンセ音がチープで、本当に安い。まだ若いベベウ・ジルベルトはスルっとした歌唱法で引っかかるものがなく、後年の「ドスを効かせた包容力」みたいな魅力がまだない。ただドライブBGM狙いの企画だったと想像され、出資した日本側はボーカリストの個性よりも、聞き流せる程度のスタイルで、曲のメロディをしっかり辿ってくれることを期待していただろう。べベウはその任をきちんと果たしたとは言える。
残念ながら日本盤CDは廃盤で、現在はEvolverなる米国のレーベルが"De Tarde Vendo O Mar: Sounds of Brazil"というタイトルで曲順を変えてCDを発行している。日本盤では「ベベール・ジルベルト」と帯にでかでかと記されているのに、米国盤ではなぜかジャケット等でアーティスト名が無記名である(演奏者クレジットにはその名が記載されている)。
本作は彼女のデビューフルアルバムとなるが、本人としては自分で初めて全体をコントロールして作った"Tanto Tempo"(2000)がデビュー作のつもりだったのだろう。2002年に出たこの米国盤にリーダー作品としてクレジットされるのを嫌がったのかもしれない。とはいえ、最近の本人HPを見ると本作はきちんとディスコグラフィに上がっている。キャリアを重ねて余裕がでてきたのだろうし、宮崎駿作品のおかげで松任谷由実の名もそこそこ国際的に認知されるようになっているという事情があるのかもしれない。
いずれにせよバブル時代の日本の財力と、当時の日本人のボサノバへの深い関心を示す逸品であり、貴重な音源である。