29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

安っぽい企画盤であるもののかなり高品質

2009-11-29 21:39:07 | 音盤ノート
Joao Donato "The New Sound of Brazil" RCA, 1965.

  CDならばブラジル音楽かボサノバのコーナーにあると思う。Claus Ogerman指揮のオーケストラ(参照)に、Donatoのピアノが乗るという趣向。オケ物と言っても流麗一辺倒ではなく、リズムがしっかり刻まれており、ボサノバの必需品であるクラシック・ギターも使用されている。

  Joao Donatoについて僕はそんなに詳しくないが、このアルバムは彼の代表作である"Quem e Quem"(EMI 1973)より癖が無くて聞きやすいはずである(歌も無いし)。ピアノは朴訥系で、まったく尖ったところはない。軽快かつ爽快。イージーリスニング的ではあるが、聞き流すには惜しい瞬間が多くちりばめられている。

  僕の持っているCDは2001年のRCAブラジル盤。ポルトガル語がわからないので再発時のライナーノーツに何が書いてあるのかまったくわからなかった。日本では、2008年にBMG Japanから紙ジャケ盤が発売されている。
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コミュニケーション・スキルが低すぎる学生をどうするか?

2009-11-27 11:13:27 | 読書ノート
田中秀臣『偏差値40から良い会社に入る方法』東洋経済新報, 2009.

  就職活動における弱者を対象にした指南書。著者は経済学者で、企業での勤務経験や大学での進路指導の経験をもとにアドバイスしている。僕は地方の短大に勤務する立場から、わらにもすがる思いで読んだ。

  学生の頃、僕は「アルバイトやサークルでもいいから、学生時代に情熱を持って取り組んだことを面接でアピールするといい」と先輩等から聞かされていた。だが、この本によれば、採用する企業側は退屈してそれを聞くのが普通で(というのはみんな似たようなアピールになるから)、全然相手に響いていないよとのこと。ここで効果ナシとされたようなアドバイスを、ほんの数日前に学生にしてしまったばかりだから、いそいで撤回してこなければならないな。自分の無知を反省。

  結局のところ、採用の決め手は「年配者」とのコミュニケーション・スキルということになるらしい。スキル向上のために、著者は敬語や漢字学習に取り組むこと等を提案している。この本は「就活者に人格改造を要求しないこと」を課してしているので、このようなやや控え目な提案になるのだろう。

  「控え目」だというのは、人格改造なしにはとても社会に出せないような学生がごくたまにいるからだ。日常的な会話における問いかけの中には、真剣に考えて答えるべきものと、スルーしたり当たり障りのない表現でうまく上手くかわすべきものとがある。普通の人はそれを見分けられるものだが、そうした「会話の中で何が重要か」という判断ができない子がたまにいる。こちらが「話しかけるためにでっちあげた」だけのいい加減な質問に、真剣に考え込んで沈黙に陥ってしまう学生がいるのだ。これでは面接で上手くいきそうにない。これは日本語技術の問題には還元できないと思う。

  彼女らは面接の回数を重ねればスキルが向上するのだろうか? しかし、この本で指摘されているとおり、受験する企業の回数が相対的に少なくなってしまうというのがこの種の学生の要領。だから、学校で面接練習の機会を多く設けるしかない(このことも本書ではちゃんとアドバイスされている)。個人的には、そうした学生にこちらからできるだけ話しかけるようにしてスキルアップを図っている。けれども、効果が不確実で、僕が割くことのできる時間的リソースにも限りがあり、限界を感じるところ。
  
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ビダルフ本三冊にチャレンジしたが

2009-11-25 13:12:19 | 読書ノート
スティーヴ・ビダルフ『男の子って、どうしてこうなの?:まっとうに育つ九つのポイント』菅靖彦訳, 草思社, 2002.
スティーヴ・ビダルフ『男の人って、どうしてこうなの? 』菅靖彦訳, 草思社, 2003.
スティーヴ・ビダルフ『子どもを叱らずにすむ方法おしえます:お母さんがラクになる新しいしつけ』菅靖彦訳, 草思社, 2004.

  主題は上から順に、育児本+男性論、男性論、育児本である。著者はオーストラリアの心理学者だが、どれもアカデミックな内容ではなく、ハウツー的な記述に終始している。それぞれ多くの国で翻訳されているらしい。この三点の邦訳はすべて2009年に朝日文庫に収録されている(ただし『男の人って、どうしてこうなの? 』は『おれって、どうしてダメなの?』に改題されている)。いわゆるロングセラーってやつだ。

  三冊の中では、『男の子って、どうしてこうなの?』が最も質が高い。生物学的な男女差と、それが心理的な違いを生むこともを押さえた上で、男の子の育児法を提言する内容となっている。やっかいな思春期における性の問題についても真正面から取り組んでいる。男性論の入門書としても優れていると思う。 

  『子どもを叱らずにすむ方法おしえます』は、保育園を使った養育に対する評価が低いことが気になる点を除けば、良書である。欧米の、0歳児から個室で一人寝かせる育児が批判されているが、日本のように母子同床はいいのだろうか?

  ところが『男の人って、どうしてこうなの? 』になると、裏付けのない記述がかなり引っかかる。男性の本能を満たすためとして自然回帰的な経験を勧めるのだが、アウトドア志向をすべての男性に一般化されてもなあ、という印象。すべての男は自分の親父と折り合いをつけるべしともアドバイスするが、効果は不明だ。フロイト的過ぎるのではないかとの疑問も起こる。

  全体としては、あまり偏向を感じさせないバランスの取れた記述で、暖かみがある。だが、三冊全部読む必要はないというのが結論。
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現時点で各地で品切れのようだが…

2009-11-20 16:33:49 | 音盤ノート
Joao Gilberto "Joao Gilberto en Mexico [Ela e Carioca]" Orfeon, rec.1970.

  ボサノバ。1970年のメキシコ録音。次作"Joan Gilberto"(邦題『三月の水』; Polydor, 1973)は少数の音で構成された緊張感の高い作品だが、こちらはリラックスして聴ける。添えられたオーケストラは、ゴージャス過ぎる"Amoroso"(Warner, 1977)や"Joao"(Polygram, 1990)に比べるとかなり控え目で、くどさも無く、ちょうど良い按配。軽快さも保たれている。惜しむらくは短すぎること。2分台の曲が10曲と、3分を超える1曲で構成されており、あっという間に終わってしまう。

  僕が持っているのは、Amazon.co.jpで「逆相だ!!」と騒がれているOrfeon盤だが、指摘されているほど不快ではなく、気にならない人も多いと思う。低音はあまり重視されていない録音なので、パソコンに付いている小さなスピーカーで聴いても満足できる。逆相が気になる時、小さなスピーカーならば左右を入れ替えることができるし。ところで、すでに廃盤なのだろうか?
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データ満載で資料集として価値あり

2009-11-17 10:47:20 | 読書ノート
三浦展『団塊世代の戦後史』文春文庫, 文藝春秋, 2007.

  タイトルから想起されるような歴史的記述の書籍ではなく、データをもとにして団塊世代の実像や価値観に迫る内容。2005年の『団塊世代を総括する』(牧野出版,2005)の改題である。

  この書籍では、同じ著者の『下流社会』(光文社,2005)のような自前のデータではなく、外部の調査データが使われている。。国勢調査や人口動態統計など官庁のもの、NHKやシンクタンクが発表しているもの、他の研究者による調査が由来のものなど、規模が大きく、信頼できるものが多い。(著者が所属したシンクタンクのデータも含まれているようだ)。著者がデータから引き出してくる結論はともかく、団塊世代の資料集として使えるだろう。

  基本的に団塊世代に好意的でない書籍なので、そこは了解しておくべし。
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知らず知らずのうちにつなぎ流行

2009-11-15 22:16:20 | チラシの裏
  僕の勤務する学校で、昨日・今日と学園祭があった。帰属意識を高めたるため、クラスやサークルでファッションを揃えることがある。定番はTシャツ。だが、今年はつなぎを着るグループが目立った。同じタイプのつなぎを、わざわざ汚れたようなペインティングを施して着こなしていた(化粧の方は頑張っており、矛盾を感じたが)。つなぎが流行っているのだろうか?

  僕には作業着の印象しかなく(実際に僕の親父が着ていた)、年に一度の祭りの日にわざわざ着るよう服ではないというイメージがある。せっかくのハレの日なのに20歳前後の女の子にはもったいない感じがしたが、本人たちは喜ばしそうにしていた。こうしたセンスは中年男にはよくわからない。もしやダウン・タウン・ブギウギ・バンドが再評価されているのか?と尋ねてみたが、もちろん学生の誰も知らなかった。もっとも、僕の世代のイコンでもないのだが。
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甘美かつ流麗ではあるものの…

2009-11-12 21:11:05 | 音盤ノート
Claus Ogerman "Gate of Dreams" Warner Bros., 1977.

 最近買ったレコードの一つで、静岡市のすみやで\100で叩き売りされていたもの。既にCD化されている。

 いわゆるフュージョンと、弦楽器を中心としたオーケストラを組み合わせるという音楽。しかしながら、打楽器がリズムを刻むフュージョン的な演奏と、ストリングスが前面に出る甘美な演奏が、一曲の中で分離してしまっており、消化不良の感は残る。

 とはいえ、George Benson、David Sanborn、Michael Breckerら一流どころを配したソロの部分はなかなか聴きごたえがある。また、オーケストラのパートもそこだけをとって聴けばかなり魅力的な演奏である。そういうわけで、フュージョンと甘美なオケ演奏が交互にやってくる作品として聴けば、高く評価できるだろう。百円だし。
 
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文系の大学院の再考

2009-11-10 08:47:23 | 読書ノート
猪木武徳『大学の反省』NTT出版, 2009.

  日本の大学の諸問題について通覧するエッセイ。大学の動向を、主に欧米のそれとの比較をしながら、国際的な視点で論じている。

  マスメディアレベルの日本の大学の問題といえば、理系の危機と学生の学力低下が挙げられる。世間的には、日本の大学の文系はどうしようもないという風潮なのだろうか?(僕が専攻する「図書館・情報学で」も、大学での研究活動を対象とする領域がある。そこでは理系が基準モデルで文系はおまけという状態だ)。

  この本は、国運を左右するものとして人文学や社会科学を大きく採りあげ、考察しているのが特徴。自然科学関連の問題点(日本の大学の研究環境と頭脳流出)も指摘されているが、割合としては小さい。理系の研究活動は国際的にみてうまくいっているという認識のようだ。

  一方で、人文学や社会科学教育は問題だという。理性的な判断のできる人材または国際的な舞台で説得的に主張できる人材を育成するのに、それらはとても重要である。こうした人材は大学院で教育されるのが望ましい。しかし、日本の大学教育も、また企業などでの採用もそうした体制になっていない。また、その教育の中身──広い視野と論理的思考力を培う教育、端的に言えば「教養」──についても再考される必要がある、と。

  筆者の言う人材の育成については同意するものの、いわゆる「教養」教育が本当に期待するような人材形成を可能にするものかどうかは疑問が残った。このあたりは「教養」概念についての突っ込んだ議論が必要だろう。しかしながら、全体として鋭い指摘が多く、ためになる本である。

  

  
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ハッピーセットのおまけ

2009-11-08 22:33:53 | チラシの裏
  マクドナルドでハッピーセットを注文したら、「たまごっち」なるキャラクターのスタンプとDVDが付いてきた。見たことのないキャラクターだと思ったら、DVDのパッケージに「テレビ東京系にて大好評放送中」の文字が。しかし静岡にテレビ東京系はない。地方も多くもたぶんそうだろう。この現状でこの企画は子どもにアピールするのだろうか? それとも、よく知らないのだけれどとりあえずオマケが付くというのでハッピーセットを買ってしまうウチのような親子に対して、新しいキャラクターを売り込むという斬新な宣伝方法なのだろうか?
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之山文庫でのエピソード

2009-11-06 09:08:42 | チラシの裏
  とある教員。図書館に対して、論文を書くのに参照したい資料があり、ここに所蔵されていることもわかっている(実際本人が借りたこともある)、その資料が長い間見つからない、という。カウンターで図書館員が目録を調べたところ、今年5月から貸出中。貸出者のIDを見たら、学生ではないと思われる数字。もしやと思って、その教員のIDを尋ねたら、貸出者の数字と一致した。「あなたに借りられています」。その教員は「あれどこにしまっちゃったのかなあ」と苦笑して帰っていきましたとさ。
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